第一話
ある日の事。
四之宮 文之は目覚め、いつも通り顔を洗い朝食を食べる。トーストと珈琲という簡素な食事。
トーストを一口また、一口。その後、温かい珈琲を啜る。
文之を食事を取りながら、リモコンでテレビをつけ、チャンネルに合わせる。
この時間ならば、ニュースが流れているはずである。
『ーーっており現在、種類を確認しており、同じ能力を複数人が取得しているようです。』
冴えてない頭にぼんやりとニュースの内容が入る文之。
『現場の戸根さん。現場の戸根さーん!そちらでは、どのような感じになっていますか?』
『はい。ただいま〇〇〇公園に来ており、複数の能力を目撃しております。では能力を使ってみたお婆さんにインタビューしてみましょう!お婆さん。お婆さんはどのような能力を取得しましたか?』
『ほほほっ。あたしゃ、音速移動を取得したんよ。ほら、こんな風に』
インタビューに答えるお婆さんが突然、いなくなり、空中でコンボを決めるかのように杖で突き、バク宙や飛び蹴りを立体機動で空中を自在に飛んだ。
思わず、文之は珈琲を吹いた。その後、咀嚼せずにテレビをガン見する。
『改めて、ご説明させてもらいます。今日の4:44頃に紙切れが皆様の頭上に現れました。これは神様が私達に能力を授けて下さったのです。その紙切れには能力が書かれており、実際にその能力が使用出来るものとなっておりまーー』
アナウンサーの言葉を途中で遮るようにリモコンでテレビを消す。
「神様って......馬鹿らしい。」
文之はパンを胃に詰め、珈琲で流し込む。
食器や飛び散った珈琲を片付け、高校へ向かう為の準備に寝室に向かう。
「......」
ベットの下に紙切れの端が見えた。
それを思わず、拾う。
『 四之宮 文之ノ能力ハ、超裁縫トスル。』
数秒の沈黙。
「......くだらね」
その言葉を呟き、文之の手にあった紙切れは発火し、灰を残さずに燃えて散った。
さっさと着替え、バックを持った文之はスマホを手に取る。
「時間やべっ!」
時間に気付いたその瞬間、文之は密室の室内から、消え去った。
その後、無いはずの風で室内のカーテンが少し揺れる。
__________
突然、高校への通学路に現れた文之は道端で服装を整える。
「(これくらい走れば間に合うよな)」
息を切らさず、落ち着いた様子で歩いて高校へと向かった。
その途中、嵐のような強さの風が吹き荒れる。
「敵襲か!?」
咄嗟に鞄で顔への風圧を防御し、クナイを構える。
その元凶である者を睨み付けた。しかしその元凶は既に豆のようになっており、なんとか人であることを認識した。
「どうなってんだ......?」
後に残るのは文之の言葉と沈黙。静かにクナイを仕舞う。
「アレが本当ならば......」
考え事をしながら、通学路を歩く。
そしてまたしてもだ。摩訶不思議な事が起こった。
屋根を走る、ウチの学校の制服を着た女子生徒。
しかし、それは......
「空を蹴っている?ってアレは不味いだろ、なんでスカートで空飛んでんだ?バカなのか?たしか、ウチのクラスだろアイツ。 四田 結佳だっけか」
四田 結佳の方が速度が速い為、そのまま、四田は気付かず通り過ぎる。
その後、何事も無く教室に向かえた。
と思いきや、その教室自体から凄まじいなにかが叩き付けられる音。
文之は思わず、俯く。
「広範囲の幻術としても......人間を超えている。やはり、俺が頭おかしくなっただけなのか......?」
ゆっくり、その教室を覗く。
「もうウンザリだっ!!」
教室には後ろの壁に突き刺さった机と椅子。それと、クラスメイト三人に離れて眺める見物客のクラスメイト達。
原因と思われるのは、そのクラスメイト三人だろう。一対二で距離的に別れている、そのメンツは......帰宅部のキノコヘッドの弱虫の虐められっ子、 名川 昌成。
他、二人は野球部の 桑嶋 靖一。坊主でクラスイチの節操無しで女子には優しいが、名川をよく虐める。
岡久 賀一。バスケ部。桑島とよくつるんでいるがモテない。過度な虐めを止める一面を持っている。
「僕は力を得た。この力でオマエを......殺す!!」
「殺れるならやってみろよ。キノコ如きが。ソレと......力を得たのはキノコ如きだけじゃねえって事を教えてやろうかねぇ!」
「おい、止めとけって靖一!タダ事じゃあ済まなくなるぞ!」
「いいから、いいから。出た釘は打たれるもんだぜ?」
桑島は押して岡久を遠ざける。
「さあ、来いや!キノコ!」
「黙れぇええ!!」
名川が叫び、低姿勢となり、手を地面へと置き、踏み込む。
桑島はソレに反応し、慌てて空へと逃げる。
名川 は桑島に避けられ、黒板に叩き付けられると思いきや、黒板に手をついて、体にダメージを負わず、止まった。
その代わり、手が黒板にめり込んだが、その手は何かが違った。腕ごと金色の光を帯びているのだ。めり込んだ腕と真逆の腕も同じ色だ。
「キノコッ!なんだ、その力はッ!!」
「オマエを殺す力だ!桑島ぁ!!」
桑島が動揺するが名川は宙に浮かぶ獲物目掛けて、突っ込む。
「やめっ!?グファ!ガハッ!!」
そして逃げる桑島目掛けて、パンチを腹に加える。パンチをくらった桑島は天井に背中を強打。その後、能力が切れたように桑島が床へと落ちる。
そして名川はぐったりとした桑島の頭を掴んで、上に上げる。
「やめろォ!!名川!」
岡久は名川を言葉で止める。