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神様のおでまし  作者: 東雲しの
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鹿静と鈴音8

「変わりないか?青孤」


 鷺王は懐かしげに近寄って来て言った。


「変わりない、其方はどうか?」


「変わり様はないが、何せこのお方がおられる故、少し窶れは致しておらぬか?」


 鷺王は、大神様の面前など気にやらぬ様子で言った。

 さもあらん、この鷺王はこの美しくも尊く、気高く聡いお方のお目付け役である。

 唯一大神様が頭が上がらぬ従者だ。

 青孤より少し目上だが、気さくでそつの無い青孤を、若き頃より可愛がってくれている。

 大神様がご誕生になり、青孤もお目付け役の大役を頂いた為、しばしば相談をして来ている。

 なんといってもお二方は対を成すお方達の為、というよりあの調子の為、相談事は余りに多い。


「うむ……多少窶れたやもしれぬ?」


「であろう?今回も天照様を怒らせて、とっとと此方に逃げて来られたのだ」


「な、なんと?」


 流石の青孤も声を上げた。


「あの、天照様か?」


「あの………だ」


「ふん。最高神とか持て囃され、威張っておるから少しボコってやったのだ」


「な、なんと?何というお言葉でございます?」


「現世の若者が多く使う言葉で、ボコボコにするという意味で……???大神様?」


 青孤は大神様を凝視した。


「ボコボコではない、だからボコなのだ」


「何を申されます!天照様は酷く恐れられ……」


「あやつは些細な事に大仰なのだ。素戔嗚の時も……」


「もうもう、宜しゅうございます。先日は鬼女を高の原に野晒しとされ……」


「鬼女?」


「ああ、あれはあれでよいのだ。あのままにしておろうな?」


「百日の刑でございますれば……」


「百日の刑?」


 青孤が大神様を再び凝視する。


「百日経ったら灼熱の元に焼き払え」


「その様に申し伝えて参りました」


 鷺王は大神様を凝視する青孤に


「其方の大神様はお変わりないか?」


 囁くように言った。

 

「はい」


「ならばよいが……。万が一お倒れになられれば、我が大神様が先陣を切るおつもりでおられる」


「なんと?」


「其方も存じておる通り。あのお方は事を始められると、どんどん楽しくなられて、根刮ぎやられかねん」


「それはまずい、それだけは避けたい」


「故に忠告しておるのだ。あのお方は恩情をお掛けになられる時は、それは厚くお掛けになられるが、持って生まれた物が冷たい物であるから、非情な所もお有りになる。何せあの天照様をボコられるのだぞ。私もご誕生の砌よりお仕え致して参ったが、()()には仰天致した」


「…………」


「あのお方は()()()のお方と違い、聡過ぎ冷酷な所をお持ちだ、呉々も判断を間違われぬよう、シカと進言致さねばならぬぞ」


 鷺王は噛みしめるように言った。


「よいな……」


 青孤は神妙に頷いた。


「大神様これから現世を、物見遊山なさるとか?」


「どうせ天照がおこであろう?」


「大神様、その物言いはおやめください。それに天照様がお怒りであろうと、屁の河童ではございませんか?」


「覚えたてなので、使ってみたいのだ」

 

「はあ……。どの程度此処に在わすおつもりかは存じませんが、下賤な言葉で溢れかえりそうにございます」


 鷺王は溜息を吐いた。


「なんと下賤などと、よくよく聞いておると、実に理にかなった言葉である。人間とは実に面白い。()()が惚けるわけである」


「あちらは大神様と違い、温かい物でおできになられておられるのです」


「それで脆弱では仕方あるまい?」


「ああ、さようにございますな。ささ、さっさと参りましょう」


 ……()()大神様を邪険に扱えあるのは、鷺王だけである……


 そう青孤は感心するように、姿を消す二人を見送った。

 大神様が残されたお言葉も気になる。

 しかしその先の鷺王の言葉は、もっと気になる。


 ……まさか、それを望まれてはおられないだろうな……


 あの方の心中だけはお読みできない。


 ……本当に氷よりも冷たい物で、おできになられているのやもしれない……


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