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熱する者

グルグルバットですらホント酔う。


周囲の木々が薙ぎ倒された戦場の真ん中に、タニシは居た。擬似太陽の光は傾きかけている。夕暮れ時であった。


(て言うかさ、“呼吸する者”めっちゃ使えたじゃん。

バイキルトじゃん。強烈バイキルト。


知ってたらこんな死ぬ思いせずに済んだんじゃね?


聞いてる?天の声さん。ねえ、聞こえてる?)


天の声から返事はない。


清太郎は木の枝でゴーレムの亡骸を突きながら、蒼い焔が消えるのを待っていた。


なかなかしぶとく、まだあちこちで燻っていた。


(しかもこの怪しい火はなんですかと。

焼きゴーレムになっちゃったけど食えるのかと。


まあ毒耐性もあるし、俺に食えないモンなんて無いんだけどさ・・・。)


天の声が答える。


【高熱の溶解液が岩石を融解し、生じた炎。

魔力の強い火は蒼く光る。】


(へえ〜。って聞こえてたんじゃん!

何だかなあ。

説明は聞けても会話は出来ないって・・・某スマホのAIみたいだな。


まあいいや。

とりあえず飯だ!夕方になっちまったぜ。

昼夜サイクルがなんだか速い気がするけど、夜は多分危ない確定でしょ此処。)


清太郎はゴーレムの頭にぴょんと飛び乗ると、溶解液を掛けた。


バシャバシャ!・・・ジュルジュル。モチャモチャ。


(おお、なんか餅のような食感!

まいうー!

ほんのり甘いような、出汁が効いてるような。

岩だからもっと味しないかと思ったけど、思いがけず美味くてテンション上がるわ!

勝ってよかったマジで。

いやー、ずっと食ってれるわコレ。)


ガツガツ。モチャモチャ。ゴクン。


清太郎は初めての魔物ディナーを心ゆくまで堪能した。


(さてさて、俺は一番好きな物は最後までとっとく派。ではないけど、何と無く食ったらなんか起こりそうだから、最後にとっといたよ。


眼の部分。


・・・こいつのレーザービームはヤバかったなあ。

熱かったなあ。

当たってたら死んでたわ。


・・・では、頂きます!)


ワクワクしながら溶解液を掛ける。


眼は溶解液を水滴の様に弾いた。

溶解出来ていなかった。


(はす!?溶けねえ!?

なんてこった。


・・・まあそりゃそうだ。

戦闘中もバンバン掛けてたのに溶けてはいなかったもんね。


しょうがない、砕くか。)


ひび割れに沿って歯を突き立てる。

パキパキと小さな音を立てて刻む様に割れていく。

根気の要る食事になった。


(なんだろこれ。鰹節食ってるみたいな味する。

美味いんだけど、食べ方がコレジャナイ感ハンパないわ。)


食べ終わる頃にはすっかり夜になってしまった。


(はふう・・・疲れた。

食べ疲れたわ。


しんどい食い物だった。

お陰で歯が強くなった気がする。)


天の声が脳内に木霊する。


能力スキル“粉砕する者” 獲得】


奪取能力キャプチャースキル“熱する者” 獲得】


(キ、キターー!


よっしゃああ!

ゴーレムの御利益キター!


ーー天の声さん、説明、説明オネシャス!)


能力スキル “粉砕する者” は、奪取能力キャプチャースキル “咀嚼する者” より進化。】


(能力スキル進化か!

やったぜ俺!

日々の努力、此処に実れり!

サメの歯に一歩近づいたな。


で?で、“熱する者”は?)


奪取能力キャプチャースキル “熱する者”は、岩石の体を持つ強力な魔物、ダイアゴア・グロトマストより奪取。


瞳術どうじゅつ魔法 “熱光線” が使用可能。】


(レーザービームきたあああーー!

遠距離魔法ゲット!

これで勝つる!

マジカルタニシここに誕生!)


清太郎はぴょんぴょんその場を跳ね回った。


(では早速・・・


秘技!レーザービーーッム!)


タニシの両眼から、か細い光線が放たれる。

光は地面に転がる丸太に当たった。

赤い光の点は、虫眼鏡で集めた光の様に、ジリリと樹皮を焦がした。


(レーザービームじゃねえ。


レーザーポインターじゃねえか!


・・・まあ最初ですからね。

こんなもんですよね。


いやー、いつかレールガン級の破壊光線をぶっ放ちたいものですな!)


清太郎は両眼から光線を出しつつ、触手を揺らしてフラダンスを踊った。


(あ。こんなことしてる場合じゃない。退路獲得せねば。)


大量の岩で覆われた出口に向かう。


(戦闘中は溶かしてる暇なかったもんな。

俺の大事な異界門部屋セーフティゾーン、放置しとく理由は無いぜ。)


溶解液をバッシャバッシャと掛けていく。

中々の量だったので、新スキル “粉砕する者”

を試す。


体から歯を出す。


ズズズズ・・・。


5cmタニシから20cm以上のドリル状の歯が出現した。


(え?一本しか出ない?

んん?

長っ!

長え長え!!

すっごい伸びてるよ何か!)


清太郎は慌てて目を伸ばすと、自身より遥かに大きく、ツヤツヤと黒光りする歯を目にした。


(ド、ドリルでちゃったー!!

しかも、黒くてデカい・・・。

これ、回転するのかな?


よ、よし。いっちょ行きますか!)


清太郎は触手を二本、長く地面に伸ばし体を立たせる。


ドリルの先端を岩にゴツンと当てる。


ピシッ。ピシピシピシッ。ピキキキッ。


岩に一瞬にしてヒビが入る。


(え!?メタクソ威力上がってない!?

なんの抵抗感も無いんですけど!


ちょっと回してみたいなあ。右回り・・・?で合ってるかな?


よっこらせっと・・・)


重心を傾け、ひび割れに向かって更に歯を入れ込む。


更に右へ右へと体が回る様に意識する。


ドリルがゆっくりと回転し始める。


回転が回転を呼ぶ連鎖が起こり、あっという間に高速回転が起こる。


ギュオオオオオオオ!!

ガリガリガリガリ、ミシミシ、バキバキバキ!!


岩のひび割れに沿ってドリルは進んでいった。清太郎の体もドリルと一緒に岩の中を突き進む。


スポンッ!


岩の瓦礫から抜け出した先は下り階段だった。


清太郎はしばらくドリルを天に向けたままコマの様にその場に回転していた。


(こっこれは・・・!!凄いっ!!凄いけど・・・!!ヴッ!!ぎもじわるいっ!!)


階段の踊り場に、とても気持ちの悪い音が木霊した。


そのまましばらく、清太郎は目眩と戦いながら、階段をヨロヨロ降りていった。

次回、レーザーポインターを使い物にしようの会。

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