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神様のおでまし  作者: 東雲しの
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鹿静と鈴音9

 青孤は大神様と鷺王の会話に、チェックを入れていた。

 かの昔ならともかく、今の時代で鬼女の晒し刑は珍しい。

 あれは、完全に鬼質を抹消する為に行う儀式だ。

 現世は神使のみならず、もののけ妖怪霊の類も多くいる。

 鬼とて居たとしてもおかしくないが、〝あの儀式〟を司れるは天の神のみだ。

 それは、高の原に百日晒さねばならないし、灼熱の業火に焼かれねばならないからだ。

 故に太陽に最も近い、高の原を治められるもののみができる儀式だ。

 

 赤獺は天の大神様を恐れて隠れていたが、みことと良い関係の大神様に気を使って、お側を離れている事は、赤獺自身から報告を受けている。

 鳴りを潜めている鹿静が、気になっている。

 大神様ご誕生の砌よりの仲だ。

 虫の知らせか神使の勘か青孤が鋭いのか……。

 青孤は鹿静のマンションに飛んだ。

 鹿静は真っ暗な寝室で、苦しげに唸り続けている鈴音を介抱していた。


「やはり来たか?」


 鹿静は覚悟をしていたように言った。


「如何致したのだ?」


「鈴音の内に有った、鬼女の〝質〟を剥ぎ取って頂いたのだ」


「天の大神様か?」


「ああ、あのお方が見つけて下された」


「……其方、存じておったか?」


「まさか、鬼女の〝気〟が僅かながら有るは気づいておったが、まさか鬼女が内に有ったとは……それも儘有ったそうだ」


「……儘か?故に其方、今生のみの縁と、割り切っておったのか?」


「致し方あるまい?そうでもせねば、一緒になれまい?」


「大神様ならば、僅かの鬼女の〝気〟ぐらいお許しになられる」


「ただの鬼女ならばな……いやいや、端から怪しんでおったのだ。只の鬼女ではないように思うた、故に其方達にも知られぬよう、私が〝気〟を隠しておったのだ」


「ただの鬼女とは如何なる意味だ?」


「其方も承知の先代様の鬼征伐の原因が、鈴音の内に有った鬼女だ」


「???」


「其方も知らされず征伐に行ったが、先代様のご寵愛を受けた巫女を陥れ、先代様をも辱めたのだ、その為先代様は激怒され征伐された」


「なんと?あの征伐はその為か?」


「天の大神様が、その鬼女を現世に見逃された、それ故に天の大神様には、お解りになられた」


「恐ろしいまでに聡いお方よ……で?鈴音は鬼女を剥ぎ取り、晒し刑にしたのか?」


「ああ……。こんなに苦しんでおる……」


「可哀想に……。()()に薬も何も無い。只百日近く苦しむだけだ。そうしなければ、身体に染み付いた鬼女の〝質〟が抜けきれぬし、最も厄介な業が失せぬ……」


「ああ……。だが有り難い事に、鈴音が決断してくれたお陰で、大神様に面目が立った」


「…………」


「以前より、大神様は青孤の所の様に、鈴音を神山に連れ帰る事を、お許しくださっておったが、私は如何しても、それだけはしてはならぬと思うておった。鈴音の内より醸し出す何かが、私を躊躇させておったのだ、故に今生のみの契りと覚悟しておった……。鬼女が儘有ったとは……。大神様に面目が立たぬ」


「大神様は確かに、鈴音をお許しになられておったのか?」


「そのつもりであると仰せになられた。今生の内に私に教育致す様言われ、天寿を全うする時に、二人で話し合えと……」


「さようか?」


「如何致した?」


「先代様の鬼征伐がそれ故にならば、先代の遺恨が大神様に有ってもよいかと?」


「それはチラリと天の大神様も仰せであった……。遺恨はあるはず故、鈴音の天寿は全うできぬと……」


「なのに気づかれずに済んでおる……」


「おおらかなご性分なお方故……」


「馬鹿を申せ。かの幽閉された事は、未だに根に持たれておる」


「そうであった……」


「ううう……」


 鈴音が苦しげな声を上げた。


「良くなる一方であると言われても、この苦しみ様は見ておれん」


 鹿静が口惜しげに言った。


「神泉の水で身体を清めてやれ。少しはいいだろう?ああ、熊に言って良さげな薬草を探させよう」


「それは有り難い」

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