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神様のおでまし  作者: 東雲しの
19/100

心して仕えよ19

「今朝は早いではないか」


 山本のおじさんが一通り掃除をして、みこととおしゃべりを楽しんで帰って行くと、木祠の中から青孤と鹿静が現れた。


「あれ?鹿静さん今日新婚旅行に行くんじゃ?……っていうより、新婦を結婚早々ひとり寝させちゃったんですか?」


「鈴音はできた人間なので大丈夫」


 ………はあ?鈴音ちゃんが?確かに違う意味では、できているともいえるけど……


 おとっと、気をつけねば筒抜けなんだった……。


 みことは大荒れで無心を心がけた。


「大神様も戻られた事だし、これから参る所なのだ」


 青孤が優しく説明してくれる。


「……では後の事は……」


 鹿静が神妙な面持ちで言った。


「ああ、赤獺に任せておけば大事ない。楽しんで参れ」


 鹿静は頷くとスッと姿を消した。


「鈴音ちゃん、寂しかったろうなぁ」


「その辺りはシカと心得ておるらしい、実に良い者を娶った」


 青孤さんが褒めるので、みことはちょっとやっかみを覚えなくもない。


「大神様帰られちゃったんですか?」


 みことが寂しそうに言った。


「あの状態では此処にはお座せられぬ」


「……そうだけど……」


「はなより鹿静の婚儀迄と決まっておった事」


「そうだけど、一言くらい挨拶してくれても……。無理な状態なのは解りますけど……。大神様大丈夫なんですか?」


「いや、いまだお眠りになられたまま、お帰り頂いた」


「あっち……?」


 みことが天に向かってゆびを指した。

 青孤はそれには返事をせずに


「先程の者は、神祠を守っておる者か?」


 話題を変えて言った。


「ああ、山本のおじさんですか?ええ小宮さんが亡くなってから、ずっとおじさんが……。青孤さん知ってるんですか?」


「私は知らぬ。ただこの様に、主人が無い神祠を守っておるとは、実に見上げた者達であるな……」


 青孤は感慨深いげに木祠を見つめた。

 朝の陽射しが木々の間から差し、その木洩れ陽を浴びながら見つめる姿は、惚れ惚れとするくらい美しい。


「そう見惚れられると、こちらが恥じ入る」


 青孤は顔を向けずに言った。


「へへ……。そうそう、そう言えば。山本のおじさんの奥さん、三ヶ月程前に救急車で運ばれて入院してたんですけど、今日退院できるって喜んでました。ちょっと痴呆も入って来てたんですけど、なんか良くなって来てるみたいで……」


「大神様のご加護である、当然の事」


「え?大神様が?」


「大神様がその者達をどうのではない。大神様に関わる事で善行をしておれば、自ずと加護が頂けるという事だ」


「じゃ、私にも?ありますかね、ご加護……」


「うっ、確かに。その方に無い筈はないな……」


 青孤は慌てる様に言った。


「ですよねー」


 みことは嬉しそうに、青孤を見つめて言った。


「しかしながら、其方には夢である店を前倒しで持たせたのだから、それでチャラやもしれん」


「えーマジで?そんなケチい事、大神様がなさるんですか?」


「では其方の……」


 と言いかけて、青孤は先を呑み込んだ。


「聞かぬが華と言うからな……」


「え?聞いてくださいよ」


「どうせイケメンが脳裏に浮かんでおろう?流石の大神様も、その様な下賎な事しか浮かばぬ其方を、相手にされるはずもない」


「そんな、優しい優しいイケメンの青孤さん……」


 みことはしがみつく様に青孤を見た。


「其方はご神託を受ける家柄の娘であるのだから、もう少し品性を向上致さねば」


「ご神託なんて、本当に受けるなんて思ってなかったですもん。特に特に私!」


「ふむふむ、然るにだ」


「何が然るに……なんです?」


「ああ、よい」


 青孤は面倒くさくなったのか、遇らうように言った。


「またその方の元に参るやもしれぬ」


「え?青孤さんが?」


「いや、赤獺がだ……」


「えー赤獺さんですか?青孤さんに替えて貰えないものなのかな?」


「それは()()()


「かなりきっぱり言うんですね。大神様って意外と頑固者?」




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