ルーナマジック4
「ねぇ、コウさん。俺達のゲームのモニタリングをお願い出来ないかな?」
マシロがコウにそう問い掛けて来る。
「このゲームを初めて三年になる。正直そろそろ倦怠期に入っていて、なかなか実績が上がらない」
つまりそれは課金率が減っていると言う事だろうか。
何せゲーム開始から既に三年、当初から初めているメンバーにしたらそろそろレベルが上がり切って課金にもあまり意味がないのでは?
かく言う光も月額以外は無課金でゲームを楽しもうと思っていたのだ。
「色々他のゲームも開発しているが、この『ルーナマジック』は俺達の初めてのオンラインゲームだからサービス終了させるのが辛くてね」
マシロのセリフに光は目をぱちくりとさせてしまう。
『何?初めたばかりなのにサービス終了?ふざけんな』
パソコンの画面の向こうで盛大に文句を言う。
勿論音声を切ってから叫ぶ器用振りである。
「一応今季の決算が勝負なんだ、ゲームを初めたばかりのフレッシュな意見が聞きたい」
そう言ってマシロはコウを見る。
「私も初めたばかりなので、意見を言う程まだ分かりませんが、宜しくお願い致します」
そう言って頭を下げる。
だって、多分こいつらはゲーム開発部門のツートップ真城課長と昴主任だ。
下手に目を付けられたら大変な事になる。
何せ噂では社長の懐刀とか何とかって話だし、この二人に楯突いた某部長が降格したとかしないとか……兎に角敵に回すと大変な人達なんだ。
関わり合いたくない人種ナンバーワンだが、かと言って断ればそれこそ目の仇にされる。
何処でバレるか解ったものではない。
一応面識もある人達だし……。
まぁ、この二人の事だから覚えていないかもしれないけどね。
庶務の一人位にしか思っていないと思う。
なので、自分のOL人生を穏便に進めようと一応同意しておいた。
モニタリングと言うのだから後で適当に評価すれば良いだろう。
そう思って安易に安請け合いしてしまった……事を、後から盛大に後悔する事になるとは今の光は思っていなかった。
後悔するまで後数分。
光はどうやってこの二人と離れようか既に模索しているのだった。
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