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神様のおでまし  作者: 東雲しの
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鹿静と鈴音3

 鹿静は鈴音の手を取って立ち上がった。

 鈴音は素直に鹿静に従って立ち上がって、愛する夫を見つめた。

 鹿静は苦しげに笑むと、鈴音の目を覗き込んだ。


「鹿静よ。もうよい……」


 鹿静と鈴音は声のする方に顔を向けた。


「女神様?」


「女神ではないわ!」


 天の大神様が、二人の座っていたソファに腰掛けていた。


「如何致すか興味津々であったが……。お前が先に言うた通り無理矢理消した所で、鬼女の気をほんの少しでも持つこの者は、いずれ思い出してしまうぞ。さすればそれがこの者の遺恨となる」


「しかしながら……」


「ふーん?厄介なものよ」


 大神様はそう言うと、まじまじと鈴音を睨め付けられた。

 

「その方……鹿静と別れるくらいなら、いっそ殺してくれと申したな?」


「はい」


「ほほう?それ程迄に、この神使が好きか?」


「はい」


「ほほう?それは本心であろうか?」


 大神様は意地悪な言い方をなさった。


「本当です。私は鹿静を愛してます。別れるくらいなら、死んだ方がマシです」


「なるほど……。其方の気は本当に微々たるものよ。もし、来世があるとすればその時には、その悍ましい〝気〟は失せておろうに……」


「え?」


 鹿静と鈴音は大神様を見つめた。


「しかしながら残念な事に、今生では微かに残ってしまった。これは因縁であろうなぁ……」


 尚も大神様は意地悪な言い方をなさって、鈴音を見続けておいでだ。


「これ程迄に微かに残るとは……」


 残念そうに首を振られて、鹿静へと視線を変えられた。


「鬼女の気を剥ぐ事は、この程度ならば造作もない事」


「さようにございますか」


 鹿静はパッと表情を明るくして聞いた。

 

「うむ。だが真に因縁であるな、この者の〝内〟を剥ぐのは、かなり危険を伴う」


「何故にございます?」


「お前には気の毒だが、気はほんの少しでも、 この者は鬼女の〝質〟でできておる。これ程の者を如何して神使が虜となり得たか……。真に因縁である」


「い、如何致せばよいのです?」


「簡単な事よ。死んだ方がマシなくらい、其方に惚れ抜いておるのだから、命がけで鬼女なる〝内〟を剥がせればよい」


「そんなに危険な事ならば……」


「どうせ死んだ方がマシなのだ。そうであろう?」


 天の大神様は、本当に意地の悪いお方だ。

 大神様が火山を噴火されて悔しがられたが、そのお気持ちが理解できる。

 

「其方が()()()()思っておるなら、手を貸してやらんでもない」


 大神様は微笑みながら鈴音に言われた。


「其方の内の鬼女を剥げ」


「しかしながら、鬼女の気は僅かだと?」


 鹿静は大神様に縋る思いで言った。


「そうよ。しかしながら、この者の内は鬼女の質そのものである」


「は?」


「気が無くば誰も解らぬ。微かならば特定のものしか解らぬ。だが、幼少の砌恩情をかけた鬼女の気を、私は気の毒だが解るのだ。故に〝気〟を取るくらいなら造作もない事であるが、〝内〟なるものがある限り、その〝気〟は消えぬ。この者の全てが消えぬ限りな」


 鹿静は鈴音を静かに見つめた。


「鈴音、どうか私の言う事を素直に聞いてくれ」


 鈴音の動揺が解った。

 だから鹿静は、鈴音に納得させて別れる事を催促した。


「まずは高の原でお前の皮を剥ぐ」


 大神様は動揺する鈴音に、追い討ちをかけるように言われた。


「大神様。どうかお辞めください、後生にございます」


 鹿静は懇願するようにひれ伏した。


「中身を知らねば選択はできまい?」


 大神様は鈴音を睨め付けたまま、口元を綻ばせて言われた。


「何故ゆえ高の原だか教えようか?私が恩情をかけた場所であるからだ。そして其方の〝内〟なる鬼女を剥ぐ。がしかし、容易く剥げるものか、手間のかかるものかはその場でないと解らぬ。故に危険を伴うのだ」


「もし、手間のかかる鬼女だったら?」


 蒼ざめた鈴音が大神様に聞いた。


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