誠心誠意捧げよ3
「まったく犬も食わぬと言うヤツか?」
天の大神様は神山に再び来臨され、神泉でまったりとされている大神様に言われた。
「事がひと段落ついた故、其方はのんびりであるな?」
「お陰様で大役を終えました」
「ふん、束の間であろうがな……。私への〝借り〟はきちんと覚えておけよ」
神泉を愛でるに格好の場所に、四阿を作らせて毎日の様に、神泉と今が盛りの梅の花を愛でられている。
「今日は天照を、お連れかと思っておりましたが?」
「はん。あれはトロい其方を、急かしただけである」
「今日は気分も良いので、そう言う事と致しておきましょう……」
「真である」
天の大神様はムキになって言われた。
ムキになっているという事は、嘘を言われている事が多い、天照に〝貸し〟について談判したものの、相手にされなかったのだろう。
「あれは、其方に遠慮を致したのだ」
「遠慮ではございません。どちらが正しいかを、判断致しただけにすぎません」
「あの時其方はおこだったのだ、私が手を差し伸べてやるのは、当然であろう?」
「また、その様な言い方を……」
「う、うるさい!私はこれが気に入っておるのだ」
天の大神様は〝しまった〟というお顔を作られている。
「どうやら頻繁にお行きの様で?」
「中の原は実に面白い」
そう言われると、みことが淹れた美味しい珈琲を召し上がった。
現世に、多くの神使達が駆り出されて行っている、その中には赤獺も居るので、みことは珈琲豆と、それを淹れる為の一式を買って来て貰い、大神様にお淹れしているのだ。
それを今日は、神泉と青孤自慢の梅花を、愛でながら堪能されている。
「しかしながら、先代の遺恨やら何やらがいろいろ絡み合って、其方はあれに懸想致すは仕方ないとして、如何してあのような者を……と思うたが、よくよく考えてみれば、あれは、実に愛いヤツである」
「あれは私の〝物〟にございます」
大神様は天の大神様を、睨め付けて言われた。
「故に私は欲しくなるのであろう?」
「決してお譲り致しません」
「それは如何であろう?また、其方はあれの所為で、激怒するやもしれん」
「それでも貴方様だけは、嫌でございます」
「それは、その時あれに聞くと致そう」
天の大神様は、薄ら笑いを浮かべて言われた。
それを大神様は、蔑視された。
「そう言えば其方の神使の嫁が、先代の遺恨の謂れとなった鬼女の〝質〟でできておったを、知っておったのか?」
「は?何の事にございましょう?」
「やはり……全く察しておらなんだか?」
「何やら異様な〝もの〟を持っておるは、気づいておりましたが、別に大した〝もの〟ではありませなんだ故……」
「気にも止めておらなんだか?……故に、私は其方が無理を致しておると読んだのだ。先代の遺恨を解らぬ筈はないからな……。仮令惚けておってもだ……惚けて……」
天の大神様は、力を入れて仰った。
「して、その鬼女の〝質〟は如何なさいました?」
「皮を剥いで、野晒しの刑に決まっておろう?」
大神様は呆れた様に、天の大神様を 見つめられた。
「流石のご判断にございます」
「うむ。故にあの者には、もはや鬼女の〝質〟は無い故、全てを許してやれ」
「もはや先代の遺恨は、消え失せております。仰せの通りに……」
「うむ……」
天の大神様は頷かれると、大神様を再びご覧になられた。
「此度は其方に沢山貸しを作ってやった」
「はい」
「故にいつか、それを返してもらおうか」
「は?」
「貸しは貸しである」
「はい。決して忘れは致しません。必ずやお返しを致します」
「その言葉を忘れるで無いぞ」
「無論にございます」
「ならば、早速であるが……」
「は?」
大神様は、天の大神様のご気性を知り過ぎている為に、真顔を作ってお顔をご覧になられた。




