鹿静と鈴音13
「とうとう動いたか……」
天の大神様は、鷺王の配下からの報告に呟かれた。
「では、大神様もお戻りになられますか?」
「馬鹿を申すな。ぎり遊んで参るに決まっておろう?」
「大神様、実にお楽しみだったのですね」
「当たり前だ。この私が楽しくない事を致すわけがなかろう?」
「いえ、もしかしたら彼方の大神様の御為に、残られたのやもしれぬと思いまして……」
「心配しておろう?ちゃんとしておろう?とろい彼奴も動いたであろう?私の思惑通りであろう?何を其方は文句を言うておる……」
「文句など……」
「ただ此処は面白い故、もう少し遊んで参ると申しただけであろう?何も彼奴の邪魔をするとは申しておるわけではなかろう」
大神様はプンプン怒られている。
「何もそこまで怒られずとも……」
「其方は何時もいつも、文句が多いのだ」
「それは大神様が、誤解を招く事をされるからでございます」
大神様は頰を膨らまして、不貞腐れてお見せになった。
この様なお姿を見ると、とても愛らしいのに、どうしてあのような態度ばかりなさるのか……。
鷺王は大きく溜息を吐いた。
「しかし、天は上手く生き物を作られたものよ。地に生きし者達は、己達で均整を図るようにできておる。一種が増えすぎぬ様食い合うし、それでも足らぬ場合は共喰いを致す。それでも足らぬ場合は、己達で死に急ぐ……。人間に業があり歪み合うは、一種が増えぬ為の本能であろうが、残念な事に天意に叛く行為が目に余る。私は実に中の原は、面白いというに残念である……」
「大神様を急かされたは、大神様にございます」
「あれを見ておれば仕方なかろう?地に立ちて脆弱なあれが、どれ程もつか?いいか、あれはあれ自身が測りなのだ。あれが居るべき場所に立ち、どれ程の影響を受けるか、あれ自身が己で測るのだ。その為に尊く誕生し全ての権限を手に致しておる。地をどの程度動かして均整を保つか……全てはあれの算段で決まる。我らはそれに合わせて事を起こす。だがあれは地上のものに愛着を持ち過ぎる、特に一人の人間に執着致すとは……」
「大神様の様に割り切れぬからこそ、尊くご誕生されたのです」
「おうよ。私が測りであらば、全てを排除致し新たに始める」
「かつて大神様は、そのようになされました」
「先代の先代辺りか?もっと前か?」
「その折に、全て地上のものは消え去りました」
「何を言う!恩情をかけし物達がおったであろう?」
「その物達が今のもの達の祖先にございます」
「……であろう?全て全てというが、ちゃんと考えておるのよ」
「あれは、天照様と海神様により、残されたもの達にございます。大神様がお考えの果てに、された事ではございません」
鷺王はこの大神が、決断するのではなくてよかったと思っている。
口ではこう言っているが、今のこの方なら〝全て〟を〝根刮ぎ〟無くされてしまうだろう。
以前の反省から、あの大神様がご誕生なされた。
この時を決断される為に……。
地の大神は地上の全てのものを、慈しみ慈愛なさる。
話しかけ諌め諭し、生きて行く指針を示される。
決して根刮ぎはなさらず、根を残し再起の機会をお与えになる。
全てを残す事を決断される。
その様に天意が生み出されたのだ。
……だがいずれ、この方が決断される時が来る……
……とても聡いこのお方は、それを悟っておられる……
翌朝大神様は普段に増して、ゆっくりとモーニング珈琲をご堪能になられた。
「みこと此処に参れ」
大神様はそう言われて、みことを隣に座らせて自撮りをされた。
「大神様、そんな事までおできになられるんですか?」
みことが関心して言った。
「なんでもできて大神である」
「だったら、お姉君様と仲良くしてくださいよ」
「それは嫌だ」
「あんなにお綺麗な方なのに?」
「私がいなければ、其方の末路は悲惨であると、今し方悟った」
「どういう意味ですか?」
「綺麗とかイケメンというだけで、良いヤツと思うは大間違いである」
大神様は真剣にみことに言われた。
お読み頂き、ありがとうございます。
最終章とやらに突入いたします。
もう少しでございます。
お付き合い頂けると、倖せでございます。




