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神様のおでまし  作者: 東雲しの
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海神様7

「これは大神様……」


 華やかな衣装を纏ったがたいの良い紳士が、長身で細身の大神様の前に現れて首を垂れた。


「海神、何時もながら派手な衣装であるな」


 大神様は真顔で言われる。


「大神様はお若いのに、地味すぎるのです」


 大神様より年上に見える紳士海神様は、にこやかに微笑まれて言った。


「しかしながら、此度のそのご格好は……」


 まじまじと、大神様を見入って言った。


「如何であろう?私の唯一無二の者の好みである」


「ああそれは……。なかなかにございますな……なるほど、さようで……」


 海神様は、みことと鈴音を見比べて言った。


「こちらのお嬢様のお好みかな?」


 海神様は、鹿静に鈴音を指して聞かれた。


「その者は、わが妻にございます」


「さようか?」


 海神様は驚かれてみことを、上から下に幾度も視線をやって考え込まれていたが


「とにかく宮の中にお入りください」


 自ら大神様に言われた。


「其方の宮は、私が知り得る中で一番豪華な造りである故、この者達に中を案内してやってはくれまいか?」


 大神様は、海神様の後に従いつつ言われた。


「それは容易い事」


 海神様は美しい侍女を呼んで、みことと鈴音に宮殿内を見学させる様に指示をした。



 ウィンザー城やヴェルサイユ宮殿とは趣が違うものの、海の中の宮殿はとても絢爛豪華で美しい。


「ここって竜宮城ってヤツ?」


 みことが案内されながら、小声で鈴音に言った。


「あれはお伽話しだから……」


「そうか……そうだよねー。あれはお伽話しか……」


「でも、海神様の宮殿には間違いないか……」


「へへ……。鯛や鮃の舞い踊り……って……」


「何故お分かりに?私は鯛の化身でございます」


「私は鮃……」


 侍女達は、みことを見て驚いて言った。


「マジで?」


「???はい……」


 ……こんなに美女なのに魚なのか……


 まあ、青孤も鹿静も魚じゃないが動物だ。

 海だから魚は当然か……。


「お妃様方も魚なの?鰈や鯵や鯖、鮭とか?」


 みことがくだらない事を聞き出した。


「はい。そういうもの達もおります」


 侍女が頷いた時、中庭の様になっている所に、二、三人の姫君様方の姿を見つけた。

 見るからに神々しい衣装を身に纏っているから、海神様のお姫様だと直ぐに分かった。


「あの人達は、お姫様なんでしょ?」


「はい」


「みんな綺麗な方達ね」

 

 鈴音が言った。


「はい。海神様は美女好みなお方故、姫君様方はみな美女でございます」


「え? あなた達も充分美人だけど、海神様のお目に留まらないの?」


「とんでもございません。私達など、お妃様方と比べたら……」


 侍女達は、誉めてもらって嬉しそうにしたが、そこはちゃんとわきまえていて、一応恥じ入る様に言った。


「ほら彼方に……」


 気を良くした侍女達は、親切にお妃様を指差して言った。

 本当に、見惚れる程に美しい淑女が、海の中の花々に囲まれて美を競っている。


「あの方は女神様?」

 

「数人のお妃様の中には、女神様もおいでです」


「そんなにお妃様いるんだ?」


「はい。後宮には十人近くのお妃様が、おいでになります」


「此処は後宮なの?」


 女子二人の目が輝いた。

 ハーレムの世界へようこそ……的な想像で、あたまの中がいっぱいになっている。


「此処は後宮ではありません。彼処から先が後宮なのです」


 お妃様や姫君様が居る所を、指差して言った。


「マジで?」


 みことと鈴音は身を乗り出して、美女達の姿を追った。


「やっぱ、男は力よね」


 鈴音が低い声で言った。


「力のある(やつ)には、美女が付いて来る。それは人間も神様も変わりないのよね」


 鈴音の鋭い考査が入る。


「前はそんなにお妃様は、おいでになかったのです」


 鮃侍女が言った。


「近年海のもの達が減っているので、海神様はそれは危惧されておられるのです」


 鯛侍女も続ける。


「それ故お妃様方を増やされ、お子様方を増やされておいでなのです」


「あー」


 みことと鈴音は、面目ない気持ちでいっぱいになった。

 魚の乱獲や海の汚染は、人間の間でも問題視されているから、海中の世界では深刻な問題だろう。



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