③
翌日、王子がいつ来ても良いように準備はしてあるが、普段通りに通常業務をこなしていると研究棟から使いがやって来た。
「失礼します。ウィル研究長から解析が終了しましたと連絡が有りました」
2~3日は掛かるかも知れないと言っていたのに、1日で解析を終えるとは頭脳だけは流石と言えよう。
ザガートと共に研究棟へ行くと真面目な面持ちのウィルが入り口で仁王立ちしていた。
ただ、真面目なのは顔だけで半裸の状態で待ち構えてるのが見える。
「あの変態は何故裸なんだ?」
「私に聞かないで下さい」
近寄りたくはないが仕方無いと覚悟を決め歩み寄ると、こちらに気付いた。
「やっと来ましたか。何時までも来ないので風邪を引くかと思いました」
呪が思ったより強力で服がボロボロになってしまったと報告してきた。
使いをやってから、ずっと仁王立ちして待っていたから寒かったと文句をいっている。
「別の服を着れば良いだろうが‼」
ザガートが突っ込むと、その手があったかと始めて気付いた顔をしている。
「人に見られる快感も心地良かったのでクセになりそうです」
うっとりしつつ身体をくねらせている。
気持ち悪さからザガートの蹴りが炸裂する。
「今度裸でいたら蹴りますよ?」
「もう、蹴ってるじゃないですか…。寝ずに調べた私に何て…」
気持ち悪さから蹴ってしまったのは分かるが、確かに寝ずに金属を調べた者に対して、この仕打ち酷いなと思ったが
「こんな…ご褒美最高です‼」
鼻血を垂らしながら喜んでいる。
「隊長からのご褒美も頂きたい‼」
ダメだ。変態に何を言っても喜ばれるので放置した方が良い。
「解析の結果はどうだった?ああ、その前に服を着ろ」
「まさかの無視。これもまた快感です」
何故か喜びながらウィルが服を着替えに行ったので、研究棟の一室で待つ。
「お待たせ致しました。裸も快感でしたが、こちらが落ち着きますね」
新しい服に着替えたウィルの手には、例の金属が握られている。
「服がボロボロになる程の物だったんですよね?素手で持って良いのか?」
「あれは、解析しようとすると呪が邪魔して来るのでイライラして自分で破ったからです」
と説明を聞いた二人は、呪関係無いじゃ無いか‼
やはりただの変態だったと顔が引き攣る。
「そんな事はどうでも良いです。結論から言うと、魔物の凶暴化にあの金属が関係しているのは間違い無いです」
しかしながら、1つだけでは原因を特定出来ないと言われた。
「あとあの文字ですが隣国マジェリの字に似せてあり、呪術も古代マジェリで使われていたモノでした」
「では、隣国の可能性が有ると言うことですか?」
「それは無い」
ウィルが否定する。
「あまりにも証拠が幼稚過ぎます。他の人間なら騙されるかも知れませんが、私を騙す事は出来ません!
それに、呪も金属も我が国の技術が使われています」
誰かが隣国の所為にして戦争をさせようとしているのかも知れない。
どちらにせよ推測の域を出ないので、ハッキリとするまで他の者に話すことを禁止する。
「調査が終わるまで他言無用だ。良いな?」
「わかりました。ところで隊長、寝ずに頑張った私のご褒美として今度デートしましょう」
「何故貴様と隊長がデートしなければならない⁉」
「男とデートする趣味は無い!」
変態ウィルの誘いなど受けるわけが無い。
互いに調査を進める事を確認し研究棟を後にする。
戻っていくと今度は王子来訪の知らせが届く。
「次から次へと忙しいな…」