神山3
「洞窟のお屋敷、思っていたより凄いですね?」
みことが関心して見て回る。
「二人の時は、空いてる穴で充分だったけど、子供が増えると広げないと」
「此処で新婚生活始めたんですか?」
「所帯を持った当初は現世で……。私の天寿が尽きるまでは、向こうで暮らしてました」
「ええ!青孤さんも?」
「ええ。当時は鬼征伐の後だったので、先代の大神様より〝時を頂き〟二人で山を切り開いて、野良をしたりして、一番のんびりとした時を送りました」
「意外と神使のお仕事って忙しいんですね?」
「うーん。大神様が、誕生されてからかな?」
「……ああ……」
みことはちょっと考える素振りをみせた。
大きく頷くには憚れるが、解るような気もする。
「青女」
青女自慢の洞窟屋敷を散策していると、見慣れない体格のいい神使が声をかけてきた。
「土猪ではないか?」
「久方ぶりであるな、変わりなく子を儲ておるか?」
「おるおる。我が一族を其方の所より強うせねば」
「はは、其方が母ならば、分が悪いな」
「流石の私も、其方達眷属神には適わん」
青女が楽しげに言った。
「ああ、土猪人間のみことだ」
「人間とな?青孤は人間が好きよな」
「何を言っておる、大神様がお連れの人間だ」
「おお?あれか?」
土猪はマジマジとみことを見た。
「みこと、これなるは眷属神の土猪と申すものだ」
「土猪さん?マッチョカッコイイですね?」
「?????」
土猪はみことを見て唖然としている。
我らが大神様が見初められし、それは麗しい乙女を一目見ようと、勇んで飛んで来たが、目の前の娘はお世辞にも美女とは言いかねる。
まあ、あの青孤の嫁が〝こう〟なのだから、然程吃驚はしないが。
……やはり、お目付け役が、青孤であったがいけなかったか……
土猪はおくびにも出せないが……。思わず思ってしまった。
「そう言えば、鹿静も人間の嫁を娶った筈、共に戻って参ったか?」
「いや、今回は一緒ではない」
青女が言うと
「鹿静さんと鈴音ちゃんは、海外にお仕事に行ってるそうですよ」
みことが言った。
「鹿静をご存知で?」
「はい。お嫁さんの鈴音ちゃんは、私の友人なんです」
「それは奇遇な?私は婚儀の折行かれなかったので……」
土猪はみことにそう言うと、決して美女ではないが、懐こくて愛嬌のあるみことに好感を持った。
「大神様は中に在わすか?ご挨拶を致して参る」
そういうと、慌しく行ってしまった。
「あれはああいうもの故、お気になさらず」
青女が笑顔で言った。
「とても親しげな方ですね?」
「ああ、青孤の幼馴染で、私の命の恩人で……」
「え?そうなんですか?」
「かなりのおっちょこちょいですが、いざという時頼りになります」
「へー。神使ってスッとカッコいい〝人〟ばかりかと思ってましたけど、ムキムキのイケメンもいるんですね」
「はあ?言われている事は、ちょっと解りませんが、神使にもいろいろあります。以前青孤が私の居た山で見つけた主は、あれより大きくて力持ちです。今や頼もしい神使となりました」
「え?主も神使になれるんですか?」
「眷属神に見初められると……ですけどね。その動物に関わる神使が、見つけて眷属神に見立ててもらい、お許しが出ると神使となれるんです。青孤は眷属神だったので、一発で見初めて土猪に推薦したんです。あれは本当にいい物だったので、先々眷属神まで行く事でしょう」
「へえ……」
みことは興味津々だ。
青孤の幼馴染みにまで会えてしまって、来てよかったと楽しい。
特に青孤の奥さんの青女さんは、外見は想像と違っていたけど、話しに聞くよりずっと素敵で魅力的だ。
優しいしみことによくしてくれるから、大神様の初恋の相手でも許せる気がする。
……うっ、なんて不遜な……




