表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神様のおでまし  作者: 東雲しの
69/100

鹿静と鈴音2

「鬼が我が物顔で、闊歩していた頃の話しだ」


 鈴音は視線を逸らす事なく、真顔の鹿静を直視した。無論鹿静もじっと見ている。


「お前の欠点はその鬼女の〝気〟が、もたらしている」


「何が言いたの?私の性格が気に入らない?だったら言ってくれれば……」


「性格は……」


 鹿静は涙を堪えるのに必死だ。


「私が鬼女の末裔だから?だから別れるの?大神様にそう言われた?」


「……お前の先祖の鬼女が、大神様を激怒させたんだ……」


 やっとの事で言う。


「神使だから、大神様を怒らせた鬼女の末裔とは、一緒に暮らしちゃいけないの?大神様は罰を与える事をしないって……」


 鈴音も目に涙を溜めた。


「ああ、大神様は、ご存知ないやもしれぬ様なお方だ」


「だったら……」


「そんなお方に天罰を与える……。そうさせる程の事を、お前の祖先はしたんだ」


「そんな……私の先祖が何をしたって言うの?」


 鹿静がこよなく愛する、鈴音の瞳から大粒の涙が溢れ落ちた。

 美しくて大きな涙。

 それを見ると胸が痛む涙。


「先代の大神様が愛された女性(かた)を、陥れたのだ」


「先代の大神様は、人間を愛されたの?」


「ああ。みことの祖先の縁者だ。姉か妹か……。大神様は未だにその遺恨をお持ちだ。知られれば大神様は、お許しにならない」


「知られれば、私は殺されちゃうって事?」


「さあ?お怒りになれば、火山の一つくらい容易く噴火させられる。あのお方は、大神様の中でもダントツのお力をお持ちだ、計りしれようがない……。私と別れみことと関わりを持たねば、大神様もお気がつかれる事はないだろう。だが万が一お気がつかれた時、其方の先行きは想像もつかぬ程の辛苦しかない」


 鈴音は全身から力が抜けるのを覚えて、ソファに寄りかかった。

 知らぬ鬼女の為に、何故今の幸せを犠牲にしなくてはならないのか……。

 女なら誰しもが夢見る、最高の幸せだ。

 鈴音はだが知らない、この様に贅沢な生活に執着するのも、親友と言いながらみことが手に届く事のない相手に、夢中になる様に面白半分で煽るのも、大神様への恋心を煽って面白がったのも、そして今そんなみことが大神様の寵愛を受けて、酷く嫉ましく思うのも、全てそれらが人より優っているのは、あの鬼女の気が色濃く残っているからだという事を……。

 この妬み心が増していけば、いずれ鈴音はみことを陥れ、大神様に知られる事となる……。

 このままの生活を続ければ、再び同じ間違いを繰り返す……。


 鈴音は泣いた。

 どの位の時間が経ったのか、鈴音は尚も鹿静を魅了しながら泣きじゃくった。

 泣けば鹿静は、何時も鈴音の為に折れてくれた。

 我を通す事を許してくれた。

 だが今日はそうはいかない事は、当の鈴音が解っている。

 鹿静の表情と話しぶりと……。

 全てが許されない事は解っている、だが


「いや」


 鈴音は、鹿静の思惑とは別の言葉を発した。


「嫌。別れない、別れない!別れるんだったら、いっそ此処で殺してよ」


 鈴音は狂ったように同じ言葉を繰り返した。


「どうせ大神様に殺されるなら、鹿静が殺してよ」


「馬鹿を言うな、俺と別れてみことと縁を切れば、お前は普通に生きていける」


「嫌!」


「全てを忘れるんでしょ?鹿静を忘れるんでしょ?」


「そうしないと、お前は天寿を全うできない」


 鹿静は鈴音の腕を掴んだ。


「記憶を消そうっていうの?」


「ああ、今すぐにでも消したい」


「だったら殺してよ!」


「……消したいが、真から消しやるには、お前の覚悟がいるんだ」


「……………」


「無理矢理消した記憶はどこかに残る。だから全てを話した。お前の納得がなければ、全てを消しやれない……」


 鹿静は鈴音を力強く抱きしめた。


「鬼女の気が少しでも残るお前から、記憶を全て消しやれない……」


 思いっきり抱きしめながら、鹿静はそう言って号泣した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ