神山
お読み頂きありがとうございます。
たらたらと、まったり進んでおりますが、そろそろ佳境に入って参ります。
……とは言え、やはり、たらたらまったりと、お話しは進みますので、もう少しお付き合いください。
神山に着くと、それは多くの神使達が挨拶に来た。
その中で一際目立つ大きな女性がいる。
他の婦人達と違って着飾ってもいないし、どちらかというと質素で動きを重視した装いだ。
それでも魅力的で凛々しく綺麗だ。
「熊……」
青孤はみことが目に止めた、その女性を手招きして呼んだ。
「嫁の熊だ」
青孤は先代の大神様から賜った、〝青女〟という名を呼ばずに、ずっと〝熊〟と呼んでいる、それは愛しみを持って。
「あー遙みことです」
「ああ、あの?」
青女は青孤を見て言った。
「あ・の大神様がご執心のみことである」
「ふーん?あの大神様の……」
青女は値踏みするように、みことに見入った。
「大神様はお疲れ故、暫し休まれる。その間其方が、みことの相手を致せ」
「それは造作ないが、何処にお休み頂くのだ?」
青女は小声で青孤に聞いた。
「我らの所で……」
「え?こんなむさ苦しい所でか?幾ら何でも、現世のお嬢様に失礼だろう?」
「私も大神様も、ポポンと宮殿でも建てる気概であったが、お嬢様が洞窟の方が良いと仰せだ」
「本当か?」
青女が、青孤を探る様に睨め付けた。
「本当だ本当だ」
青孤は他人には、見せた事もない表情を浮かべる。
「あー本当です。大神様に聞かれて、そう言いました」
「おやまあ?変わってるねぇ……。まぁ、あの大神様のご寵愛を受けるんだから、かなりの大物だ」
「いやいや、彼方の大神様ともご対面済みだ」
「ええ!あの大神様かい?」
青女は関心しきりで、みことから目が離せない。
「あの方とお会いするのに、私は何百年?いや千……。それは凄いな、お許し頂いておれば、大神妃も夢ではなかろう?」
「お姉君様とお呼びになっておる」
「ええ?何故?」
「この者の意識だそうだ、大神様が痛快そうに言われた」
「それをお許しになるとは……」
青女は大いに感嘆して、笑みを浮かべた。
「いえ、あれは大神様が……って、やっぱりお姉君様は失礼ですよね?女神様とお呼びしないと、いけなかった?」
「女神様?」
「美の女神様なんでしょ?日本のヴィーナス的な?」
「?????」
青女はちょっと頭の怪しいみことから、視線を青孤に変えた。
「女神様と思い込んで、女神様にしか見えぬらしい」
「は?ははは」
青女は声高々に笑った。
「それをお許しになるとは……」
腹を抱えて笑う青女は
「私は彼方が好きになった」
天を指差して言う。
「彼方がお許しになれば、もはや決まりだ」
「そりゃあそうだが……」
「私は大神様のご様子を見て参る故、粗相のないように頼んだぞ」
「ああ、任せておけ」
青女は、まだ笑いが止められぬという様子で言った。
「では、ここら辺を案内致しましょう」
「はい、お願いします」
みことはウキウキしながら言った。
噂に聞いていた〝青孤の嫁〟に会えて、本当に嬉しくてたまらない。
ウキウキルンルンだ。
「この神山は此処ではずっと地続きだが、彼方……人間界では、点在して在るんです」
「点在?」
「駿河国に在ったり、大和国に在ったり……」
「ああ!静岡とか奈良とかに在るって事ですよね?」
「???かもしれません?」
「富士山とかが有名みたいですけど?」
「霊峰ですから。しかし他にも、名もない神山は沢山在るのです。あれらは、人間が決めた物で、実はこうしてずっと広く地続きなわけですから。気づかれずに姿を現している、神山は沢山あるのです」
「へえー」
「以前私が暮らしていたお山も、神山となりました」
「え?そうなんですか?」
「眷属神が自ら切り拓いて、田畑を耕したのだから、当然の事です」
「ああ、青孤さんて眷属神なんですよね?」
「神山は眷属神の住む所ですから、あながち人間がいう〝神が宿る〟というのは、嘘じゃありませんけど」
青女は屈託なく笑った。




