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神様のおでまし  作者: 東雲しの
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怒れる大神

「私は詳しくは解らないのですが、何故その様な事を?」


孤銀は訝しげに言った。


「え?あー、なんか話してるのを聞いたっていうか……聞こえたっていうか……」


「誰からですか?」


「誰?誰って……知らない人です」


「どの様な?」


「男の人?」


「若いものですか?年嵩のものですか?」


「わかりません」


みことは孤銀が根掘り葉掘り聞くので、反対に言って良いものかどうか不安になった。


「とにかく帰りましょ?お迎えに来てくださったんだし」


みことは訝しがる孤銀を置いて歩き出した。すると孤銀は慌てるように後をついて来た。



「みことが大地が動く事を聞いたって?」


青女が眉間に皺を寄せて孤銀に言った。


「ええ、誰かが話しているのを聞いた様です」


「はあ……。軽々しく話すものがいるものよ」


「誰だか調べますか?」


「いや、そこまでしたらまずい。とにかく様子を見るとしよう……」


そう青女と孤銀が話しをしていると、久しぶりに大神様がお成りになられた。

年若い孤銀は恐縮してその場でひれ伏した。


「その様に驚かずともよい、面をあげよ」


大神様はそう言うと


「みことは?」


と青女に聞かれた。


「お部屋においでです」


「そうか……」


「大神様」


青女は大神様に、孤銀から聞いた事を伝えた。

すると、大神様は一瞬戸惑ったご様子を見せられた。


「青女よ、如何致すがよいか?」


困惑の色を隠せない。

尊く強固なお力をお持ちの大神様でも、ご寵愛なさる女の人に関する事だと、この様な表情をお見せになるのかと、ひれ伏した孤銀は思った。


……青孤が青女に弱いのと同じだ……


まだまだ若い孤銀には、そんな事は解る筈もない。


「ご様子を見られてください」


「…………」


大神様は真顔で頷かれると、静かに青女の前を通って中に入って行かれた。



「みこと……」


大神様は部屋に入ると、声をお掛けになった。


「大神様」


みことはいつもの様に、嬉しそうに大神様に抱きついた。


「寂しい思いをさせたな」


「寂しかったです。毎日暇を持て余して、神泉を覗きに行ってました」


変わらずに朗らかに言うみことに、大神様はホッとされた。


「神泉に落ちるでないぞ」


「落ちませんよ」


可愛く拗ねる姿が、殊の外愛らしい。思わず引き寄せて口付けされた。


「神泉って覗いてると、思う所が見えるじゃないですか?」


大神様は再び唇を付けて、言葉を遮った。

みことはそれを受け入れて、長く唇を吸いあった。

大神様は唇を離すのを躊躇われた、みことが何を言うかそれが怖かった。

だが静かにみことが唇を離すと、優しく大神様の唇を指でなぞった、そして今迄に見たこともない眼差しを向けて来た。

潤んで光る眼差しは、色香を漂わせて艶いていた。

我を忘れそうになられた大神様は、辛うじて押し止めて身を引かれた。


「ちょっとだけ、帰って来てもいいですか?」


「帰りたいのか?」


大神様が再びみことをご覧になられた時は、もはや何時ものみことに戻っていた。

先程、あれ程に誘いをかけて来ていた者とは思えない。


「ちょっとだけです。着替えも取りに行きたいし、大神様のポポンで……」


「駄目だと言ったらどうするのだ?」


みことは真顔を作って、マジマジと大神様を見つめた。


「大地が動くってどういう事です?」


大神様の眉が、ピクリと上がった。


「大地震が起こるんですか?」


「……であったら、如何致す?」


「ほんとうに?」


「大地は時たま動いて、浄化を果たしておる」


「それって地震の事ですよね?大神様が起こしてるんですか?」


「私ではない。()()は自然が起こす事だ。お前達の生理現象の様なものだ」


「……じゃ、浄化って?」


大神様ははっきりと、不快な表情を浮かべられた。


「それは私が大地を動かす事だ」


「私がお願いしたら、お辞め頂けますか?」


「いいや……」


大神様は重くきっぱりと、仰せになられた。





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