神山4
神山は月がとても綺麗だ。
地上より高いし神力ってヤツで、空気が綺麗なのかもしれない。
キラキラ輝く星々も凄く綺麗に見える。
「月の光で、散歩して来てもいいですか?」
みことは挨拶に来る、眷属神や神使達の応対に追われる大神様に言った。
「神泉には落ちるでないぞ」
大神様はご心配顔で言われた。
みことのドジを十分に知っているから、ひとり歩きは心配で仕方ないご様子だ。
「大神様があの様にご執心とは……」
眷属の者達は、みことを好奇の目で見た。
「気にするな」
青女が気を利かせて、一緒に外に出た。
「ひとりでも大丈夫ですよ。此処は凄く月が明るいから……」
「みことは大事なくとも、大神様はそうではない」
「私がドジだから、心配されるんです」
みことが大きく、溜息を吐いて言った。
「愛しい者はドジに見えるのだ。私など青孤が心配でならない」
「えー青孤さん?あんなに何でもできるのに?」
「……の様だが、私には最初に出会った時の、傷だらけで今にも死んでしまうかもしれない、弱り切った〝あお〟だ。いつまで経ってもそうだから、一族を率いて行く眷属神であったとしても、なんか心許無くて……。はは……それを言うと叱られるがな」
「そうなんですか?」
「まして、大神様は大神だ。気に掛けてくだされば、畏れ多いが有り難い……」
「身に余りすぎです……」
「その気持ちをいつまでも、忘れてはならないぞ」
「はい……」
そう返事をした時に、神泉に着いていた。
思った通り月に照らされて、水面がキラキラと輝いてそれは綺麗だ。
「ほら……」
青女が指差す方を見ると、水面に月がくっきりと映し出されている。
「わ!凄い」
みことは瞳をキラキラと輝かせて見入った。
「余り見入ると落ちます」
青女が経験からみことを窘めた。
「ああ……」
「大神様は暫く其方を、此処に置かれたいご様子だ」
「そうなんですか?大神様にお仕えできれば幸せですけど……」
「真にそうか?」
「はい。彼方は母が店番してくれるし……大神様にお仕えするのは当たり前になってるので、大神様のお側に居られれば幸せです」
みことは屈託なく笑った。
「大神様はずっと此処に、ご滞在される事はない」
「えっ?じゃあ、その時は一緒に……」
「……ではなくて、大神様は別の所にお戻りになるのだが、しばしば此処へは参られる」
「あー、祠的な所に戻られるんですか?神山でもそうなんだ……」
「祠?」
「うちの裏の林にある祠に、ずっといらしたから。凄く小さい祠なんですけど、神気が高いとか?お姉君様の女神様も、其処に滞在されてました」
「あ?そんな感じやもしれん」
「じゃあ、私はずっと青孤さんの、お宅にお世話になるんですか?なんか申し訳ないですね……」
「それは構わない。其方がそうしてくれると私たちは嬉しい、それに同じ人間だから、大神様も安心される」
「私もそうして頂けると安心です」
みことは笑顔を見せると、泉に視線を向けた。
「暫く居ると納得したか?」
青孤は青女から、みことが此処に滞在する事を納得したと聞いて、安堵の様子を見せた。
「あの娘、実に可愛いな」
青女は青孤の反応を、確かめる様に言った。
「当然であろう、大神様のお好みだ……」
「あの様に純な娘に好意を持たれるは、悪い気は致すまい?」
「悪い気は致さぬが……それだけだ」
青孤は初めて見せる、青女の様子にタジタジとなって言った。
「大神様が懸念致したのだ……本心を申してみよ」
「大神様が?」
青女が言い寄るから、青孤は後退りする。
「其方とあの娘を遠ざけて、赤獺に共を命じたのであろう?」
「やや?そうなのか?」
「しらじらしい。其方ともあろうものが、解らんはずはなかろう?」
「いや待て!そんな事は真に知らん。大神様がその様なお考えを持たれたなど……」
青孤は身を縮ませて青女を見た。
「下手をすれば、身をひきちぎられておったぞ」




