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#異世界のカードゲーマー というお題から→カードの欠落。残ったのはパンクエルフ。森林サバイバル編。

作者: 茶屋ノ壽

 「ヒーハー!」

「どうしてこうなった……」


 高校からの帰り道。奇妙な占い師に誘われて、覗いた水晶に見えた深い森。

 次の瞬間その映像に吸い込まれていく。

 ぐるぐると、ねじられるように。 


 空間転移?テレポーテーション?

 その瞬間、どこからか吹いた烈風が、ナップサックを切り裂いて、荷物を周囲に散らばらせる。

 目の前をザックの中身が踊り舞う。


 そこで、無意識に掴んだ、数枚のカード。

 とあるファンタジー色の強い世界観、アメリカ生まれのトレーディングカードゲームに使用するそれ。



 昼なお暗い森に立つ私の前に、深い緑の光に包まれて浮かぶカード、無意識にゲームの用語でリソースを払い、いつものように、”怪物(モンスター)”を”召喚”してしまう。


 光る魔法陣のエフェクトとともに、現れたのは、パンクな森の妖精、”エルフ”でありました。肌には所狭しと刺青が走り、さらには謎金属のピアスが耳やら鼻やら、唇やらに。そしてなぜかつけている大きめのゴーグル。逆立った赤い髪。ピアスが光る長い舌を出し、挨拶代わりに奇声を発している、耳が長くとがった、男性型、フューマノイドタイプのモンスター。


「ヒーハー!」


 私はそれを、固まったまま眺めているしかないわけでありまして。

「何がどうしてこうなった!?」

 遠くから、森に響く鳥の声だけが、その叫びに応えたのでございました。



 どうやら”ここ”には、魔法があるらしいのです。

 私は幾つかの実験をした後にそう仮説を立てたのでした。

 それも、私のよく知るトレーディングカードゲームの法則が、ある程度反映されているようです。


 土地と契約して、魔法を使うリソースを得る、”マナ”という概念。


 おそらくは、ゲームと同じく出てくる”マナ”の性質ごとに複数種類があるのだろう土地を予想するも、今、私が契約しているのは、森が一単位のみであるらしいということ。


 そしてカードで表される数種類の魔法の存在。

 ここへ移動した時にとっさに掴んだ数枚のカードに依存しているようでして、使うと意識すると、眼前へと宙へ浮き並び、使われるのを待っているのでありました。


 使用できる”マナ”が少ないので、使用できる魔法はわずかではありましたが、生き延びることにつながるのでは、という希望を抱かせるには、そこそこ十分な能力であると言えるのではないか?と私は思ったのであります。


 一度魔法を使用すると、一回デッキを初期化して、つまりは、発動している魔法を停止して、土地との契約もしていない初期状態に戻して、魔法のカードの束をシャッフルし直さないと、再び使えるようにはならないようでありました。


 召喚したモンスター、これは、掴んだカードの都合上パンクなエルフただ一体しかいないのでありますが、は、現出した直後は行動することができなく、一拍の時間が必要になるようでございます。


 魔法のカードは同じものが複数枚ある場合は、初期化しなくとも続けてその枚数だけ、必要なリソースを注ぎ込めば、使用できることも確認できました。

 それほどの枚数は重なっていませんでしたが。


 魔法を使うには、そのような、制限以外には特に大きく体力などを消費することもないようでしたが。

「お腹が空きました……」この世界でも、普通に生理現象は発生するようでございました。

「ヒーハー!」

「……”これ”食べれるかしら?」

「ヒッ!ハ!?」

 微妙に顔が引きつったように見えるパンクなエルフでございました。



 水場を発見しました。

 パンクなエルフは、それでも森の専門家であったのか、その鼻で綺麗な湧き水あふれる泉を見つけてくれたのでした。

「水は確保できましたね、次は食料でしょうか?……怯えた目をしなくても、本当に食べたりしませんよ……まだ」

「ヒーハー!?」


 水気あふれる、りんごのような果実を手に入れました。

「見た目とは裏腹に、有能なのですね」

「ヒーハー!」目ざとく発見し、するするとスムーズに木に登り、果実を収穫したパンクエルフを、私は見直します。

 

 パンクエルフにも果実を進めましたが、食べなくてもいいようで、彼は、遠慮します。

 少し寂しいので、食べられるなら、一緒に食べましょうと、誘って、早めの夕食にしたのでありました。

 

 器用に落ちた枝やら、蔓草を利用して、パンクエルフが火をおこしました。弓のような形の道具を作って、綿ぼこりのような着火しやすい繊維を使用するのがコツのようです。

「あなたって、かなりサバイバリティが高いのですね」

「ヒーハー!」

 まともに会話ができればなおいいのにと、私は思いました。

 焚き火でお湯を沸かして、飲んでみました。

 水を張った大きな葉っぱというのは、燃えないのですね。


 寝床を確保しました。

 泉から少し歩いたところに大きな木を発見します。

 その、大きな木のうろです。入り口には、魔法で”木の壁”を召喚して塞いでみました。デッキを初期化するまでは、眠っていても、モンスターは出現し続けているようですので、眠っていても安心です。

「ヒーハー!」

 パンクエルフは眠らないで見張りも出来るそうです。便利ですね。



 新しい朝がきました。

 希望の朝を求めるので、ラジオ体操を行います。

 木のうろに落ち葉を敷き詰めて寝たので、多少体が痛いです。

 パンクなエルフも一緒に体操をしています。元気ですね。



 食料とか資材を入手するために、パンクエルフと森を探索します。

 迷わないように、目印をつけながら歩いています。

 すると、森の道で、灰色の大きな熊と、ばったり出会ったりします。

「タンパク質だ」私はつぶやきます。

「ヒーハーッ!」庇うようにエルフが前に出ます。

「あ、いや、こちらがご飯になる方?」


 熊が襲いかかってきます。

 身の丈は2メートルを超えているようです。

 対するエルフはスレンダー、小柄な男子程度の、ライト級の体格です。ちょっと、ウエイトが違いすぎませんかね?階級くらいは合わせるべきでは?


「”巨大化”」意外と冷静に魔法カードを展開詠唱します。言葉の通り対象の体躯を大きくする魔法でございまして、森の”マナ”をコストに、パンクエルフをパンプアップです。着ている服とか装飾を含めて、3回くらいに大きくなっています、まるで魔法のようですね。魔法でしたか。


「ヒーハー!!」

 巨大なエルフパンチが、灰色の熊を殴り飛ばしたのでありました。

 一撃で地に沈む熊さんです。ノックアウトです。

 息の根が止まっているようです。


 別に貝殻でできたイヤリングは落としませんでしたが、やっつけた熊の所から、気の抜けるような音と煙が立ち、その場に魔法のカードが出現して地面に落ちました。

 灰色の熊が描かれています。

 元の世界でよく使っていたモンスターのカードです。


 どうやら、新しい魔法のカード、それも召喚されるモンスターは、こうやって手に入れるようでございます。

 早めに”マナ”を生産することのできる土地との契約数を増やすべきだろうかな?どうやるのでしょうか?ルールがまだはっきりとわかっていないので、苦労しそうです。


 ちょっと楽しみです。


「あ、淡白質、採れませんでした……」

「ヒッハ!?」

「大丈夫ですよ、食べませんから……多分?」



 清流を見つけました。

 魚が泳いでいますね、手に入らないか、ちょっと考えます。


 私が、土地の森と契約して捻出できる”マナ”が一単位。

 そして、パンクエルフから、もう一単位、モンスターの特殊能力として生み出せます。

 使用できるのは、合計、森の”マナ”が2単位です。


 そして、先ほどの灰色の熊は、森の”マナ”となんでもいいので一単位の”マナ”で呼び出すことができます。なるほど。



 本日の気づき。

 ・熊って、本当に川魚を取ることができる。

 ・塩がなくても焼き魚は結構美味しい。




「私は、意外に順応力が高いのでしょうかね?」

「ヒーハー」同意しているようなパンクエルフです。

「ガルル?」首をかしげると意外に可愛らしいクマさんでございます。


 夜、パンクなエルフと、森の熊さんと、焚き火を囲んで、どうにかこうにかサバイバルを続けていく気分を盛り上げようとしていきます。


「……話し相手は欲しいかも?」

 会話できない仲間を視界に収めつつ、落ち葉とかを増やして寝心地を改善した、大木のうろで、眠りにつく私でございました。


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