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神様のおでまし  作者: 東雲しの
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神山5

大神様は毎日のようにみことの所に来ては、祠に帰って行く。

みことの部屋でしていた様に、神泉の月を愛でて二人の時間を大事にされた。

神山はお身体にも合うのだろうか、人間界にお出での時より体調も良さそうだ。

広く大きな洞窟屋敷の一室を、みことはあてがわれて、青孤の家族の様に日を過ごした。

どのくらい経ったのか、大神様はお忙しいのか近頃は、毎日の様には来てくださらなくなった。

そう言えば青孤も忙しそうだ。


「最近皆さん忙しそうですよね?」


みことが青女に、畑の野菜の収穫を手伝いながら言った。

神使達は食べねば死ぬわけでもないし、青女もそうだから野菜とか作る必要はないように思うが、生前の習慣と趣味で青孤宅には、家庭菜園があって青女だけでなく、青孤も作物を作っている。

だから、みことの為には丁度いいのだが、そう言えばみことも此処に来てから、そんなにお腹が空かないし、食べないからといって痩せ衰えるわけでもない。

それでも青女が作ってくれる、大胆且つ自然味に溢れた食事は美味しい。


「ああ……いろいろあるのだろう……」


青女は口籠る様に言った。


「大神様もお出でくださらないし……」


みことは寂しそうに呟いた。

こちらの生活にも慣れて来ているので、一人で神泉に行く事も大神様から、お許し頂ける様になった。

最近気がついたのだが、神泉はずっと覗いていると、みことが思う人間界が見える様だ。

大神様が余り来てくださらなくなって寂しいみことは、この神泉を除き見て日を過ごす事が多くなった。


「ちょっとだけ帰りたいな……」


なんて里心がつく。

恋する女って身勝手だ。大好きな人が傍に居たら、寂しいとか里心とかつかないくせに、ほったらかしにされたら、しおらしく親を懐かしむなんて……。


「そろそろ大地を動かすらしいな」


神泉を通りかかった、神使らしい二人が話している。


「ああ、今回はかなり大掛かりになるらしい」


「噂に聞く、浄化ってヤツか?」


「あ、それ聞いた事があるが、それか?」


「大地が動くのを合図に、天と海も動くってヤツ……」


「不浄になった物を、洗い流すんだろ?」


「……って話しだが、我らも経験ないからなぁ」


「神様の伝令が忙しい。とにかく人間の所が一番大きいだろうな?」


「ああ、なんとかってヤツで拡散とかしてるらしいが、どうなるやら……」


「そう言えば、大神様ご寵愛の美女が、此処に来ているらしい」


「大神様のか?そういう事なら、やはり大きく動くな」


「大神様ご寵愛となれば、万が一の事があっては大変だ」


「我らが神山は大事ないが、地上のものは難儀だな……」


「神様のお決めになられた事だ、仕方がない」


「明日も呼び出されてるから、忙しいな……」


「仕方ない仕方ない……」


二人は神泉を覗く事もせずに、話しながら歩いて行った。

みことは、二人の話しを聞いて考え込んだ。


「大地が動くって、地震が起きるって事かな?マジ?大変じゃん?それもかなり大きいヤツ?」


とにかくみことは、頭の回転がスローな方だから、暫く考えないと纏まらない。

神泉の前で考え込んでいると


「みこと様」


と呼ばれて、みことは辺りを見回した。


「みこと様」


「あー私の事ね?」


振り返って、名を呼ぶ美男子に目をやった。


「お帰りが遅いのでお迎えに参りました」


「あー、はい……」


「あっ、青孤の従兄弟の孤銀と申します」


「孤銀さん?」


青孤とは違った、丸顔の美男子だ。


「……様なんて呼ばれちゃったから、私だと思わなかった」


みことは照れる様に笑った。


「大神様の大事なお方ですから……」


「大事なお方……って」


なんだか恥ずかしいやら照れるやら……。

おっとと……。そうじゃない。


「これから大きく、大地が動くんですか?」


みことは孤銀に、祖母の言いつけ通り素直に聞いた。


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