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神様のおでまし  作者: 東雲しの
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誠心誠意捧げよ2

みことは誠心誠意、捧げきれぬ程の愛情と供に身を捧げた。

あの時、大神様が烈火の如く激怒された時、決して愛情が無かった訳ではない。

どころか溢れ過ぎていた程だ。だがみことにも、寵愛を一身に受けていた奢りがあったのか、大神様を甘く見ていた所は、あったのかもしれない。

この身を捧げれば全てを許してくださると、自分が望めば災害を起こすのをやめてくださるかもしれないと、女の奢りで思ってしまったのだ。


「あの時……一瞬だけ、ほんの一瞬だけ両親を思ったんです。本当に一瞬よぎったくらい……。それを大神様は激怒されました」


大神様の腕の中で、みことは大神様の頬を撫でる様にして言った。


「……………」


大神様は、みことを覗き込まれた。


「今なんと?」


「本当に一瞬だけだったんです。置いて行く両親を思い浮かべたのは……」


「それを私は読んだのか?」


「大神様以外の事を、思った事なんて無かった。だけど一瞬だけ浮かんで……帰りたいと申し上げました」


「何故だ?」


「大神様がお怒りになられたから、だったら帰れるかもしれないと思ったんです」


「なぜ?」


大神様はじっと、みことを凝視した。


「理由はお解りになると思います。一瞬だけ大神様より両親の思いが強かった。だから、最初に両親が持って逝かれたと思いました……」


「何が言いたいのだ?」


「何も……ただそれだけです。あの時大神様は、全て私の事はお解りになったでしょ?だけど、ひとつだけ勘違いをされたから、だから教えて差し上げたかったんです」


「私を責めておるのか?」


「いいえ、畏れ多くてそんな事……」


みことは大神様に、しがみつく様に抱きついた。


「其方は神泉に、身を投げると申したな?」


「………………」


「その身を粉々にして、私を悔いさせるつもりであった」


「ご存知だったんですか?」


「心中を読んだのだ、当然だ」


「私がどれ程大事か、思い知らせたかった……。災害を起こして、私が死ねば後悔するだろうって……思い上がったんです。決して貴方様はお役目を蔑ろになさらない。たかが寵愛した者の為に……」


「……………」


「だけど、私は思い知ったんです。貴方様しかいないって、私の唯一の神だって……全てを捧げました。愛も心もこの身も……全て……だから捨てないでください」


大神様はみことを、きつく抱きしめると


「許せみこと…….許せ……」


涙を流されて言われた。


「大勢の生き物が死んだんです、大神様……だけど、本当に神山は崩れず生き物達は、人間程死ぬ事はなかった。ちゃんと知ってたから……今も考えるんです、私が激怒させなければ、被害は少なかったのかな……って……あんなに死ななかったのかな?って……」


「許してくれ、みこと……」


「大神様が許しを請われる事はありません……私が全て悪かったんだから……」


大神様は涙を流されながら、みことの口を尊い唇でお塞ぎになられた。


「私が全て悪いのだ。古より神々は恋を知ると誤ちを侵した。こ多分に漏れず私もそうであった」


古より男神様方が女神様を怒らせ、詫びを入れてそれでも許して頂けないが落ちである。

大神様もどうやら、その落ちに入るところだった。

後悔したのは大神様の方だ。

みことの両親を奪い、身近な者から奪った。

天の大神様が言う通り、根刮ぎまでやりかねなかった。

だが、みことだけ手にかけられなかったのは、早々に来たみことに会うのが怖かったからだ。

〝そこ〟で間違えれば、先代と同じ轍を踏む。

黄泉の国に逃げた巫女を思い、先代はずっと後悔して過ごした。

怒りを何処に持っていこうと、思い(びと)は二度と手には入らない。

腕の中で寝息を立てるみことを見つめながら、大神様は青孤の言葉を噛み締められていた。


……愛する者の心中だけは、決して読んではいけない……


「私も怖くて二度と読めそうにない……」

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