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この世界の病みに触れたような気がしました。

急展開にしてしまったので、書き足すかもしれません。


途中から、アクセス数とタイトルは比例しないし、逆に埋もれるのではないか?

と思った次第で、やはり、私のカラーに合わなかったのだと思います。

 葵も、段々と、事件の真相が分かり始めてきた。

 心霊と、そうでないもの、果たしてどちらが怖いのだろう……?


 幽霊少女、琴葉も気付いているみたいだった。

 あの霊能探偵も気付いたから、手を引いたのだろう。

 比呂はどうなのだろうか?

 刑事は? 殺人鬼は?



 屋上だった。

 二人で、夕焼けを見ていた。

 葵は、ふいに、彼の好きな相手に訊ねる。

「最初、心霊現象の事を持ちかけた時、謎のメールが来たって言ったな? でもメールの内容は教えてくれなかった。俺、もやもやとして漠然と思っていたんだ。……本当は、そんなもの無かったんじゃないかって…………」

 黄昏により、黄色に黒が混ざり合っていく。


「日向、お前が五名を殺害したんだな?」

 少女は、意外そうな顔で、葵を見ていた。

「心霊現象に見せかけて……、いや、違うな。心霊現象の力を使って、お前が五名を殺したんだな?」

 彼女は、薄らと笑っていた。

「ねえ、冬咲君、何でそんな事、言うの…………?」

「全員、病院地下にあった、祭壇の飾りに見立てて殺されている。首吊り死体は折り鶴。水死体はお神酒。ミンチ死体は供え物。細切れ死体は花束。生首は本尊。…………後、足りないのは、ロウソクとかか?」

 葵は、日向を睨む。


「何が目的だったんだ……?」

「…………、あの廃病院にまつわる噂、知っているかな? 冬咲君」

「何だ?」

「地下の祭壇に行けば、何でも願い事が叶う。普通の人間では叶えられないものが叶えられる、っていう噂。だからみんな、それぞれお願い事をしに行ったの」

 目の前の少女は、くすくすと笑っていた。


「私はタツルにもう飽きていた。でも面倒だから麻希に押し付けたかった。でももっと面倒な事に全然、タイプじゃない御子柴君が私に好意を抱いていた。しかもタツルは私と一生いたいって、結婚もしたいとか。ウンザリだよね? 由里絵は御子柴君に片想いしていたし、麻希は陰で私の悪口を他の女の子達に言い続けていた。タツルのお兄さんはお兄さんで、私にイヤラシイ言葉を言ってくるしさあ。狙っていたんじゃない? 私、こんなに美少女だもん。それに祭壇で祈る時、みんなの顔見て分かったの。みんなの剥き出しの欲望が見えちゃって。それでね、私は思ったの。この人達全員が“祭壇”になればいいんじゃないかってね」

 彼女の瞳は、唇は、何処かとてつもなく艶めかしかった。


「私、冬咲君の事、好きだよ。葵って呼んでいいかな? タツルよりも、一緒にいて楽しいし」

 彼女は手に持っていたバッグを開く。

 中には、ガソリンの入っている容器とマッチ箱が入っていた。

「うん、そうだ。一緒に心中する? でも、やっぱり私、悲劇のヒロインでいたかったから。私の呪いは私の大切な新しい恋人に移った。そうすれば、私はヒロインとして、みんなから愛されるんじゃないかって」

 彼女は、何処までも、何処までも、いつもの日向の顔をしていた。


 葵には見えていた。

 禍々しく、空間が歪んでいた。

 彼女には、幾つもの、幾つもの、ありとあらゆる悪霊達が取り憑いていた。そして……、おそらくはもっともおぞましい事に、彼女の言動は、感情は、悪霊達に蝕まれた結果として生まれたものではなくて、彼女本人が“生来持った気質”として顕現している事象なのだ、と。

「じゃあ、祭壇のロウソクになってね、葵。私の身代わりに」

 日向の手には、スタンロッドが握られていた。

 今の彼女は、霊達の力を借りて、人間ならざる腕力を手にしている……。ふと、霊とは何なのだろうと思った。人間の意思の集合体なのではないのか。その集合体が人間の脳に作用して、人間の使っていない潜在的な力を引き出しているのか……。


 瞬間。

 ナイフが飛んできて、日向の手から、スタンロッドをはじき落としていた。

 校舎の屋上には、見知った影が二人いた。

 一人は少し前に会った、肉のような桃色の髪の女だった。ナイフを投げたのは彼女だった。今は真っ黒な喪服のようなドレスを身に纏っている。隣には、葵に憑依している、セーラー服の幽霊少女がいた。

「今は人を殺すつもりはねぇよ。でも、霊体は殺す」

 そう言うと。

 境火は、日向と距離を詰めると、何度も、何度も、振るっていく。常人には見えない何かに向けて、ナイフを振るっている。葵には見えた、日向に覆いかぶさった霊達が、切り刻まれて、雲散霧消していくのが見えた。

 日向は、苦しみながら、抵抗した。彼女は、境火に向けて突進していく。幾つもの霊体達が放たれていた。

「おい?」

 日向は、境火と琴葉の間を駆け抜けて、屋上から下の階へと逃げていた。霊を盾にして、境火の攻撃を避けたのだった。

「私は当て身とか苦手なんだよっ! くそがあああああぁぁぁぁ、いつもいつも殺害するとか、滅するとかで終わらせてきたからなあああああっ!」

 シャドウ・ナイフは、屈辱的な顔をして、日向を追っていた。



 暴走族のメンバーか、あるいはそれ以外にもあの廃病院を探索した者達なのだろう。後になって、SNSで調べ上げていた事が判明した。ブログやツイッター、その他、もろもろのSNSで、廃病院に行ってきた者達のリストを作っていたらしい。全員の顔、素性は、日向自身が覚え切れなくても、霊達が覚えている……。

 悪霊達によって取り憑かれた日向は、逃走中に、次々と人を殺害して回っていた。何名もの者達が、ロウソクが完成しなかったのか、焼死体で見つかった。

 その他にも、供え物として、バラバラにされたり、生首として転がっている者達が、廃病院へと向かう途中で見つかった。


 夜だった。

 月光の下、血に塗れる日向の姿は、何処までも美しかった。

 先程、葵の下に、霊能探偵からの謝罪のメールが届いていた。

<これまでの犯行の全ては日向だろう。だが物的証拠が得られず、控えていた。それに君はこの推理の内容を送れば、すぐに僕に激昂したと思う。だが、先程、日向の逃走を君の友人から知らされた。起こってしまった事は仕方が無い。もっと早く止められたかもしれない。本当に申し訳ない>


 病院を背にする、日向はおぞましく、美しかった。

 周囲には、花束にされた細切れのバラバラ死体が転がっていた。彼女は刃物を手にしていた。人間女性の腕力で到底、出来るものなんかじゃない……。

 車を出してくれたのは、シャドウ・ナイフ、境火だった。隣には、葵の憑依霊、詩織名琴葉もいる。

 三名は、一人の少女を睨んでいた。

 境火が、日向に向かって叫び、訊ねる。

「おい、お前、このクソビッチ。お前、どうなのよ? “力”を手にした気分は。この私もそうだった。幼少期から抑え切れなくて、どうしようもなく抑え切れなくて、昆虫から、小動物になって、13の誕生日に自分と無関係な罪の無い人間を殺した。ただそれが当然であるように、捕食者である自身を証明するかのように殺した。お前はどうなんだ!?」

 日向は、微笑んでいた。

「ねえ、お姉さん、うるさいよ。貴方も解体して、花として咲かせてあげようかな? 祭壇の一つになりたいのよね?」

 ふと。

 無口な幽霊の少女、琴葉が、前に出る。

“その少女から出ていきなさい。それは貴方の拠り所じゃない”。

 日向の背中から、何かが抜け出していく。

 幽霊少女は、なおも喋る。

“お前達には、お前達の帰るべき住処がある。お前達が果たしたかった望みを、この世界への憎悪を、その少女に託すのはただの愚行。淀んだ魂。もし地獄があるのならば、お前達は無限の焔に焼かれるわ。消えなさい。天の恵みがあるうちに”

 琴葉は、屹然と、言の葉を紡いでいく。

 葵には分かった。

 日向の背中から、今まで彼女に憑依していた霊達の全てが消えていく事に……。そして、彼女の人間離れした、超人じみた殺傷技術が消滅していく事に…………。

 日向は、しばらくの間、呆然としていたが、すぐに気を取り直したみたいだった。

「何なの? 貴方達…………」

 彼女は、憑依が解けた、今なおも、刃物を強く握り締めていた。

「何で、私の邪魔をするの? 私の願いを、望みを壊すの? 葵も、そこの女も、……いるんでしょう? そこの幽霊女も…………」

 葵は言葉を失っていた。

「日向、お前、自分が何を言っているのか分かっているのか?」

「うん、分かっている。私は壊したい、殺したい。私の邪魔をする人達を、だから、私は力が手に入って嬉しかった。幽霊達に感謝したの、こんなに自分が万能なんだって」

「お前はもう詰んでいるんだよ」

 境火は吐き捨てるように言う。

「私も化け物だ。モンスターだ。私は心霊現象の力無しで、人間を大量に殺し続けてきた。頭が壊れているから。今も抑えているだけだ。お前もきっとその類なんだろうな? 私には理由も無く、人を殺したいという感情を抑えられなかった。きっと、そういう風にこの世界に生まれ落ちてきたからだと思う、お前もそうなのか? お前は戻るつもりは無いのか?」

 日向は黙る。

 葵は放心していた。

 そして、自らの身体が自然と動いている事に気付いた。

 葵は。

 日向を、突き飛ばして、手に持っている刃物を叩き落とし、地面に倒れる彼女を抱き締めていた。

「日向、俺はお前の事、好きだよ。付き合いたいよ、一緒にいてくれて、嬉しかったよ…………」

 日向は、大量殺人犯となった彼女は、涙を流し続けていた。

 夜の闇、月光が四人を照らしていた……。



「幽霊はもういいからよー。今度はUFOかUMA見に行こうぜ? 妖怪とかさ」

「そんなもの、この世界に存在するのかよ……」

「いるんじゃね? だって俺の親父、いつも龍神さまと対話しているらしいぜ」

 メロン・パフェを食べながら、ピアスの増えた耳たぶを撫でて、比呂は満面の笑顔を浮かべていた。いつも二人で会っている喫茶店の中だった。彼はどんどんチャラさが増していく。彼の父親は寺の坊主をしており、土屋の寺は龍神を祀っているらしい。

 葵は陰鬱とした顔で、エスプレッソをすすっていた。

 そして、何もかもがどうでもよさそうに、頬杖を付いて、窓の外を、ぼうっと眺めていた。

 彼の隣には、幽霊少女、琴葉が座り、出された紅茶を眺めていた。どうすれば飲めるか悩んでいるみたいだ。

「お前の好きな人、今は彼女? だっけ? どうしているの?」

「生身の女子高生一人がやり遂げた事件じゃないから、警察が見事にもみ消した。そんな事はどうでもいい……、彼女の心は狂って、壊れた。だから今は、精神病院の閉鎖病棟にぶち込まれている。もう二度と出てこれないかもな……」

 それを聞いて、比呂は、ゲラゲラと笑い転げていた。

「悲劇も行き過ぎると、喜劇になるよなっ!」

「ああ、うん。お前、一番、殺された方がいい人物だよな。呪われて殺されろ……」

「今、どんなに酷いんだよっ! 日向ちゃんさーっ!」

「自傷と他者への危害感情が酷過ぎて、拘束具を付けて生活しているとか……。病室の壁は引っ掻き傷やガラス片の傷でいっぱいらしい……。たまに面会に行こうと思う。…………」

「空前絶後の猟奇殺人犯として、死刑にならなかっただけ、マシじゃねえかよぉ!」

「うん、お前が死刑になれ。最高に残酷な方法で死ね」

 比呂は葵の言葉を聞いて、とても嬉しそうだった。

 

「やっぱりさ。女よりも親友を一番、大切にしろよっ! な? お前にとって一番、大切なのは、俺だろ?」

「黙れ、災害」

 琴葉も、葵と同じくらいに、比呂を睨んでいた。……何処か瞳の奥に、嫉妬の感情を抱えているようだった。



 詩織名琴葉は、何者かの手によって殺害された。

 死体の詳細は、彼女の両親や警察の口からは頑なに閉ざされている。葵の方も、あえてそれには触れない事にしている。

 だが、琴葉が死んで以来、彼女は幽霊として葵の枕元に立つようになった。

 そして、気付けば、枕元どころか、部屋に住み付くようになった。生前と違い、滅多な事では口を開かない。

 葵も気付いている事を、別れ際の境火が口にした。

「なあ、その幽霊。コトバ、だっけ? そいつお前の手で犯人を突き止めて欲しいんじゃねえの? その女を殺害したよ」

 言っておくけど、私じゃないからな、と、境火は軽口を叩いて、去っていった。そして、何かあれば、呼んでくれ、とも言われた。シャドウ・ナイフは、今も殺人衝動を押し殺して、代償行為として、幽霊殺害屋を行っている。


 人には、それぞれの目的があって、生まれ落ちたのかもしれない。

 宿命、という言葉が、頭を過ぎる。

 いつか、琴葉を殺した犯人を見つけ出さなければならない。それが葵の宿命だった。

 今日の夜は、いつにも増して、星明かりが綺麗だ。

 綺麗な、星月夜だ。

「ねえ、琴葉姉さん。俺に何か話してよ」

 夜の道、幽霊少女は、葵にただ微笑みかけるだけだった。




純粋な現代ホラーは難しいですね。

甲田学人氏の二番煎じ&劣化コピーになってしまった感が否めません。


ひとまず、二作目までは書く予定ですが。


読者0でも書き続けると誓った、グロテスク&メランコリィ・シリーズの方を優先させると思います。

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