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神様のおでまし  作者: 東雲しの
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心して仕えよ3

 神力って凄過ぎる。

 翌日目覚めたら、驚く事にみことの生活がガラリと変わっていた。

 ()()()()()()の為に、みことは愚痴を言いつつも務めていた職場を、しっかりと退職金を頂いて依願退職し、先の先のそのまた先の、夢のまた夢であった喫茶店をやっていて、なんと常連さん迄いるので、店の売り上げは上々という、なんとも至れり尽くせりの状況なのだ。


「大神様がお越しになられるって……」


 みことの環境の変化にも気づかずに平然としている母に、朝食に箸を付けながら言った。


「えっ?」


 流石の母も呆然とみことを見つめた。


「昨夜……真夜中にお使いが見えて、大神様のお言葉を頂きました」


「……なんて?」


「近々此処に大神様が参られるから、心しておもてなし致せ……って」


「……本当だったのねぇ……」


 母は呆然としたまま言った。


「……でしょ?……そう思うでしょ?……それしかないでしょ?」


 みことが間髪入れずに言うと、母は大きく頷いている。

 言うまでもないが、みことの母には〝ない〟

 遙の女の家系にだけ引き継がれる事柄なのだが、大抵の者は当てはまらない。

 それは本家とか、婚姻して名が変わっているとか関係なく、ちょっと不思議な女子が誕生するのだが、その大半が青孤の言うところのまがい物達だ。

 有力視されていた叔母ではなく、まがい物中のまがい物と目視されていたみことが、事もあろうに神託頂くとは……。

 いや神託ではない。


「神託レベルじゃないんだよ。来ちゃうんだよ。来る来れば来る時の〝来る〟……。お目もじとやらが叶っちゃう〝来る〟。顔を見れる〝来る〟……。えっ?神様の顔ってどんなだろう?見た事ある人間なんていない……いやいや、第一神様を家に迎え入れた事ある人間っているのか?いやいや、神様を迎え入れるっていうのは聞くか……」


 みことがちょっとパニくりはじめた頃。


「大神様が此処にお出でになられるの?」


 母はまだ信じられないという表情を作って言った。


「うん、此処だって。大神様のお好みだって……」


「この家が?」


「……じゃなくて、たぶん私?」


「みこと?」


「たぶん?東北の叔母さんじゃないんだって……」


「若いからかしら?」


「そういうのじゃないらしい。大神様は美貌で選ばないらしい」


「だから若さでしょ?やっぱり、おばさんより若い()がいいのね。全く神様も人間もそのあたりは同じなのね」


「青孤さんが言うには違うみたいなんだけど……」


「青孤さんって誰?」


「ああ、大神様の神使で、めっちゃイケメンなのよ。瓜実顔で目がキッと一重で大きくて……塩顏な……」


「ええ?」


母の声が甲高くなった。

イケメンに食いつくのは母の遺伝だ。


「え〜いいなぁ……」


「お母さんだって会えるわよ。なんせおもてなしの為に、 いろいろ助言とかしてくれるっぽいから」


「おもてなし……ね。失礼のないようにしなきゃならないから大変だわ。お母さんが生きててくれれば、相談もできたんだろうけど……。あっそうか!叔母さんに相談してみようかしら?」


母は手を叩いて言った。


「それもそうなんだけど、今生で神託受けるのは、親戚中で叔母さんだと思っていた事なのに、事もあろうに私が受けちゃったのに、叔母さんに相談するのなんか悪くない?」


叔母は今は亡きみことの母方の祖母の年の離れた妹で、親族の中でも最も霊感を〝持つ〟と言われている女性で、修行をして霊媒を行う事だってできる人なのだ。


「こればかりは、どうしようもない事だからね。うちの家系の者だったら誰だって理解してるわよ……って言うより、みんな本当だったって其方の方がびっくりするわよ」


「確かに……。今や叔母さんがいなかったら、ただの伝説になってるもんね」


「そりゃそうよ。ご神託なんて誰も受けた事ないんだから……」


母は何故かドヤ顔を使って言った。




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