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魔女は雷の再来を見たくないけど見る

 魔女会、もとい雑談会はつつがなく進む。

 大半の魔女は派閥のようなものがあるのかその魔女同士での会話を楽しみ、情報交換などを行なっているわけだが、メルセデスはというとあまり食べない高級食材に心奪われたかのように食べていた。


 それはもう一心不乱に。

 いや、本当ならばあまり魔女会にやってこないある意味で有名な魔女であるメルセデスと話をしたい魔女がいるにはいるのだが一口食べては幸せそうに頰を緩める様を見ては邪魔しては悪いと自重しているのだ。


 そしていつもなら周りの空気をメルセデスの隣でさりげなく読んでいる保護者たるアィヴィの姿もない。


 彼女は変わらず残像が残る速度を保ちながらトングを閃かせ、次々に料理をタッパーへと収めていく。

 ゴーレムも無料という言葉には弱いのだ。


 そうして各魔女が思い思いに魔女会を満喫し時間を過ごし、油断、といっていいのからわからないがとりあえず油断していた時にそれはきた。


「は〜い、注目〜」


 特に大きな挙動をしたわけではないのだが軽く手を叩き禍々しさを醸し出すなんらかの骨で形作られた玉座らしき物へ足を組みながら腰掛けるアリプルプスへと視線が集まる。

 それは食事を黙々と続けていたメルセデスとタッパー詰めをしていたアィヴィも同様であった。メルセデスはすぐに食事、というかデザートを食べる事を再開したのだが。


「そろそろ楽しい魔女会も終わりの時間が近づいてきたわ。だから最後に私は余興を用意しました」


 余興。

 その言葉を聞いた瞬間にメルセデスは今度こそ食事の手を止める。


 アリプルプスは楽しいことが大好きだ。

 それは弟子だからとかそんな理由で修行であっても手を抜くなど有りえないほどに苛烈にしてくるくらいに。


 メルセデスと同様の事を感じ取ったのかアィヴィもタッパーを手にしたままメルセデスの元へと戻る。そしてどうやったのか分からないがメルセデスのアイテムボックスを開くとその中へとタッパーをしまい込みながらも周囲を警戒する。


「今回の余興は魔女のランクの昇格よ。そして内容は決闘」


 すでに嫌な予感は嫌な確信へとメルセデスは変わりつつあった。

 そう、決闘という言葉、さらにはついこの間一方的に攻撃を仕掛けてきたベロニクが最後に言い放った言葉である魔女会での決着。


「そして今回とある魔女たっての希望で決闘を行うことにしました」


(((ギャァァァァァァ!)))


 満面の笑顔でそう宣言してきたアリプルプスに対してその場にいた魔女の誰もが口には出さないが心のうちで悲鳴をあげた。

 何をしても爆発しか起こらないメルセデスとの決闘など危険で仕方がないと理解しているからであろう。


 すでに食事をする手は完全に止まり、ため息をついたメルセデスはアイテムボックスへと手を伸ばしていた。


「では決闘する者はこの者だぁ!」

「頭上に魔力反応、マスター注意を」


 ニヤニヤと笑い大仰な素振りを見せたアリプルプスの言葉を確認する間もなくアィヴィが警告してきた。

 それに頷いたメルセデスは頭上へと視線を向けると僅かにだが輝きが見えた。

 それを認識した瞬間、手にしていた皿を頭上へと放り投げ慌てて数歩ほど後ろへと下がった。


 そして次の瞬間、宙を舞う皿を突き穿ち、先程までメルセデスが立っていた場所へと閃光が突き刺さった。


 床に突き刺さった閃光が雷を放ち、床を伝っていき、周囲の魔女が「アババババババババ!」などと奇声を発しながら倒れこんでいく。

 アィヴィに至っては体が硬直したかのように全く動かず、ゆっくりと床に倒れこんだ。

 そしてその閃光を叩き込んだ張本人が遅れて閃光、雷の槍が突き刺さった所へ優雅に着地を決めた。


「さあ! メルセデス! 勝負ですわ!」


 やる気に満ちた顔を浮かべ全身に雷の魔力を纏ったベロニクがそこにいたのであった。

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