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神様のおでまし  作者: 東雲しの
59/100

大神様の思い人9

「どうされたんですか?」


「鹿静に教えてもろうて、勉強したのだ」


「勉強ですか?」


「うむ。其方の心中を読めぬ様になったので、実に不便である。すると鹿静が()()で、世の男女の事を知る事ができると申すので、試してみた」


「お試しに参られたので?」


「さようである。()()は、いろいろな事が見れて実に有意義である」


「……って、どんなドラマとかをご覧で?とても日本の物とは……。大神様は言語に問題はないんですか?」


「言語?ああ、言葉であるか?その様なもの如何様にでもなる」


「え?スゴ……」


「さほど凄いものでもない」


 大神様はそう言うと


「まだ有るのだ」


 と言って、徐ろにみことを抱き上げてベッドに横たえ、枕の脇をドンとして見せた。

 どんな素敵な男優さんが、するよりカッコいい。

 

「大神様。ベッドドンは余り聞きません」


「さようか?私が一番に気に入った仕草である」


「本当に、どんなドラマをご覧になっているんですか?」


 みことは、可笑しくなって身を起こして聞いた。


「うーむ。仰山みたからのぉ……」


「どこの方言です?」


「うーむ……」


 大神様は考え込まれた。

 毎日毎日たぶん一日中ドラマを見ていたのだろう、現代の事をいろいろ把握されたのはいいが、まだ付け焼き刃的な状態の様だ。


「そんな事より、今夜の月は凄く綺麗ですね」


 みことが、窓から見える月を見て言った。


「青月であるな。月は煌々と美しいが、青月が一番である」


「青月?」


「青白く輝いておろう?」


「あ、本当だ」


 みことが身を乗り出して見た。

 すると大神様はそのままみことの後頭部を片手で持って、お顔を近づけて唇を重ねられた。

 みことは陶酔して目を閉じると、全身の力が抜けていく……。

 大神様は、この間より長く唇を重ねられ、みことの唇を微かに吸われた。


「いにしえより、神は傲慢で我儘な事に、悪戯に人間の女を()()に致して参った」

 

 夢心地醒めやらぬみことを抱いて、大神様は青月をご覧になりながら言われた。


「私は其方の意に従ってやろうと思うていたが、いかんせん心中が読めねば、其方の意に従ってやれん。しかしながら、鹿静に言われ勉強とやらをしてみたが、其方の意が解らぬのは変わらずである」


「そんな事を、お考えくださっていたんですか?」


「いにしえより、我儘を通すと痛い目に合う」


「え?何ですかそれ?」


「其方が目を閉じた姿を見たら、そうとも言うておられんようになった」


「ええ?何ですか?」


「今朝コーヒーを飲んでおる時である」


 そう言われると、再びそのお美しいお顔を近づけて来られた。

 みことは静かに目を閉じてお迎えした。

 幾度となく唇を重ね幾度となく抱擁を受け、みことは心が此処に在らずとなっている。

 ベッドに押し倒されると、みことは全身から力を抜いた。


「みことよ」


 大神様はそう言われると、みことに股がられて枕の脇をドンとされた。

 びっくりしてみことが目を開けると、それは美しいドヤ顔で覗かれている。


「大神様、ベッドドンは余り聞きません」


「私はこれが好きなのだ」


「え?」


 今迄とちょっと違った言い方。


「みことよ。この先はもう少し()に取っておこう」


「それもお勉強されたんですか?」


「直ぐに致すは芸がない」


「どんなドラマをご覧になられていたんですか?」


「仰山……」


 大神様は微笑みを浮かべ、みことを抱き寄せられた。


「……………」

 

 大神様は青月の青白い妖艶な光を、まじまじとご覧になられている。



 次の夜もその次の夜も、大神様はみこととお過ごしになられた。


「其方は私が授けた故、私が責任を取らねばなるまいと思うておる」


「ええ?大神様って、お父さん?」


「みことよ。私が其方の父である訳がなかろう」


 流石に呆れられている。


「でも、マリア様は神様の子を身籠って、イエス様を……」


「なにをぶつぶつと……。其方の()()に授かる、機会を与えたのだ。()()を!()


 大神様は珍しく力を込めて言われた。


「故に其方を気に入っても仕方ない。唯一無二の存在なのであるから……」


 大神様は慈しみ深く笑まれて、みことを抱き寄せられた。

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