表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神様のおでまし  作者: 東雲しの
33/100

青孤の嫁取り13

 土猪に知られた……という事は、幼い頃からの馴染みである青孤は、覚悟していたことであったが


 ……あの、眷属一の貴公子の青孤が、人間の嫁を連れてくる……


 情報は、あっという間に、眷属一帯に知れ渡ってしまっていた。


「此処は私等が住んでる山みたいだね」


 熊女は桃色の花模様の、新調したての小袖を歩きにくそうに着て、青孤に手を取られながら辺りを見回すようにして言った。


「ああ……。彼処と対して変わらない。だが此処は神山だから、()()()()()()は大きく違う」


「神山?」


「神が宿るとされておるようだが、我ら眷属神が居する所である」


「えっ?青孤は神様なのか?」


「一応な。今生には神々様の〝もの〟が多々ある。しかしながら、人間如きにそれ等が分かる筈も無い。それ等をお守り致すも我ら眷属神のお役目故、一属が一体となりてお役目を果たさねばならないのだ」


「うーん?神様のものは、私ら人間のものにはならないって事かい?」


「ふふ……。熊女は賢いね」


 青孤は満足げに笑むと、熊女の顔を覗き込んだ。

 恋をすると女は美しくなるというが、ご多分に洩れず熊女も綺麗になった。

 特に美形を誇る青孤の、思われ(びと)ともなれば一層だ。


「青孤」


 遠くの峠の辺りから声が聞こえた。


「孤銀」


 青孤は熊女の手をきつく握ったまま、振り返って言った。


「…………」


 孤銀は手を振っていたかと思った瞬間、熊女の前に現れた。


「ほうほう、これが青孤の嫁ごか?」


 美形一属と言うだけの事はある。

 青孤とはまた違った、ちょっと丸顔の愛らしい顔立だ。


「確かに勇ましくたけだけしいな」


 孤銀は両手を組んで、熊女を値踏みしてみせた。


「偉そうな態度をとるな!」


 青孤が憤って言うが、孤銀は気にも留ない。


「私の方が年かさだ、いいだろう?」


 斜に構えた態度を取ったので、青孤は孤銀の後ろ襟をつかんで持ち上げた。


「いい加減に致せ」


「青孤何も怒らんでも……」


 身体はデカイが、気の良い熊女が慌てて言った。


「こいつは子供の癖に、偉ぶり過ぎだ」


「なにも……私なら平気だ」


「子供だと言うても、こいつよりかははるかに上だ」


「えっ?そうなのかい?」


 熊女が素直な反応を示す。


「それでも子供には違いない」


「こいつより、生きているのは間違いない」


 孤銀が首を回して、青孤と睨み合った。


「ふふふ、其処までに致して、許しておやりなさい」


 白髪の気品高い、青孤によく似た夫人が立っていた。


「お母君」


 青孤はパッと孤銀の後ろ襟を離したので、孤銀はストンと落下して尻餅をついた。


「孤銀の口の悪さは、今始まった訳ではない。青孤の大事な嫁ごだからと言う訳でもない……」


 母の白狐はマジマジと熊女を見た。

 熊女は再び恥じ入る様に身を縮めたが、それを察して青孤はきつく握っていた手を、もう片方の手で包み込む様にした。


「金孤から聞いていたが、流石青孤。良い嫁ごを探して来たこと」


 白狐は青孤によく似た、きつい顔つきを綻ばせて言った。


「こんな人間のどこが良いのだ?」


「孤銀はまだ子供だから分からないのも当然、大人になれば分かる()()()()()()


 白狐は揶揄う様に、笑いながら言った。


「遠い所疲れたであろう?」


「いえ、青孤のひとっ飛びで……」


 熊女が緊張した様子で言った。


「そのひとっ飛びが、人間の身には応えたであろう?」


「お母君。この者は全く平気なのです」


「おや?」


「だから私とも一緒になれるのです」


「青孤、自慢せぬともよい」


 白狐は、青孤が夢中になっている様子に呆れて言った。


「じ、自慢ではありません。事実なのです」


 真顔で答える青孤に、白狐は二の句が継げなく、呆れ顔を向けるしかなかった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ