心して仕えよ13
さて母達の頑張りで、食事会はあの赤獺からも合格点を頂いて、和気藹々の内にお開きとなった。
……だが、ご満悦の大神様がお酒の飲み過ぎで、できあがってしまったので、長年お仕えしている鹿静が、大神様の面倒を看ることとあいなった。
上機嫌な大神様は、鹿静と赤獺に両脇から抱えられながら、裏の林の木祠へ……。
「大神様が、あんなにハッチャケちゃってるなんてねー」
久々に再開したみことと鈴音は、みことの部屋で寝る事に……。とは言っても、未婚の女子の事だから、到底寝るどころではない。
特に鈴音は特殊な恋愛事情を持っているから、こういった話を大好物とするみことが寝かせるわけがない。
「鹿静も変わってるけど、大神様はその上を行くみたい」
「変わってる?」
「神様の中でもかなり人間に興味がおありになるみたい」
「興味?」
「神様って私たちの想像だと、うえの人じゃん?」
鈴音は天井を指差して言った。
「うん」
「天上界って言うか……。そして全てを知り尽くしてるって感じ」
「うんうん……」
「神様って、地球の均整を取る為に存在してるらしいのよ」
「???」
「私も鹿静に教えて貰ったんだけどね。地球って自然の均整を保って、健全でいられるらしいのよ。だから均整を保たせる為に、神様はご神託を地球上に存在するもの達にするわけ……。つまり、こんな事しちゃダメだとかあんな事しちゃダメだとか?」
「えっ?ご神託って人間にだけされるものじゃないの?」
「鹿静が言うには人間以外の生き物は、ご神託しなくても神様の言葉が判るんですって。本能で……」
「ええ?ご神託って本能なの?」
「違う違う。元々生物には、神様とコンタクトする能力が備わっているわけさ。大雨が降るのが判るとか、大雪が降る事が判るとか、台風が来るのが判るとか……。昔の人ってそういう所持っていたらしいんだけど、段々と人間ってそれが薄れてきてるらしいんだよね。それで、今かなり危険な状態になっちゃってるのは、私たちにも解って来てるけど、結局後戻りはできないじゃない?」
「うーん?」
「で、話を戻すけど、人間が進化すると神の声が聞こえなくなるし、お言葉を理解できなくなるんだって。それでご神託するわけだけど、以外と理解して貰えない事多いらしい……」
「えっ?だって今話しとかできてるじゃない?」
「そこなのよ。大神様は現代の人間を理解して、昔のような関係をお作りになろうと、してるみたいなの。その為にお使いを現世にお送りになられて、私たちみたいに結婚も許してくださるの。……と言うのは建前で……」
「え?」
「なんか、凄く人間にご興味をお持ちだから、私たちが結婚する事になって、鹿静でかしたぞ!的な?それを大義名分として、物見遊山……?」
「物見遊山?」
「まあ、人間界をご覧になりたいのよ」
「…………」
みことには大神様をお迎えするのに、無くてはならないものが〝無い〟。
だから鈴音ちゃんの言っている事が理解できない。
そんな複雑なみことの心中など気に止める事もなく
「だけど、みこちゃんって本当に持ってたんだね」
と、鈴音は言った。
「何を?」
「ご神託頂ける巫女の家系だっけ?」
「ああ……家系はそうだけど、私には無いと思うんだ。たまたまほら此処の裏が、以前大神様が鎮座されてた祠がある林で……」
「それを持ってるって言うんだよ」
「え?」
「大神様と縁が前からあったって事でしょ?だから選ばれたんだから」
「そ、そうかな?」
「凄い事だと思うよ」
「凄い事っていえば、やっぱ神使いと結婚する、鈴音ちゃんが凄くない?」
「まぁね……だけど、使いと大神様じゃ、やっぱ大神様しょ?男はやっぱり力が一番だからね」
「力?」
「ご神力……。神使いにも有るは有るけど、神の力に勝るものはないからね」
「鈴音ちゃん相変わらずだねー」
「へへ……」




