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此処は緑豊かなユーザレス王国の国境近く、ユラシスの砦。

国境近くの砦とは言え、隣国とは友好関係で戦の心配はない。

主な仕事は魔物の討伐や訓練だった。


この砦の隊長を任されているのは、レナード・ディファル・ヴィ・ミルジュである。

レナードは、金髪に碧眼で中性的な顔立ちは、まるで本の中から出てきた王子様のようだが、レナードには大きな秘密があった。



18年前、ミルジュ侯爵家に男女の双子が産まれた。

男児をレナード、女児をレイティアと名付け育てられたのだが、跡取りとなるレナードは生まれつき体が弱く、5歳の時に亡くなってしまった。


それに、困ったミルジュ侯爵は妹であるレイティアを、次の跡取りが生まれるまでレナードとして育てることにした。

レイティアに剣術や馬術、魔法など貴族の男として必要な知識を教え込んだのだ。

また、それと同時に母からは貴婦人としての礼儀作法やダンスの教育を受けさせられたのだが、その全てにおいて才能をみせた。


下に弟が出来たのはレイティアが10歳の時だった。

ただ、弟が跡取りとして認められるくらい成長するまで、男として生きなければならず、貴族の男子の役目として兵役をする事になったのだ。


父が色々と手を回した結果、ユラシスの砦の隊長として着任する事となった。

本来は隊長と言う名のお飾りでいれば良かったのだが、レイティアは生真面目だった。

女性の様だと馬鹿にした者や、貴族の坊っちゃんがと笑った者を一発で叩きのめし、弛んでいた風紀を引き締めた。

また、訓練量を増やし王国一の精鋭部隊を作り上げたのだった。

こうした事もあり、今では鬼隊長として恐れられていて、誰も女性だとは思ってない。



「隊長、今日の任務の討伐結果です。確認して下さい」

「時間が掛かりすぎだ。私なら半分の時間で出来ると思うが?」

「隊長を基準にしないで頂けますか?確かに少し時間が掛かったようですが、あれだけの大物を討伐して来たのですから妥当でしょう」

さっさと隊長印を押して下さいとばかりに、副隊長のザガートは書類を指差している。


ザガートも侯爵家の跡取りなのだがレナード同様お飾りにはなりたくないと、実力で副隊長の座についている。

またレナードとはタイプの美形で、女性の人気が高いのだが本人は興味が無いのか手紙が届いても無視している。


「最近、大型の魔物が増えている様だな。それについての調査はどうなってる?」

「まだ、調査中になりますが原因は不明です」

ここ最近の魔物が、大型化や狂暴化して暴れている。

今の所は人里近くには出没していないから良いが、被害が出る前に食い止めないといけない。

「なるべく早く原因を見つけ出せ」

「はっ!」

ザガートが部屋を出て行こうとした時、廊下を走る靴音が聞こえ、隊長室の前で止まり、ノックされた。

レナードが入室を促すと、慌てた様子の兵が入ってきた。

「失礼します‼砦の近くに魔物が出没しました‼」

「どの方角だ?今出られる者は?」

「西方です。今出られるのは5人です」

不味い、西方には街がある。もし討伐に時間が掛かれば街にも被害が出てしまう。

「わかった、私が出る。ザガート砦の留守を頼…」

「私も出ます。急いで出撃の通達を出して下さい」

留守を頼みたかったのだが付いてくる気満々で何も言えず、魔物の出没場所へと急ぎ出撃した。



魔物が出没した場所に着いたレナード達が見たものは、狂暴化し禍禍しい魔力を放つ魔物だった。

「これは…」

今まで見たこと無い魔物は、タナークの街の方へと暴れながら移動しようとしていた。

「チッ!隊員は魔物を囲み結界を張れ!ザガートは魔物の足止めしてくれ」

「「「了解」」」

隊員達は速やかに散り、各自の持ち場に離れてく。


ザガートは火炎魔法の使い手で、魔物の周りを無数の火球で囲み動きを封じようとした。

魔物が火球に触れると爆発が起きたが、動きを止める事は無く移動しようとしている。

「これでは、やはり動きを封じきれ無いか。それじゃあコレはどうです?」

今度は周りに幾つもの火柱が立ち上り動きを止める事に成功した。


ザガートが動きを封じたと同時に、部下達の結界が完成した。

「ザガート!下がれ!!」

レナードは、ザガートの退避を確認すると光魔法を唱えた。

結界内に無数の光の刃が降り注ぎ、魔物は跡形も無く消え去った。

「相変わらず凄まじいですね。付いてきて正解でした」

見れて満足そうなザガートと対照的に、結界を張っていた部下達は疲れきっている。

「隊長、結界まで吹き飛ばす程の魔法は止めて下さい」

「アレくらいで吹き飛ばされるなら鍛練が足りないのでは?」

「隊長の威力が凄すぎるんです‼」

ザガートや部下に口々に言われ、レナードは口を噤む。

「隊長と私がこの場所の検証をします。カイル達は周りの状況と街へ被害が出てないかの確認をしてきて下さい」

「了解です」

ザガートが指示を出している間、現場を眺めていると魔物がいた中央の土の上に何やら光る物があった。

レナードが近付いていくと、小さな金属だった。

「何かの呪が掛かっているな。そのまま触るのは危険か」

金属は黒く変色していて鈍く光り、文字が彫られているが読めない。

呪が発動しないように光魔法で金属を包み仕舞う。

「隊長、今のは何ですか?」

「知らん。呪が掛かっているから後から調べようと思ったんだが、魔物の凶暴化に関係してるかもな」

他に何か無いかと探してみるが何も出てこない。と言うより何も無い。

結界が張られた五角形の形で、木はもちろん雑草すら無くなってしまっている。

「加減しないからです。この被害も報告しなければいけませんよ」

「うっ…。アレでもかなり加減はしたんだけどな、すまん」

レナードとしては加減したのだが、元からの力が凄すぎるので、あの状態になってしまう。

「他に脅威は無さそうだな。砦に戻って、あの金属を調べるか」

「まさかヤツに頼むのですか?」

ザガートは嫌そうに片眉をあげて聞いてくる。

レナードとしても、あまり会いたくない人物であるが、この手の専門家だ。

「仕方無いだろう。ヤツは呪術関係が得意だからな」

ため息を付きつつ砦へと戻る事にした。


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