怒れる大神9
「神山ですか?青孤さんの?」
「如何にも。青孤の嫁が迎えに来ておる、さっさと行ってくれ」
閻魔様はそう言うと、鬼達に言付けてみことを青女の元にやろうとする。
「大神様は、会って下さらないんですか?」
「あれは、会われる気はないな」
意外と閻魔様は優しい、みことを哀れむ様に言った。
見た目は厳つくて強面だが、みことの末路を気の毒に思ってくれて、親身に話しを聞いてくれた。
辛い目にも合ったから、優しくされると骨身にしみてしまうし、親近感も持ち始めてしまった。
最初は怖くて堪らなかった鬼達にも慣れてしまったので、此処に暫く居てもいいような気にもなっている。
しかしみことの思いとは裏腹に、閻魔様達はさっさと大神様に縁が有るみことを、厄介払いしたい気持ちが大きい。
「青女が待っておるから行くがよい」
閻魔様はそう優しく諭す様に言った。
「みこと」
鬼達に伴われてみことがやって来ると、青女は側に駆け寄った。
「苦労であったな、だがよく来た」
「ありがとうございます」
みことは項垂れるように言った。
「いいかいみこと。大神様がお怒りだと、お前の大事な者達が七人死ぬ。七人がめどだ、それ以上はあっても以下はない。七人以上死んだら、大神様は未だにお怒りだと思え、決してお目通りは叶わない。それどころか?お前に見向きもされなくなる。お怒りが鎮まるまで待つのだ。そしてとにかく悲惨に生きよ。神々様方から同情をかうような。さすれば、神々様が許してやるよう進言くださる。そして死ぬ時も孤独に死に、閻魔様からも同情を得るのだ。大神様が幽閉の憂き目となりしおり、一時期閻魔の役をなされていたという噂がある。有るとしたら、閻魔様の肩代わりをされていたと考えられる、つまり閻魔様は大神様に恩がある故、大神様の恥となる事は全て不問に付す可能性が強い。お前が悲惨過ぎる最後を遂げ、裁決を受ける時に大神様との事を訴え、愛していたのに捨てられたといい通せ。閻魔様は大神様に裁決を仰ぐ、大神様が再び激怒せずにおられたら、お前の望みは叶うからとことん押していけ。だが、お怒りになられたら、躊躇わずに諦めよ。あの大神様はそれは畏れ多い大神だ。二度と縁があると思うな」
青女が最後にみことに教えてくれた、大神様と再び縁を結ぶ方法だ。
「この方法には、大神様のお心にまだ其方が居なくとは、成り得ぬから気をつけよ。只ひとつ、あの大神様は大昔から厳格な性格故一途な性格だ。一度愛した者への執着は計り知れない。それが唯一の頼みだ。同じ人間故神々様には理解できぬ事でも、私には理解できる。私も其方と同じ事を、致したであろうと思うからこうして策を与えるが、するかしないかは其方の心次第だ」
……大神様を怒らせ、親しい者達が八つ当たりで天罰を受けた。今生には何の未練もない。だが、許されるのであれば、再び大神様に愛されたい。それが束の間であってもかまわない……
「かなり悲惨に生きたようだな?」
「青女さんにああ言われても、そんなに酷く生きたくはなかったけど、やっぱり天罰ってあるんですね?その気は無かったのに、凄く凄く悲惨でした」
みことは、 大きなため息を吐いて言った。
青女は呆れるように、そんなみことを見つめた。
「其方は大神様に会いたい一心で、ああしたと思うておった」
「そんな……。大神様にはお会いしたいけど、そこまでしたら、なんか良心痛みますよー。結局、親も身内もお怒りに触れてあっという間に死んじゃうし、なんか八つ当たり的な?鈴音ちゃんまで立て続けだったから、凄くお怒りなんだと思って……。もう一度の縁なんて諦めました。だけど、親と鈴音ちゃんの言ってた通り、碌でもない男性としか縁がなくて……」
「結局それでよかったのだ」
「よかないですよ。最後なんか、ストーカ扱いされて散々な目にあって、あっと言う間に車に轢かれてお陀仏です。それも轢き逃げされちゃったんですからね」
みことは必死になって語るが、青女は笑うしかない。




