ルーナマジック1
宜しくお願い致します。
『ルーナマジックの世界へようこそ』
王宮をイメージするメインの曲と共に展開するオープニングの映像を見ながらコーヒーを飲む。
『ユーザー登録をします。お名前と任意のパスワードをお願いします』
「え~と、名前は……『コウ』パスワードは……」
さて、ゲームの初期設定をしている間に私の事を少し話しておきましょう。
私の名前は萩原光性別女、年齢は現在25で社会人三年目。
そんな私が何故ネトゲを始めたかと言うと、友達が皆彼氏出来た為に寂しくなったからだ。
と言うのは建前で、クリスマスイヴを彼氏のいない友人達でやろうと言った1ヶ月前……それから駆け込み乗車のように彼氏を作る友人達に、気付いたら彼氏がいないのは私だけとなっていた。
故に半分やけっぱちに始めたゲームに私はクリスマスチキン片手にキーを打つ。
そんな私は中学生時代からのやり込み派。
そう、ある意味のゲームオタクだったのだ。
高校に入った時に一応卒業し、普通の女子高生やっていたけど、もう無理。
「私だってやりたい事やるんだから」
そう息巻いてオンラインゲームに手を出したのが全ての始まりだった。
ルーナマジックは元々興味があったゲームだ。
まず、キャラが綺麗で基本料金月額300円、その他一部課金あり。
課金のもっともな使い所はアバターの装備品等だろう。
勿論ガチャもあり、これが課金の鬼になる一番の理由らしい。
尚、月額料金発生の毎月1日に一回分のガチャ無料券が手に入る。
また、初めて10日間はお試し期間らしくその間にカードを購入して課金しておけば良いらしい。
「装備品の上から装備するタイプもあるから、何時かはやろうかな」
その程度に考えていた。
別に今友達と飲みに行く事もないし、彼氏がいる訳じゃないし。
そうして最後に契約同意の欄にまでカーソルを進めて思わず止まってしまう。
「嘘。家の会社じゃん」
そこに書かれている社名を見て唖然。
「世の中って狭い」
そう犇々(ひしひし)と思った。
まぁ、取り敢えずキャラも決めて初期装備を手にする。
キャラは女かって?
勿論キャラは男でしょう。
「滅茶苦茶私好みにしちゃった」
だって、どうせずっと画面を見ているのなら自分好みのキャラにしたいじゃない。
決して彼氏いないからって現実逃避している訳じゃないんだからね。
そう自分に言い訳をしながらキャラメイクをしていく。
「やっぱり細身マッチョで~短髪だよね~後髪の色は……声もボイスチェンジャーで調整っと……」
格闘する事30分。
思わずほくそ笑む。
「フフフ……モテモテ系イケメンだわ~」
そう言いながらうっとりと自キャラに見とれる。
青み掛かった黒髪に鋭い濃紺の瞳。
髪は短髪でスラッとした肢体に8.5等身。
「フフフ。私のモロ好みに出来たわ。後は好みの衣装を手に入れる為に稼ぐわよ」
そう言って足並み軽く最初のダンジョンへと足を向けた。
因みに最初はベターに武道家にしました。
何故かって?
だって回復薬買ったら剣を買うお金がないじゃない。
安い木刀で何処まで出来るって言うの?
取り敢えず99レベル(カンスト)までしたら転職よ。
そう言って始めたルーナマジック、クリスマスイヴに新しいゲームを自宅で始めた私が、既に普通のOL人生を捨てた瞬間だった。
お読み頂きありがとうございます。
また読んで頂けたら幸いです。