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魔女は魔女によくわからない理屈で挑まれる

「貫け!ライトニングスピア!」


 森の中を轟音と共に光が駆ける。

 光は木々を貫きその後ろに隠れるモンスターをも貫いていき確実にその命を奪っていく。


 モンスター、ここにいるのは先程までメルセデスを囲んでいたコボルトではなく緑色の小人、ゴブリンと呼ばれるモンスター出会った。

 今、ゴブリンがやられているのはまさに蹂躙という言葉が一番しっくりくるであろう。

 始めに仕掛けたのはゴブリンであったのだが獲物に対して攻撃を仕掛けた直後、獲物の反撃をくらい今に至るわけだ。

 周辺には黒焦げになったゴブリンの死骸が転がっていて、そんな中を獲物、今は狩る側となった捕食者が悠々と歩みを進めていく。

 まだ生き残っているゴブリンは息を潜め、森のいたるところに隠れながら見つからないようにしているようだった。


「森の異常と聞いてきましたのに沸いてくるのは雑魚ばかり。まるでお話になりませんわ」


 捕食者、青い髪と青いローブを着込んだ女はその長い髪を退屈げに弄りながらため息をついた。


「この雷鳴の魔女、ベロニク・フォンにふさわしい仕事だと周りから言われて来ましたが大したことありませんわね。よし、退屈しのぎにこの辺りのモンスターを壊滅さして……」

「おや、くっ殺が見れるかと思いましたがすでに殲滅済みでした」

「ん?」


 雷鳴の魔女、ベロニクが杖を片手に意気揚々とモンスターの殲滅に戻ろうとしたその時、木々の間から心なしか残念そうな顔をしたアィヴィが姿を現した。

 突然現れたアィヴィに警戒するような視線と杖を向け険しい顔をしたベロニクであったが、アィヴィの顔を認識した瞬間に破顔、一転して柔かな笑みを浮かべる。


「アィヴィ、アィヴィじゃないですの!」

「……ベロニク様」


 いや、柔らかなというか欲望にまみれた笑みのようだ。

 だってハァハァという声が聞こえているし。

 そんなベロニクを見てアィヴィは珍しく見てわかるくらいに顔を引きつらせた。そして同時に無意識にだろうが一歩後ろに下がった。


「こんなところでアィヴィに出会えるなんて運命ですわ!」

「…… 運命ではないと思いますが」


 ジリジリと距離をつめ寄ってくるベロニクをアィヴィはものすごく警戒していた。

 というのも雷鳴の魔女と呼ばれる通りベロニクの得意な魔法は雷系の魔法。一応ゴーレムの括りであるアィヴィは雷の魔法に非常に弱いというのもあるのだがそこはなんとか我慢できる。

だが単純にアィヴィはベロニクが苦手なのだ。


 ハァハァと危険な吐息を漏らし、ベロニクの体の周りにはそんな彼女の興奮度合いを示すかのように彼女の体の周りを雷が纏わりつき始めていた。

 なんとなく嫌な予感がし始めたアィヴィは腰に抱えられたままの状態で気絶をしていたメルセデスを無理矢理立たすと頭を叩き始めた。


「マスター! マスター起きてください!」


 焦った様子でアィヴィはメルセデスの頭をバシバシという音がなるほどの勢いで叩き始める。

さすがにその勢いで叩かれ続けたメルセデスは唸されたような声を上げながらゆっくりと目を開けた。


「うう、もう激しい移動はいやぁ……」

「マスター、もう移動はしていませんからアィヴィを助けてください。今まさに獰猛な肉食動物に襲われています」

「ちょっ⁉︎ 失礼ではありません⁉︎」


 ボンヤリとした視界の中、誰かが目の前にいるのを把握したメルセデスはズレていたメガネを元の位置に戻し、目の前にいる人物、ベロニクの方を注視しようやく誰かわかったようだった。


「あ、肉の魔女ヘロニカ!」

「雷鳴です! あとベロニク!」


 普通に人の名前を間違えて覚えていた。

 というのもメルセデスは人見知りのためか人の名前を覚えるのが非常に苦手だった。


「く、そうでしたわ。アィヴィさんがここにいるということはその主人である貴女もここにいるのでしたわ」


 悔しげな表情を浮かべながら目の前に立つメルセデスを睨みつけるベロニクだが、メルセデスの方はというとなぜ睨まれているのかわかっていない様子だった。

 とりあえずわけのわからないこの状況を説明してもらうべくアィヴィへと視線を向けるわけなのだがアィヴィはというと目の前のベロニクへの警戒が半端なくいつでも動けるように構えていた。


「で、なんでベロ肉さんが……」

「ベロニクです! アクセントが違いますわ!」


 同じ読みであっても微妙なアクセントの違いに気づくベロニクだった。


「……ベロニクさんはどうしてこんなところに?」

「ここの森がおかしいと聞きましたのできましたのよ。異常が発生する所には希少なものが姿を現すことがありますから。メルセデスさん、貴女はこんなところで何をなされているのです?」


 ベロニクの視線には引きこもりの貴女がという意味も含まれていたようだったがメルセデスは全く気づかない。


「ボクの工房がこの近くにあるからだよ。一応師匠から魔女として認定はもらったしね」


 人見知りではあるが少しは知ってる人であれば話せるメルセデスは柔かに話しを続ける。


「あれは…… 認められたというか呆れられたと思いますが……」

「そ、そんなことないよ! ちゃんと魔女試験も受かったし!」

「あんな物理で解決なんてことは認めませんわ!」


 なぜかベロニクに怒鳴られた。

 突然怒鳴られたことに驚いたメルセデスが目を白黒指している間にベロニクは杖をクルリと回転さしたのちに杖の先をメルセデスへと向けてきた。


「決闘ですわ!」


 よくわからない理屈だった。

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