表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神様のおでまし  作者: 東雲しの
11/100

心して仕えよ11

「赤獺が供を致しておったのか?」


 鹿静は爽やかな笑顔を見せて赤獺を見上げた。

 ちょっと細身の長身だが、やっぱり端正な顔立ちのイケメンだ。


「此度は実にめでたいな……」


 大神様がそう言われると、鹿静の傍で畏まって伏している女性に目を向けた。


「この者が鈴音にございます」


「ほう……」


「芦川鈴音にございます。お初にお目もじ頂きます」


 そう言って首を上げた。


「えっ?」


 みことの声に一同がみことを注目した。


「えっ?鈴音ちゃん?」


「えっ?みこちゃん?」


「ええええ???」


 二人が異口同音で声を上げたので、鹿静は鈴音とみことを凝視する。


「どうしたの?どうしたの?」


 みことが擦寄るように鈴音に詰め寄った。


「へへ……結婚する事になってね……って、なんであんたが?……えっ?あの方って……あれだよね?」


「あれだよ」


「あれだよね……」


「あれだよあれ……」


「この不届き者どもが!」


 みことと鈴音はすぐ様赤獺に恫喝された。


 恐縮する鈴音に、大神様は優しく声をお掛けになられたので、鹿静と鈴音は客間に入って、大神様と赤獺に対座した。


「二人は知り合いであるか?」


「あ、はい。高校の友達です」


「それはまた縁であるな。鹿静の許嫁がみことの友であったとは……。故にわたしは此処に来てみたくなったのやもしれぬな」

 

「あの……どういう意味ですか?」


 慈愛に満ちた笑みを浮かべて、鹿静を見つめる大神様にみことは聞いた。


「なにを……」


 鹿静が頓狂な声を発してみことを見た。


「よいよい……」


 大神様は優しい声音で、いきり立つ鹿静を制した。

 

「鹿静はわたしにとって、長年使えてくれた〝もの〟。そしてみことは唯一無二の存在である。故にその〝もの共〟が近しい〝もの〟になる故、わたしはその方共に会いたくなったのであろう」


「………?」


 みことが余りに理解しがたい表情を浮かべているので、鹿静は赤獺に顔を近づけた。


「あの者が受者なのか?」


「……のようだ……」


「マジか?」


「……のようだ」


「しかし、どう見たとて……ではなかろう?まだあっちの者の方がそれっぽい」


 鹿静は叔母を小さく指して言った。


「……なのだが、大神様はいたくお気に召しておられる」


「……大神様は、かの昔から変わられてるからなぁ……」


「おっ!やはりそうか?そう思う所も多々あったが、流石に言葉に致すは憚られたが、鹿静が申すのであらば〝そうで〟あろうな」


「まあ……。大神様とはお誕生になられた時からの付き合いだからな……。青孤さんがお守り役的な?」


「えっ?さようなのか?」


「なんだ知らないのか?青孤さんは俺らよりずっと年上なんだぞ」


「年上?」


「年長者という事だ」


「道理で全てにおいて、ぬかりがない訳だ」


 赤獺が真顔を作って青孤を讃美した。


「お前は大神様に仕えて、まだ間がないからなぁ。少しずつ大神様に慣れていかなきゃいかんな」


「慣れか?」


「大神様は他の神々様方とは、ちょっと違うから慣れて行かんと……」


「さようか……」


 一瞬赤獺が不安そうな表情を浮かべた。


「いやいや、神としては変わってる……というか、神としての自覚が多少欠落しているって感じだから、()()()()()()()に仕えたものは……その差というか違いに戸惑いを持つと思う。慣れるまでちょっと大変かもな」


「そうだ。その通り。昨夜も何故か大神様の木祠にお供致した」


「木祠?……ああ、あそこの祠か?どういう理由(わけ)かお気入りなのだ。そうか……懐かしいな」


 鹿静は懐かしげに遠くを見るような表情を作った。

 

「じゃあ、お側で寝かされたろう?」


「おお、致した致した。大神様のお側で夜を明かすなど、なんたる罰当たりであろう」


「いやいや。それも慣れんと」


「やや?()()は、お仕え致す間ずっとなのか?」


「お供をする()はな」


「神とご一緒致すなど、なんと罰当たりであろう」


「大神様は罰をお与えになる事自体、ご存知ないやもしれんぞ」


「な……なんと風変わりな……」


「……であろう?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ