第百四十話 「タケルとルルイエ」
タケルの元を訪れた信長は事情を説明し、神級魔宮の話を詳しく教えてもらった。タケルが初めて神級魔宮へ訪れたのはまだ七界王になる前の事———。
当時彼はこの世界に転移して十年が経つか経たないか位の頃、初めて会う化物と対峙し激戦を余儀なくされた…その化物は恐ろしげな出で立ちで強さに満ち溢れ、タケルを追い詰めていたッ!
ーーーー15990年前…精霊界 〜秘境の地 神級魔宮〜
ズドォォォォンッ… ドシィィィィン…
と魔宮内に雷鳴の如き音が鳴り響く事数時間…
「水魔法〝海流衝撃〟ッ」
タケルの周囲を囲むように魔法陣が現れ、そこからズバババァァァンッと大波が襲ってきた———ッ。
「グハッ…強いな …クトゥルフとやら」
「粘るではないか人間よ 我の高位攻撃魔法を耐えるだけでなく我に手傷をも負わされるとはな」
「ヘッ 寂しそうな目をしやがって お前友達少ないだろ」
「トモ…ダチ?」
「あぁ友達だッ! 我もこちらの世界に来て初めて友と呼べる者が出来た …どうだ?我と友にならぬか?」
「友……」
「まぁ…いきなりだし戸惑うか 今日はこの辺で引かせてもらうとする …また来るぜ」
「…………」
それから毎日のように神級魔宮へ足を運んだタケルはクトゥルフと喧嘩をし続けた。そんなタケルに対し次第に心を許し出したクトゥルフはある日、以前タケルが言い放った言葉が気になってしょうがなかった———。
「タケルよ 貴様は以前我に言ったな 何故そう思った?」
「ん? 何をだ?」
「貴様は以前我に対し寂しそうな目をしていると言ったではないか あの時の話だッ」
「あぁ…あの時のお前の目は…俺と同じ孤独に満ちた目だったからさ この何も分からない、誰も知らない世界に突然転移させられた時の俺とな」
「お前には我が孤独に見えたのか… そうか…」
「でも今のお前はイイ目をしてるぜ」
「………そうか」
それから更に幾日が過ぎた頃…
タケルはひとつの疑問をクトゥルフに投げかける。
「お前は何故名前ないんだ?親は付けなかったのか?」
「親など居ない どうやって産まれたのかも分からない」
「そうか…… 名が無いと不便だな… よしッ我が名を授けよう♪ 」
「何ッ!?」
「んー何がいいかなぁ……」
「………………」
「よし お前は今日からルルイエだッ」
「ルルイエか………いいな」
「ハハハッ 思いつきで付けたが何かしっくり来るな」
「思いつきかよッ!」
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こうして名付けた事でルルイエはタケルの眷属と成り、タケルの七界王への覇道を共に進んでいったのだった。
「ふむっ 喧嘩友達か…いいな 儂も前世の若き頃はよく喧嘩に明け暮れたものだ」
話を聞いた信長は早く神級幻獣とやらに会ってみたいと心が躍動ッ!その瞳はまるで少年の様な眼差しであったーー