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神様のおでまし  作者: 東雲しの
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大神様の思い人2

「そうですよ」


 みことが笑いながら、仰ぎ見る大神様を覗き込む様にした。

 みことはその美しいつぶらな瞳をお持ちになる、大神様と視線があって慌てて目を逸らそうとした。


「みことよ」


 大神様はずっと見入られながら、名を呼ばれた。

 流石にみことは、恥じ入る様に視線を逸らす事しかできない。


「みことよ。もそっと顔を近づけよ」


「はい?」


 みことが聞き取れずに顔を近づけた瞬間、大神様はグイとみことの後頭部を引いて顔を近づけた。


「其方の意のままに致せ」


 そう言われると、神々しくも有り難く慈愛深い唇を、みことの唇に重ねられた。

 時が緩やかなスキップを、奏でる様に経っていく。

 みことは陶酔する様に息を止めた。

 

「この為に実体となったのだ、其方の意のままに致すがよい」


 唇を離されるとそう言われて、大神様は目を閉じて眠りにつかれた。

 みことはじっと海面を見た。

 だけど脳裏に海面は映し出されていない。

 ただただ有難い大神様の温かい唇の感触が、唇に残っている。

 こんな有難くも尊い事が起こるのであるから、この年までファーストキッスを大事に大事にとっておいて良かった。

 男運の無い事に感謝をしながら、みことは微塵も動かず、大神様の尊い寝息を聞いていた。


「みこと」


 鈴音の声がしたと思ったら、鹿静が慌てて駆け寄って来た。


「如何致したのだ?」


 大神様がみことを膝枕に眠っているので、何かあったかと焦っている様だ。


「ああ、あの…….」


「少し疲れたのだ」


 みことが説明しようとしていると、大神様が目覚められて鹿静に言った。


「よい物が手に入ったか?」


 大神様は身を起こされると、にこやかに微笑まれた。


「はい。今流行のバッグです」


 鈴音はそう言いながら、みことに紙袋を一つ渡した。


「色違いを買ってくれたの」


 鈴音は嬉しそうに言う。 よく見ると少し頬が赤く染まっている。


「あ、ありがとうございます……私まで……」


「いや、大神様のお気持ちであるから、有り難く頂くように」


「大神様の?」


「其方達は豪華な物が好みであろう?」


「はい」


 鈴音はすかさずそう言うと、悪戯っぽく鹿静を見た。


「故に其方達の申す豪華な物を、恩恵として授ける事と致した」


 大神様は、大喜びの鈴音をご覧になりながら言われた。


「大神様ありがとうございます」


 みことが言うと


「私が腹を痛がった事は、鹿静には申すでないぞ」


 と言われた。


「あーはい」


「あれは意外に心配症で困りものなのだ」


 静かに立ち上がると、暗い海面に再び目を向けられた。


「海神は其方達人間とは深い関わりを持つもの故、きっと恩恵を与えてくれよう……」


「でも、海は私達人間の命を奪う事が多いですよ」


「ほう?例えば?」


「津波に呑み込まれたり、溺れて死んだり……」


「それは私も気になっておった故、今日は少しばかり釘を刺しておいたが、海神が望む者達は海神の元で神使や従者となっておるか、元々そうであった者達である」


「え?海神様が望む者達?」


「海の事故で亡くなる者の大半は、海神様のお目に留まった者達なのだ」


 鹿静は二人の会話を聞いていて、運転しながら言った。


「つまり海神様が望まれるから、使者が波となって迎えに参る。同意した者達が海神様の元に呼ばれるのだ。永遠の命と恩恵によりお側にお仕えするし、残された者達には加護がある」


「当然の事だが望まれた者達は、秀でた者達だから中々の功績を残すが、確かに最近は目に余るものがあった。とは言っても、()()程に、人間に甘く致すものも他にはいない、頼るに足るは()()しかおるまい」


「確かに……」


 鹿静と大神様しか解らない事柄がきっと多い。

 だが、大神様の慈しみある恩恵を授かったみことは、()()()しか頭にない。

 大神様は暗くなった窓の外を、まるで子供のようにずっと眺めている。

 みことの熱い視線など、お構いなしで……。

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