神山2
青女はみことの理想的な女性ではないが、誰もが惹かれる魅力的な女性だ。
青孤と大神様が好きになるのが、解るような気がする。
大神様の初恋の相手と思えば、ちょっと前だったら自分と比較し、ウジウジグジグジと妬んだり拗ねたり、嫉妬していただろうが、今はどうだろう大神様が毎日の様に愛してくださるから、青女とこうしていても不思議と気にしないでいられる。
「ここが神泉です」
「あー此処が?人間が落ちたら、吸い込まれて現世の何処かにポン……ってヤツ」
「ご存知で?」
「赤獺さんから……」
青孤の事を根掘り葉掘り聞いたとは、口が裂けても言えない。
「以前私も落ちて」
「ポンでしょ?ポン」
「はは……。傷は負ったけど、死ななかったのは私くらいなもんらしいです。あっ!此処にいる間入っちゃダメですよ」
「私は無理無理。青女さんみたく非凡じゃないから……」
「非凡だなんて、只誰よりも力はあるけど、へへへ……」
青女は屈託なく笑った、その姿が幼女の様に可愛い。
「ああ、私の居たお山に私しか行けない池があって、其処に自生していた薬草を、此処に持って来て植えたのがあれ……」
青女は泉の先に、いっぱいに生い茂る草花を指して言った。
「えー凄い」
みことが走って見に行く、その後を青女が歩いていると。
「青女」
ある着飾った婦人に呼び止められた。
「これは……」
「近々大地を動かすとか?」
「えっ?どなたからの?」
「旦那様から聞いたのだが、真であろうか?」
「いえ。はっきりとは致さぬ故、余り口になさらぬ方が宜しいかと?」
「そ、そうか……。そうね、そうする」
婦人はそう言うと、そそくさと立ち去った。
「あれは、相当言いふらしておるな」
青女は苦虫を噛んだような、表情を作って言った。
「青女さん、どうしたんです?なんか不機嫌そう?」
「あ?ああ……。此処も人間も、お喋りなものがおるな……と」
「へえ?そういえば、神使って女性はいるんですか?」
「ああ、力のあるものがなるので、おります。多少ですけど」
「ふーん?神様に見初められたりしたり?」
「神々様は奔放な方達ですから……」
「マジ?いるんだ?……って事は、逆も有りか?えー!青孤さんヤバいじゃないですか?」
「え?」
「みことよ、青女が困惑致す様な事を申すでない」
「あ、大神様」
みことが嬉しそうに駆け寄った。
「お久しぶりにございます」
「うむ、青女も変わりないか?」
「はい」
「何時もながら、青孤を忙しくさせてすまぬな」
「とんでもございません。お役に立てれば本望にございましょう」
青女はそう言いながら、大神様とみことを見つめた。
以前大神様が、青孤に共をさせなくなった事があった。
その時は、形ばかりの新たな命を受け、青孤自身が不思議に感じていたが、理由は此処にあった様だ。
彼方の大神様がお出ましになられたり、大神様もご不調がお有りになられたりと、いろいろあるので結局の所側付きに変わりない状態だが……。
大神様は、青孤に興味を持つこの可愛いらしい娘から、青孤を遠ざけたのだろう。
青女とて女だ。稀有なる女子ともてはやされようと、女の勘は持ち合わせている。
青孤に興味を持つ人間の娘が居ると聞いただけで、すぐに名前を覚えたし、どんな娘かも気に掛かった。
だから見立ては間違いない。
経緯はいろいろ聞いている。この大神様を虜にする娘だが、なんと純な娘だろう。
……こういう娘がお好みか……
青女はほのぼのとした、若い二人を快く思った。
大神様がご来臨ともなれば、神山の住人とて大騒ぎとなる。
青女が整えたという洞窟の屋敷は、一族のもの達でてんやわんやとなった。
ちょっと離れた所に屋敷を構える、お父君様とお母君様も挨拶に来たし、青孤の子供達も来たが、本当に皆美形揃いだ。それに青女の屈強さが備わって、子供達は他のもの達より凛々しい。




