ルーナマジック5
「じゃあ、フレンド登録しようか」
突然のマシロさんの申し出にコウは硬直する。
「フレンド登録ですか……」
『いやだな……』正直そう思ったコウだが、マシロはそんなコウに全然気付く事もなく、明後日の解釈をする。
「あぁ。そうか、今日が初めてだからゲーム用語で言っても解らないよね」
意外と優しくそう言うが、言葉からその意味する所は理解している。
コウは単にこの二人との接点を減らしたいだけなのだ。
「フレンド登録っていうのは」
そんなコウの考えを無視してマシロが説明を始める。
「ゲーム内での会話やメールのやり取りを円滑に出来るようにプレイヤー同士が友達登録出来るシステムになっている」
「はい」
『何となく解るよ』コウはそう思うもマシロの説明に頷く。
「また、ゲームにインしているかどうかも確認出来るし、所在場所も検索出来る」
『ストーキングに近くないか?』
マジに思ったコウは軽く顔をひきつらせる。
しかし、そこはゲーム。
そんなコウの仕草がバレる訳がない。
「パーティーも組みやすいからお勧めだ。まぁ、それで言うとギルドを作成して入るって手もある」
「ギルドですか?」
何気に聞いてしまう。
「ギルド作成にはここの世界の金を使う。登録に10,000金かかる。また、ギルドの運営費として規模の小さいギルドで毎月10,000金中央管理局へと支払う事になる。又、ギルドを作るとギルドポイントとう制度があり、そのポイントで受注出来るクエストもあるんだ」
『正直面倒臭そうなシステムだな……と思った』
「基本的に個人のフレンド登録は99名まで、ギルドは規模によって運営費が違うだけで上限はない。フレンドが沢山いる人とかはギルドメンバーをフレンドから外す人もいるらしい」
『成る程ね、でも私は友達99人もムリだろうな』とコウは思った。
でもこの二人はフレンド沢山いそう……そう思いマシロを見る。
「そうそう、早くフレンド登録しようか」
そう言ってコウの話も聞かずに勝手にフレンド登録をして来る。
『マシロさんからフレンド登録の申請が来ました。受けますか?』
テロップに思わず『いや』って言いたい。
震える手でキーを押す。
『はい』と。
「これからは友達だな、共に頑張ろう」
そう言ってマシロは握手をしてきた。
ところで、と思う。
そろそろ終電の時間ではないかと……。
「あの……マシロさんとスバルさんは今自宅なのですか?」
『まさか会社ですか?とは聞けない』
気持ちは『早くログアウトしろよ』である。
「あぁ。今日はクリスマスイヴだろう。俺の家にスバルが泊まりに来ているから気にするな」
『何を気にするなと言うのだろうか?』コウはそう思ってしまった。
「取り敢えず、今夜はとことん回るぞ」
何となく『今夜はとことん飲むぞ』と言うオヤジ的のりに一瞬コウの意識が飛びそうになる。
『今夜一晩中こいつらの接待かよ』と。
そして、スバルの一言に再び撃沈してしまう。
「所でボスを倒してから10分過ぎてしまった。自動で入り口へ戻る機能が終了したようだから、このままここのダンジョンの宝箱取って帰ろうか」
あっさりと告げられた内容に、今夜は徹夜かもと思うコウでありました。
お読み頂きありがとうございます。
また読んで頂けたら幸いです。