怒れる大神7
「大神様は、未だに神泉を覗いておいでか?」
青女は青孤に聞いた。
「いや、当初は頻繁にお越しになり覗いておいでであったが、余りにあの者が悲惨な日々を送っておるを見られ、覗く事をされなくなった」
「そうか?」
「大地を動かし火山を噴火させたが、天と海が早く沈静したが為、仕方なく従われたが、お怒りは鎮まる事はなかった……。流石に時も経った故、あの者の不幸をご覧になられるはお辛かった様だ」
「あれで気がお済みにならねば、此方が困ってしまう。あの者の身近な者を九人だ。九人罰せられた」
「十人にならぬだけよかった」
「それは彼方が嫌味を言ったからであろう?」
「まあ……。いつまでも女々しいと、お揶揄いであった」
「面倒な事しかされぬお方だが、今回は実に彼方は役に立った。そうでなけば、遙の血筋は根刮ぎだった……。全く上といい根刮ぎがお好きな方々だ」
「熊よ、不遜であるぞ」
「誰もが思うておる事よ」
青女は豪快に笑った。
時が経った。
現世は意外と早く、復興に向けて動いている。
青孤達神使もその中心に居る、人間達は気づいていないだろうが……。
鹿静も赤獺も其処に居る。
「しかし其方は馬鹿よなぁ」
天の大神様は、相変わらずの調子で大神様に対座されて居る。
流石に鷺王の進言を聞き入れて、大神様が落ち着かれるのを待って来られた。
「そちらこそ、あんなにお早く手を緩められるとは……」
「ふん。其方があの様に憤怒しておったのだ、私が手を緩めねば根刮ぎであったぞ、根刮ぎ」
大神様はドヤ顔を、作られて言われた。
「あなた様とは違います」
「馬鹿め。其方は怒り出すと、鎮まるという事を知らぬ。己でそこの所を、理解しておらぬだろう?私はこう見えても、鷺の言う事は聞くだけは聞くのだ。だが、其方は青孤の言葉など聞く耳を持たぬ。あの時とて、私らが手を抜いて〝丁度〟であったろう?中の原の物は面白いからな、失くしてしまうには忍びない、そうであろう?」
「……………」
「くだらぬ女子の為にあれ程激怒するとは、実に其方は面白いヤツよ」
「……………」
「中の原を根刮ぎ致すは私の役である。其方の怒りに任せられては適わん」
天の大神様は、大神様の反応を見ておられたが、大神様は何の反応もお見せにならない。
「それに天照に恩を売るも悪くない、あれは天孫に中の原を統治させたからの。威張っておるが、其方には一目置いておる。あれだけの剣幕の其方を鎮めるは私しかおるまい?あの鼻を圧し折るに良い機会であった」
天の大神様は、それはそれは意地悪く微笑まれた。
「天照は中の原の者達に甘い、其方は統治されたにも関わらず、やはり甘いからあれは其方が味方であると思うておる。当初もっと大規模な浄化を予定しておったに、難色を示したは其方と天照であった。だがあれは表立って言えぬ故、其方頼みであったに、其方があの様に激怒しては……流石の天照も慌てておった……。故に〝貸し〟を作ってやった、其方のお陰で良い機会ができた。故にあれも暫くは私に偉そうに致さぬであろう」
「は?あなた様に偉そうに致すものなど、何処を探そうともおりませぬ」
「そうか?其方も天照も私に反抗的であるが?」
「反抗的ではございません。あなた様のお揶揄いが過ぎるのです」
大神様は呆れる様に、天の大神様を睨まれた。
「さようか?誕生の砌より、其方は私に反抗的であった」
「それは貴方様が、私を揶揄わられるからです」
「さようか?そうは思わぬが……」
「思わぬのは、貴方様だけでございます」
大神様は真顔で、楽しそうに笑みを浮かべて言われる、天の大神様を見て言われた。
「そう言えば、あの者はこれで……」
すると直ぐに話題を変え、天の大神様はスマホをお見せになられた。
「これで神山へ逃げる様、お告げがあったと拡散したが故、かなり叩かれたらしいぞ」
「その様な物をいつまでもお持ちとは……」
大神様は一瞥して言った。
「何を申す。今度は気がすむまで遊んで参るつもりよ」
「行かれるおつもりか?」
「せっかく浄化したのだ、如何な具合か確認に行くは、当然の事であろう?其方も行かれてはどうか?暫くは、影響を受ける事もあるまい?」
「…………………」
「流石に悲惨なあの者を見るは忍びないか?真の神山も知らぬ愚か者が、大して調べもせずにお告げを受けただのと……。人間如きが知りうる物など、あてにもならぬ物故、犠牲者が出るは当然の事」
「かの昔、遙の者は神託を受けました」
「おうよ。些細な神託から始まった……そして、大神を怒らせ後悔させた。あの血は大神を惑わす〝もの〟らしい……」
天の大神様は嘲るように言われたが、大神様は再び口を噤ぐまれた。
「そろそろ、あれを許してやってはどうだ?」
「誰が誰を許すので?私が許したとてあれが許すまい?私より選んだ親を葬ったは私だ」
「其方より選んだ?とは何の話しだ?」
「…………………」
「あれは親の為に、帰りたいと申したか?」
天の大神様は呆れる様に、年若い大神様をご覧になられた。
「愚かな者達よ。たかがその様な事で、あそこまで致したか?実に其方は愉快なヤツよ。私はこう見えて其方が好きであるが、尚一層と好きになったぞ……」
「……………」
大神様は何も言葉を、お返しに成らなかった。




