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魔女は魔女にドン引かれる

 決闘を行う結界の中に閃光が煌めく。

 その煌めきの大半は狂ったように雷の魔法をぶっ放し続けるベロニクものであった。


「ライトニングスピア! ライトニングスピア! ライトニングスピアァァァァァァァァァァァァァ!」


 雷の槍が幾重にも宙を煌めきながら飛び、メルセデスへと殺到していく。

 対してメルセデスは自分の魔法耐性が異常であるということを告げられてからは頑張って魔法を避けるという選択肢を頭の中から除外していた。

 避けれたら避ける。

 ついでに両手に一つずつ持っている武器、銃で反撃する。

 銃といっても別に銃弾を放つような代物ではない。

 むしろおもちゃに近く、放つものもポーションであった。ただしメルセデスお手製のものである。

 つまるところ、メルセデスの持つ最強の武器とは自分で作り上げた凶悪極まりない爆裂ポーションを吐き出す水鉄砲なわけだ。


 引き金がカチンという軽い音を響かせるたびに銃口から恐ろしい速度でポーションが射出されていく。

 それはベロニクの放つ魔法の中で最速を誇る雷系の魔法であるライトニングスピアとほぼ差がないくらいに速い。


「くっ」


 メルセデスの持つ水鉄砲の銃口が自分に向いていることに気づいたベロニクは魔法を放ちながらその場を飛ぶようにして離れる。

 そして先ほどまでベロニクの立っていた場所に放たれた黒いポーションが素通りし、結界へと直撃し爆発する。


『いやぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁ!』


 続いて上がったのはガラスが盛大に砕けるような音と結界付近にて観戦していた魔女達があげた悲鳴だった。


「な、なにごとですの!?」


 突如として上がった悲鳴にほぼ反射的に振り返ったベロニクは自分の眼に入ってきた光景に思わず絶句してしまった。

 振り返った先にはいくつもの結界が張られているはずだった。

 しかしベロニクが見たものは巨大な穴が空いている結界と恐らくはポーションの爆発の余波を受け吹き飛ばされたであろう魔女たちの姿だった。


「け、結界をぶち破ったんですの⁉︎」


 驚き、目を見開きながらも再びメルセデスの方へと注視するベロニク。だが視線を向けたメルセデスはというと「いたぃいたぃよー」などと言いながら追撃をしてくるわけでもなく床を転がっているだけだった。

 というのも反撃でポーションを放ったのはいいがライトニングスピアの幾つかの直撃を受けたメルセデス。もちろん服は焼け焦げているが体に傷は一切ない。


「こうなったら降参するまでやってやりますわ! ライトニング!」


 メルセデスに回避するだけの身体能力がないことに気づいたベロニクが速度重視の魔法へと切り替える。


 ライトニングは下位の魔法である。だが発動から発射までが恐ろしく速く、熟練の魔女ならば最早いつ終わるのかわからないほどの連射を放つことができる。だが威力は下位の魔法のためさしてない。


「アババババ⁉︎」


 次々と体にぶつかってくるライトニングの魔法にメルセデスはその衝撃で倒れる。

 本来魔法耐性が異常であるメルセデスには大した効果をもたらさないと思われがちではある。しかし、魔法耐性というのはあくまで『魔法の効果が効きにくい』というものである。

 炎の魔法ならば『燃える』という効果が発生しにくくなるというようなものだ。

 そしてそれは魔法を無効化しているわけではない。


 ライトニングは小さな雷を幾つも拡散させて放つ魔法である。それは『痺れさせる』という効果を持つものなのだがメルセデスからしてみれば只々小さな衝撃が全身を襲ってきているようなものなのだ。


 つまるところ、魔法の効果は効かなくても衝撃は食らうというなんとも言えない状態なのがメルセデスなのである。


「こ、この!」


 全身を襲う衝撃に耐えながらもメルセデスはライトニングを躱すために転がり、水鉄砲の銃口をベロニクの方へ向け引き金を引く。

 飛び出た黒いポーションは弾幕を張るかの如く拡散させていたライトニングの一部に触れると爆発を起こす。しかも爆発は一度で収まらず周囲のライトニングに引火するように立て続けに誘爆していった。


「なんで触れてない魔法まで爆発してますの⁉︎」


 叫びつつもライトニングの発動を取りやめたベロニク。

 誘爆のほうも放たれたライトニングが全て爆発し終えると何もなかったかのように姿を消す。


(魔法まで爆発させるなんてなんてずるい!)


 よろめきながらも立ち上がろうとするメルセデスにベロニクは嫉妬のこもった視線を送る。当のメルセデスはそんなことに気付く余裕など一切ないのだが。


(遠距離ではあの武器による攻撃で一発逆転されてしまいますわ。だったら)


 ぶった斬る! それがベロニクが判断した結果だった。

 両手で剣を持つように杖を構えた。


「雷のような切れ味! ライトニングアックス!」


 ベロニクはまるでどこかの売り文句のような呪文を唱えた。

 しばしの間を空けてベロニクの持っていた杖に雷鳴を轟かせながら雷が落ちる。すると杖が青白く輝きながら雷を纏い、杖の先に雷の魔力が斧のような形を象った。

 手にした雷の斧の感じを確かめるようにベロニクが軽く振り回す。それだけで周りの空間に雷が迸り、杖に込められた魔力の多さがよくわかるというものだ。


「これでぶっ叩きますわ!」

「痛そうだからやだ!」


 メルセデスはすかさず二丁の水鉄砲を雷の斧を手にして駆け出そうとしてくるベロニクへと向け引き金を引きまくるのであった。

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