大神様の思い人9
「どうされたんですか?」
「鹿静に教えてもろうて、勉強したのだ」
「勉強ですか?」
「うむ。其方の心中を読めぬ様になったので、実に不便である。すると鹿静があれで、世の男女の事を知る事ができると申すので、試してみた」
「お試しに参られたので?」
「さようである。あれは、いろいろな事が見れて実に有意義である」
「……って、どんなドラマとかをご覧で?とても日本の物とは……。大神様は言語に問題はないんですか?」
「言語?ああ、言葉であるか?その様なもの如何様にでもなる」
「え?スゴ……」
「さほど凄いものでもない」
大神様はそう言うと
「まだ有るのだ」
と言って、徐ろにみことを抱き上げてベッドに横たえ、枕の脇をドンとして見せた。
どんな素敵な男優さんが、するよりカッコいい。
「大神様。ベッドドンは余り聞きません」
「さようか?私が一番に気に入った仕草である」
「本当に、どんなドラマをご覧になっているんですか?」
みことは、可笑しくなって身を起こして聞いた。
「うーむ。仰山みたからのぉ……」
「どこの方言です?」
「うーむ……」
大神様は考え込まれた。
毎日毎日たぶん一日中ドラマを見ていたのだろう、現代の事をいろいろ把握されたのはいいが、まだ付け焼き刃的な状態の様だ。
「そんな事より、今夜の月は凄く綺麗ですね」
みことが、窓から見える月を見て言った。
「青月であるな。月は煌々と美しいが、青月が一番である」
「青月?」
「青白く輝いておろう?」
「あ、本当だ」
みことが身を乗り出して見た。
すると大神様はそのままみことの後頭部を片手で持って、お顔を近づけて唇を重ねられた。
みことは陶酔して目を閉じると、全身の力が抜けていく……。
大神様は、この間より長く唇を重ねられ、みことの唇を微かに吸われた。
「いにしえより、神は傲慢で我儘な事に、悪戯に人間の女をものに致して参った」
夢心地醒めやらぬみことを抱いて、大神様は青月をご覧になりながら言われた。
「私は其方の意に従ってやろうと思うていたが、いかんせん心中が読めねば、其方の意に従ってやれん。しかしながら、鹿静に言われ勉強とやらをしてみたが、其方の意が解らぬのは変わらずである」
「そんな事を、お考えくださっていたんですか?」
「いにしえより、我儘を通すと痛い目に合う」
「え?何ですかそれ?」
「其方が目を閉じた姿を見たら、そうとも言うておられんようになった」
「ええ?何ですか?」
「今朝コーヒーを飲んでおる時である」
そう言われると、再びそのお美しいお顔を近づけて来られた。
みことは静かに目を閉じてお迎えした。
幾度となく唇を重ね幾度となく抱擁を受け、みことは心が此処に在らずとなっている。
ベッドに押し倒されると、みことは全身から力を抜いた。
「みことよ」
大神様はそう言われると、みことに股がられて枕の脇をドンとされた。
びっくりしてみことが目を開けると、それは美しいドヤ顔で覗かれている。
「大神様、ベッドドンは余り聞きません」
「私はこれが好きなのだ」
「え?」
今迄とちょっと違った言い方。
「みことよ。この先はもう少し先に取っておこう」
「それもお勉強されたんですか?」
「直ぐに致すは芸がない」
「どんなドラマをご覧になられていたんですか?」
「仰山……」
大神様は微笑みを浮かべ、みことを抱き寄せられた。
「……………」
大神様は青月の青白い妖艶な光を、まじまじとご覧になられている。
次の夜もその次の夜も、大神様はみこととお過ごしになられた。
「其方は私が授けた故、私が責任を取らねばなるまいと思うておる」
「ええ?大神様って、お父さん?」
「みことよ。私が其方の父である訳がなかろう」
流石に呆れられている。
「でも、マリア様は神様の子を身籠って、イエス様を……」
「なにをぶつぶつと……。其方の両親に授かる、機会を与えたのだ。機会を!」
大神様は珍しく力を込めて言われた。
「故に其方を気に入っても仕方ない。唯一無二の存在なのであるから……」
大神様は慈しみ深く笑まれて、みことを抱き寄せられた。




