第八十話 「もうひとつの魔宮」
ーーーーキリは不思議に思っていた…9000年程生きている彼がこれまで千年魔宮が同時に出現したという話を耳にした事が無かったからである。しかし考えていても始まらない…キリは千年魔宮に挑む事にした。
「よし! 潜るか…」
キリが気持ちを固め魔宮に足を踏み入れた瞬間…
キリは眩ゆい閃光に目を奪われた!!
「ッ!!!」
光に目が慣れ始めたぐらいでゆっくりと瞼を開け…キリは辺りを見渡した。
「こっ、ここは!!?」
キリの目の前には見た事のある景色が広がっていた…いや見た事のあるではなくそこはグランクアナの街があったはずの場所だった!
しかし辺りを見渡せど街は愚か人や魔族すら居ない…不思議に感じるキリであったが水属性の霧魔法〝霧探知〟を使い、広範囲に居る全ての生物の居場所を調べた。
「……探知…しない!?」
あり得なかった…〝霧探知〟は水蒸気を広範囲に撒き散らし触れた生物の詳細を知る事のできる古代魔法水属性の高位探索魔法のひとつだったのだから!しかもキリの探知範囲はグランプァーザ王国全体を対象にしていた。
「魔物は愚か虫すらも引っかからない等あり得ない…」
仕方なくキリは周辺を散策してみる事にした。
暫く歩くとそこは以前信長が人間界での潜伏活動の為拠点を構えていたグランプァーザ王国のクラウン荒野であった…しかしキリの目の前には荒野ではなく緑が多く広がる草原!
「あの建物は…」
そして荒野だった頃には姿形も無かった建築物がそこにはあった。グランプァーザ王国が建国されたのは約1800年前、しかし王国は無く更地状態だった…だとすると此処は1800年以前の時代だという事がキリには容易に予想出来た。
「とりあえずあの建物へ行ってみるか……」
キリが建物へ近づくとそこには一人の男が建物に向かい座しており、すぐ隣には剣が地面に刺されていた。
「……あの者は人か? いやそもそも生きておるのか?」
キリが疑問に思うのも無理はない…先程使用したスキル〝霧探知〟に彼が引っかからなかったからだ!
「……そこに座しておる者よ 私は冒険者〝幻影のキリ〟この建物は一体なんなのか教えてくれないだろうか?」
様々な疑問が頭に浮かぶキリであったがひとまず座している男に話しかけてみた——
「…ここは墓廟さ」
男は背中を向けたままキリに語る……
「墓廟? 一体誰の墓廟なのだ?」
「……ここはかつてこの世で最強を誇った男が眠る場所だよ」
「最強の…男?」
「あぁ 空の支配者にして最強の男さ…」
そう語る男の哀愁漂う背中を見つめたキリは、ふと墓廟を見上げこう尋ねた…
「この世界は…今は一体いつなのだ?」
そう呟いたキリがまた男に目をやると…男の姿はそこには無く消えていた。
「ッ!! いない…」
辺りに目をやり男を探すが、やはり何処にも居なかった。キリは墓廟に近づき墓廟に触ると次の瞬間グランクアナ街の地下に戻っており…しかも魔宮は消えていた!!
「私は…戻ったのか?」
不思議な体験をしたキリは、急ぎこの事を信長に伝える為魔界に戻る事にしたーー




