僕がもらった一筋の
聞こえてきた。
オレンジ色の音符が群れをなして、僕の耳に溶け込んでゆく。
ドンドン、カシャカシャ、ベーンベーン。
愉快な音を鳴らしては僕の隙間に入り込む。
空いた隙間を埋めるのは一人では到底できなくて、僕には埋めてほしいと頼るような人もいなくて。
辛くても、悲しくても、寂しくても、痛くても。
いつでもただ一人。
僕は一人で泣いていた。
「僕は、一人なんだよ」
部屋のベッドで大の字に寝転がって頬を湿らせた。
涙はなんだか苦かった。
しょっぱくなんか無い。
苦かった。
頬をたどって耳元に、耳元をたどって首筋に、流れてゆく涙を拭いはしない。
どれだけ胸にしみたとしても。
僕の頭に、文字の羅列が流れてくる。
もう嫌だ。何もしたくない。何で僕ばっかり。学校行きたくない。人なんて信じない。友情なんて馬鹿らしい……。
「僕が信じたらあいつは僕を裏切った。僕が泣いたらあいつは僕を嘲笑った。僕が我慢したらあいつは僕を勘違いした。僕が、僕がやったら……」
とめどなく流れる涙。
現れてくる、僕の本性。
「僕は悪い子。僕はいけない。僕はいらない。僕はダメな子。僕は使えない」
僕の中の黒の塊がどっと押し寄せて、何かに吸い込まれ溺れていくような気がした。
怖いのに、ここが僕の居場所だと、本能で思ってしまったから、僕は自分が異常なんだと改めて思った。
シャンシャン、リンリン、ジャンジャン、ピーピー。
オレンジ色が、見えた。
希望の光が僕に手を伸ばしている。
綺麗な光景に僕は目を瞑り、手を伸ばす。
解放されてゆく。
黒から離れてゆく。
オレンジ色の音符が、僕を引き上げてくれた。
オレンジ色の音符が、僕の命を救ってくれた。
涙でぐしょぐしょの顔の上から、更に涙が伝っていく。
それは、一筋の光を導いて、虹のように輝いた。
いかがでしたでしょうか。今回は、歌に救われた少年を書いてみました。
ご愛読ありがとうございました。