↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/5

心霊スポットに行ってしまったら、ヒロインが取り憑かれてしまったみたいで、怖すぎるんだけど。2

「その心霊スポットに行ってみるのがいいんじゃねえの?」

 夜の八時だ。

 喫茶店の中で、中学校時代の親友と会う事になった。

 寺の馬鹿息子、道楽息子である文屋比呂は、コーヒーを片手にタバコを吸っていた。髪の色は金に、紫色のメッシュが入っている。しかもオレンジ色のサングラスを付けている。成績が悪過ぎて、葵とは違う高校に通う事になったが、彼いわく制服も無い自由な校風で、それなりに楽しめているという。

 隣には、セーラー服の幽霊少女、琴葉が立っていた。葵の両親も彼女を見る事は出来ない。葵以外で、唯一、比呂だけが琴葉の存在を確認出来た。ただし、琴葉の方はこのチャラ男丸出しの坊主の息子が嫌いなのか、比呂に話し掛けられても返事をしない。


 この馬鹿は、何故かミニバンを持っていた。

 まだ17歳だ。免許なんて取れない。運転出来ると言い張っている。

「おい、お前、大丈夫かよ。警察に見つかったら、補導される……、停学……、最悪、退学もありえるかも……」

「大丈夫だって、クラスの連中も無免許とか多いし、さすが、ヤンキーも多い落ちこぼれ高だよなあ」

 そう言うと、彼はポケットの長財布から何かを取り出す。

「おい……、それどうやって作った……?」

 そこには比呂の顔写真が載った免許証があった。

 しかも偽造免許証だ、成年月日が完全に書き換えられている。

「まあ、それなりのコネがあるって事だよ。まあでも、いい高校に入るコネの方は無かったし、大学進学も絶望的だけどなあ」

 そう言いながら、彼は抹茶あんみつパフェを美味しそうに食べていた。

 葵の席には、エスプレッソ・コーヒーが置かれている。そして琴葉のいる場所にもダージリンの紅茶が置かれている。何も無い場所にティーカップが置かれて、店員はさぞかし不審に思っているかもしれない。

「まあいいや、その廃病院、有名だからな。行った事は無いけど、カーナビは付いている。俺達三人でも行ってみようぜ」


 二人共、霊感はある。

 そして、更に“同族”である、幽霊も付いている。

 百聞は一見にしかず、現場に行った方が早い、というわけだ。


 日向からメールが来ていた。

 また、一人、行方不明になった、と……。


†


 廃病院が近付いてくる。

 近くには、浮遊霊や自縛霊などが点在していた。生身の人間が寄って良い場所では無い。だが、葵と比呂の見解は一致していた。……彼らが幾ら怨念が強かろうが、生きている人間に取り憑いた処で、大した霊障など起こせない。せいぜい高熱を出させたり、少し運勢を悪くさせるくらいだろう。何人かの死者の力でも、人一人を取り殺せるなど極めて難しいのだ。


「事故にあって入院したり、熱が出て休み続けているってのは分かるけど、行方不明となるとなあ」

 比呂はハンドルを握りながら欠伸をした。

「おい、ちゃんと前見て運転しろよ。本当に生きている人間の方が怖い」


 病院前に辿り着く。


「何か見えるか?」

 比呂は耳のピアスを弄りながら、暴走族か何かが描いた壁の落書きを見て苦笑していた。

「俺には…………」

 見えているのは“そこそこ”くらいには有害な自縛霊くらいだろうか。近くの樹木などにへばり付いている。

 琴葉は興味を無さそうにしていた。

「琴葉さんは、何か見えますか?」

 幽霊少女は首を横に振る。けれども、人差し指で奥へ進むように言った。

 三名は病院の中に入る。

 壁には血の痕に見せた赤いスプレーなどが塗られていた。


 壁からは白い腕が無数に這い出してきて、手招きしていた。更に進んでいくと、蛇口から明らかに実体を伴った赤黒い水が流れ続けていた。水の中には髪の毛などが混ざっていた。爪が突き刺さっている壁などもあった。


 四階まで見た後に、それなりの浮遊霊を目にしたが、三名共、余り興味が無かった。

 特に比呂は、それらの光景を見て、思わずうんざりしたような顔になっていた。

 

「こいつら、三人も殺せるのかな?」

 寺の息子は、タバコに火を付ける。

「ああ、大抵の幽霊って意外と無力だもんな」


 琴葉の眼は何かを言いたげだった。彼女には、何かが見えたのかもしれない。葵と比呂はそれに気付く、琴葉は人指し指で何処かを指し示していた。

 幽霊少女に誘われるまま、二人が向かった場所は、病院の地下だった。


 地下の天井には、首吊り死体がぶら下がっていた。勿論、幽霊だ。三人共、それと眼を合わせずに通り過ぎる。突如、メールが鳴った。葵のスマートフォンからだ。メールを見ると、日向からだった。怖い、助けて、早く解決して、といった趣旨の内容だった。

 地下を進んでいく。

「この辺り、遺体安置所があったみたいだな」

「そうだね」

 比呂はこの辺りにタバコの吸い殻を放り投げる。

 死者達が周りで呻いていた。

 琴葉が彼らを睨み付ける。すると、死者達は、三名に近寄れずにいるみたいだった。


「さてと、ダンジョンの奥に財宝見つけたぜ」

 比呂は楽しそうな口調で言う。

 三名が辿り着いた場所は、開かずの扉だった。正確には、開かずの扉だった場所だろうか。

 中には、千羽鶴のようなものや、ロウソクが飾られていた。明らかに何かを供養しているか、あるいは封じていたものだろう。

 それは祭壇と言える場所だった。

 

「まあ、この病院、霊的防衛能力の皆無な普通の人間が入ったら、確かに霊障にあって、多少、酷い目にあうだろうけどな。もう三名も行方不明なんだろ? 断言するが、多分、全員、もうこの世にいないぜ」

 比呂が極めて冷たく言い放つ。

「俺も、そう思うよ……」

 葵もそれに同調する。

 祭壇の中央には、明らかに何かが置かれていた形跡があった。

 琴葉がまじまじと、見識していた。他の二人も、その箇所を見る。

 汚い布が敷かれていて、明らかに何かが置かれていた形跡がある。埃を被っていない場所があるからだ。四角い形をしている。

 葵はメールで、日向に“病院の地下から、何かを取ってこなかったか?”と訊ねた。一分も立たずに“うん”といった返信が帰ってきた。そのすぐ後に彼女から電話が来たが、葵は着信を切った後で“30分後くらいに、こちらから電話をかけます”といったメールを送る。


「さて、そろそろ出ようか。此処にいる連中も俺達を歓迎してないみたいだし」

「まあ、琴葉さんもいるから、俺達に危害は無いと思うけど……、気分は良くないしね」


†


 三人はミニバンに戻る。

 ちょうど、葵のスマートフォンに、日向から電話が掛かってくる。こちらから電話する、といったのに、と、思わず葵はぼやく。

「あの、片倉さん、どうされたんですか?」

<箱よっ! 箱を取ってきちゃったのよっ! 円藤君のお兄さんがっ! 今日、円藤君も学校の帰りにいなくなっちゃった。電話にかけても出ないっ!>

「今日なら、何処か繁華街とかで遊んでいたりするんじゃないですか?」

<そんな事無いっ! 円藤君、次は自分だ、多分、明日狙われる、って言っていたからっ!>

「箱、何処にあるか分かりますか?」

<分からないわよっ! 中に何が入っていたかも教えてくれなかったしっ!>

「もしかして、何名かは見たんですか? 中を」

<そうよっ! 円藤君、彼のお兄さん、由里絵、そして麻希、見たのは四人だと思うっ! 後、御子柴君は見ていないっ!>

 比呂が葵から、スマートフォンを奪い取る。

「あー、じゃあ、解決っすよ。後、マキさん? その子が犠牲になって呪いだか憑依だかは終了。貴女は助かるんじゃないですかねー、もう俺の葵に頼んないでくださいよ。こっちは面倒事嫌いなんだから」

 そう言いながら、比呂の口は、明らかに嘲るように笑っていた。

 琴葉は、それを見て、露骨に嫌そうな顔になっていた。

「幽霊の類を怒らせる方が悪いんですよ。これに懲りたら、もう二度と、こういった心霊ツアーなんてものはしない事ですね。良かったじゃないですか。いい社会勉強が出来て」

 電話の向こうで、日向が何かを怒鳴り散らしたが、比呂は取り付くしまもなく、電話を切る。葵はそんな彼の態度に唇を引きつらせる。

「あのなあ、比呂。お前、もう少し言い方があるだろ?」

「なんだよ、お前の惚れた女、頭が足りないんだよ。勉強は出来ても頭が駄目。そういうタイプ、俺、すげぇ嫌いなんだよ。それにほら、お前には大切なお姉さんいるじゃねーかよ」

 彼は再び、心霊スポットである廃病院周辺にタバコの吸い殻を投げ捨てた。そしてタバコが無くなった事を確認すると、ついでにタバコの箱も投げ捨てたのだった。

 葵のスマフォに、再び電話がかかってくる。

<マキがっ! マキがっ! 助けて助けて助けて助けて助けてっ!>

 比呂はうんざりして、再び、葵のスマフォをぶんどる。

「俺、色々なコネ持ちなんですけど。助け舟だしましょうか? もしもの時の為に、葵を通して俺に頼っていいっすよー。あのー、俺のコネで二人程、適材がいるんですけど。どちらか一人、選んでくださいよ」

<そうなの? 早く言ってっ!>

「探偵と殺し屋、どちらがいいですか?」

 比呂が他人を馬鹿にしたように言う。

 電話の向こうの少女は、少し黙った後、答える。

<私を、私の友達をこんな眼に合わせている奴を殺して、殺し屋がいいですっ!>

「分かった、いざとなったら、伝えておくよ」

 比呂は冷笑的に告げた。


†



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。