表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神様のおでまし  作者: 東雲しの
39/100

青孤の嫁取り19

 青孤は一瞬大きな青い美しい毛並みの〝あお〟の姿を見せたが、愛しい熊女の唇を求める瞬間に、美形の青孤となって顔を近づけた。


「私も、人間の子供を作る作業とやらをしてみたい」


「意味が……」


 熊女は強く唇を吸われて、息もできない。


 青孤は手慣れた様子で、熊女の襦袢に手を掛けた。


「青孤」


 熊女が羞らって青孤の名を呼んだ。

 瞬時、青孤は思いっきり、熊女の襦袢をはだけさせた。

 大きな体格だが、筋肉が引き締まってとても綺麗な身体が、真新しい布団の上に浮かび上がった。


「灯……灯を消しておくれ」

 

  素直に灯を消した。

 神使の子を残す行為と、人間の()()とは違うところがあるから、()()()()()()は、そつの無い青孤である。熊女と添い遂げると誓った時から、事前に調べてある。

 それは一族の期待を背負っている眷属神としての役目と、夫として妻に満足を与えねばならない義務感からである。

 ……というのは建て前で、神使といえども眷属神といえども、愛した女がいれば、助平心も下心も湧き上がるというものだ。

 まして青孤は神使としてはまだまだ若く、血気盛んって年頃だ。

 よく一緒に住んでいて、我慢ができたものだと自分を褒めている。

 眷属神として、眷属の貴公子として対面をひたすら保った感がある。

 ゆえに、やっと自分のものとなるのだから、それは強引に身勝手に愛する女を手に入れる。

 熊女が陶酔の絶頂に達したと見た青孤は、身を起こして着ている物を全て脱ぎ捨て、思いっきり愛おしい新妻を抱きしめた。

 身体がデカく怪力の持ち主で、事あるごとに青孤の非力を馬鹿にするが、青孤は熊女が愛おしくて堪らない。

 たぶん初めて熊女を見た時から、心は囚われていた。

 青孤の一目惚れである。

 まだ恋愛などにうつつを抜かした事がないから、その想いは歯止めがきかないものになっていった。

 激しく熊女に惹かれた。

 それは今も変わらない。悔しいが熊女の〝それ〟とは、比べ物にならぬ程に、青孤は熊女に夢中なのだ。


「熊よ、もう少し力を抜け……」


 青孤が耳元で囁く。凄く甘く優しく囁く。


 ……これが男というものか……

 

 熊女は素直に力を抜いて、青孤を受け入れた。

 熊女としても、これ程に愛されたのは初めてだ。

 自分の様な者は、深く相手を思う事はあっても、愛される事は無いと思っていた。

 だから、漠然と幼馴染みと所帯を持っても、違う男と添う事になっても、自分が全てを捧げ尽くす人生だと思っていた。

 だからこんなに美しい眷属神が、想いを寄せてくれる事が不思議で仕方ない。

 これは夢ではないか……と今も思う。ある日ハッと目覚めて、全てが消えているのでは……と、そう思っては怖くなる。

 どのくらい時が経ったのだろう……。

 熊女は青孤の腕の中で目を覚ました。

 あれから幾度青孤を、迎え入れたか覚えていない。

 しかし本当に求められ、愛されたと実感できた。

 それ程までに青孤は、激しく求めた。

 熊女の己の全ての劣等感が、消滅する程に……。

 青孤は寝顔も美しい。

 この美しい姿を見られるのは、自分だけだと思うと顔が綻びる程に嬉しい。


「もう少し寝ていよ……」


 青孤は目を開ける事もなく言って、熊女の身体を抱き寄せた。


「青孤、身体が鍛えられたな」


「私は前から鍛えられておる。あの時は弱っておったから、ひ弱に見えただけだ」


「鍬も上手く使えなんだのに?」


「今では其方より上手いであろう?神力が無くとも其方を抱ける」


 青孤はそう言うと、半身を起こして熊女を覗き見た。


「もう一度致すか?」


「ああ……もう勘弁しておくれ」


 熊女は甘える様に抱きついて言った。


「致し方ない……」


 青孤は熊女を再び抱き寄せて横になった。


「明日は田に行ってみよう。穂がなっておる頃であろう……」


 青孤と熊女は、目を閉じて眠りについた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ