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問いただす者

週3ペースであげていきたい(希望)

亜熱帯の森林フロアに、トレンは佇んでいた。

地下70階は生い茂る緑と、巨大な爬虫類の楽園である。


トレンは、生き生きとした木々や植物の声に、静かに耳を傾けていた。


「・・・そうか。ここは何もかもに満ちていて、生き易いか。・・・西の崖のツタ群に、階段があるんだな。

ふむ・・・。背中に棘のあるヤモリには毒があるのか。なるほど、気をつけよう。それから・・・。」


ひとしきり情報を集め終わると、トレンは西の崖を迂回するように進み始めた。危険な魔物の巣を荒らさぬよう、気配を悟られぬよう慎重に歩んでいく。


トレンにとって植物は仲間であり、友だった。こと迷宮に於いては、攻略を手助けする必要不可欠な存在である。


植物の存在する階層では、非常に有利に立ち回ることができた。地形や生息する魔物、階段の位置など、重要な情報は全て彼らの記憶を読み取り、念話することで容易く得られるのだ。


トレンは半時をかけて階段の手前までたどり着くと、近くの大きな多肉植物に手を当てた。

目を閉じ、念話で語りかける。


「・・・世話になった。ありがとう。君らの永い繁栄を祈る。」


肉厚の葉に心ばかりの魔力を注ぐ。表面がぼんやりと、明るい黄緑色に輝いた。

トレンはクルリと踵を返すと、ツタをかき分けて上り階段を上がって行った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ほーお・・・。トレンさんったらそんな裏技使ってサクサク階層打破してたんだあ・・・。ふーん。

ふーーーん。・・・俺なんか超踏んだり蹴ったりで、ちまちまちまちま進んでたのにさ・・・。」


虹色の水盆を覗き込み、ブツブツと文句を言うのは元人間のタニシだった。


「な、何をごにょごにょと言っているのです?

とにかく確認はお済みになったのでしょう?


あなたの探しているトレンティアマーシュ族の魔人は、この者でよろしいのですね?」


「そう!ザッツライト!!まあ、バンバン上がってきてるってことは、俺を探してるってことだろーな!

一緒に迷宮の外出ようって約束を、胸に・・・。

な?あいつ、いい奴でしょ?」


不快感と不信感を募らせた目をしているのは、ポタルの姉の迷宮妖精ラビリンスフェアリーである。

ララナヴィー・エルスと名乗るこの妖精と、タニシは今、地下45,5階のララナヴィーの部屋に居た。


ララナヴィーの部屋は、美しい観葉植物と多数の噴水がハーモニーを奏でる、究極の癒しの庭であった。白と青を基調とした空間の構成は実に見事で、彼女の秀逸なセンスを窺わせた。


ララナヴィーの腰掛ける蓮弁の側には、清太郎が作り出した食べ物が山積みになっていた。スライスしたパンの間に、たっぷりの甘いクリームがサンドされている。


水盆に布をかけようとするララナヴィーに、清太郎は懇願した。


「ちょちょ!ちょっと、ララたん!もーちょっとだけ見せてよぉ!」


タニシの触手が絡んだ布を引っ張りながら、ララナヴィーは抵抗した。


「もう無理です!あなたのような得体の知れない魔物に、これ以上我が一族の秘宝を使わせるわけにはいきません!それに、確認できたらすぐに迎えに行きたいと仰っていたじゃありませんか!」


「ぐぬぬぬ・・・!そうだけど、なんかトレンさん見てたら続きが気になってきたんだよぉぉ!

だってあいつめっちゃチートじゃんかよぉぉ!!あと一階層ぐらい観察してたっていいじゃんかよぉ〜!」


「な・・!勝手です!

こちらの力を貸す代わりに、今後一切この迷宮には干渉しないという約束を、お忘れですかっ!!」


清太郎はパッと布を離した。後ろに勢いよく転がるララナヴィー。


「な・・・急に離すなんてなんですk・・!」


「ララたんよ、シュークリームにはやっぱりミルクティーだよ。」


「み、みるくてぃー、?何ですか??また食べ物で釣ろうなんて・・・」


「ミルクティー、それは甘美で優雅な貴族の飲み物・・・。」


清太郎は体内の蔵から一瞬にしてティーポットとカップを取り出した。

セレブ女子が喜びそうなエレガントでおしゃれなデザインである。


トポトポと注がれる紅茶を、ララナヴィーはつい釘付けになって見てしまった。

清太郎は内心ニヤリとしながら、しかし表情はあくまでもクールに振る舞った。


「かわいい女の子なんだから、大声なんて出すもんじゃあないぜ?

ほーら、このティーカップにな、ちょっとだけミルクを混ぜて・・・。さあできた。

暖かいミルクティーでございます、お姫様。」


ララナヴィーは「かわいい」、や「お姫様」、などの褒め文句に、顔をしかめながらも赤面していた。

目をそらし、ブツブツ文句を言いつつもミルクティーをすすり始める。一瞬目を大きく見開くと、側に置かれたホイップパンを食べ始めた。声こそ出さないものの、たまらない!という表情をしながら、無言で食事を楽しんでいる。


清太郎はホッとして水盆を覗き込んだ。中ではトレンが階段を登る映像が映し出されている。どうやら順調そうであった。

ミルクティーを一口飲むと、清太郎はチラとララナヴィーを見た。


(ポタルくんといい、ララたんといい・・・兄弟揃って、ちょろい。

こいつら迷宮妖精ラビリンスフェアリーは、美味しいものに目がないというか、新しい物好きというか・・・。

なんでこいつらみたいなのが、迷宮の管理してるんだろうな。


・・・まあ、そんなこと考えても何にもならんな。わはは。

ここに来るのだって、お菓子一つの賄賂と口車でどうにかなったしな・・・。)


清太郎はララナヴィーの部屋に来るまでを回想する・・・。



ーーーーーー約3時間前ーーーーーー


次の階層フロアへの階段を駆け上がりながら、片手でパンをむしゃむしゃ食べるタニシ。


「もぐもぐ・・・なかなか上手に出来てるなあ。俺が作ったやつはもっと味も素っ気も無いパンだったのに、なぜかこれには謎の甘みというか旨みみたいなのあるし・・・。魔物って不思議ぃ!地上に出てパン屋でもやればいいのに。

・・・ん?」


清太郎は空間が若干明るくなってきたのに気がついた。ふと振り返ると、階段の上の方がぼんやり光っている。


「え?なに?なんだあの光・・・。」


清太郎は長く出したミズグモのような触手を全て引っ込めると、小さな巻貝になってじっと様子を見た。


光は、左右にフラフラ揺れながら確実に近づいて来る。清太郎はいつでも反撃できるよう心の準備をした。


(普通、階段内で魔物と遭遇することないもんな・・・。超危ないやつかもしれん。たまーに別階層を行き来するフロアマスター的なやついるって聞いたし。

おお恐。しかし俺のステルス能力も舐めたもんじゃないぜ。よしよし、スルー安定で来い。気付くな気付くな・・。)


光がだいぶ近づいてきた。それは、子犬ほどの大きさであった。虹色の羽がぼんやりと幻想的に光っている。

いつかの迷宮妖精ラビリンスフェアリーによく似た顔立ちの、髪の長い少女であった。


「・・・隠れても無駄です。あなたがシュドですね?」


妖精の少女はタニシの前を浮遊しながら言った。


「!?え!?


なに!? なんで俺の名前知ってるの??」


清太郎は両目をニュルリと伸ばすと、少女をはっきり見た。


「ウーーワ!ポタルくんにそっくり!」


「・・・。初めまして。わたくしの名はララナヴィー・エルス。

あなたが先日、押し入ってめちゃくちゃにしたポールタニア・エルスの管轄下を見ました。


あなたが何者で、何が目的か、お話をお伺いしt」


清太郎は合点がいった様に飛び上がると、歓喜の声をあげた。


「ポタルくんの言ってたネーチャンか!!

どうりで似てると思ったわ〜!!なんだびっくりした!やべえ魔物かと思ったよー!」


清太郎は無理矢理ララナヴィーの手を取ると、ブンブン振り回した。


「ちょ、やめて下さい!馴れ合うつもりはありません!!」


ララナヴィーは手を振り解くと、羽根を激しくパタパタさせながら怒った。


「はあ、はあ・・・。

我々、迷宮妖精ラビリンスフェアリーはこの迷宮の「影」の存在です。

ただの魔物が、というかあなたはもう魔人の域に達している様ですが・・・とにかく、我々の行いに干渉してはならないのです!絶対に!

迷宮の常識を逸してまで、あなたは何を求めるのです?」


「何を求めるって、トレンさんと合流したいだけよ俺は・・・。


まあ、俺まだ生後4カ月ぐらいだからさ。

この世界の常識とかまだ身についてないんだよね。申し訳ない!

お詫びにこれ、あげるから許してくれないかなあ。」


清太郎はバラの花にそっくりの棒付きキャンディを出現させた。

元々はただの飴玉だったが、能力スキル『創り出す者』で咄嗟に出したのだった。


ララナヴィーは全く言い足りなさそうであったが、キャンディーから目が離せなくなっていた。


「こっ・・・これは何ですか?こんなものではぐらかそうとしても無駄ですよ!

弟の部屋にもあなたの作り出したモノが散乱していましたが、やはりこのような手口で誘惑していたのですね・・・!」


「あっ。いらないならいいんだ。甘いお菓子、好きじゃなかったかな?」


清太郎がサッとキャンディを隠すと、ララナヴィーはつい「あっ」と声を出してしまった。


清太郎は悪い顔をした。


「あれー?やっぱり要るのかな?ほら、我慢しないで一口舐めてみな。ただの飴だけど。」


ララナヴィーはバラのキャンディを押し付けられて、手に持ってしまった。

まじまじとキャンディを見ている。赤く透明な色をした花弁が、美しく重なり合い、優雅な一輪のバラになっている。


妖精は、舐めはしなかったが、大事そうにその花を両手に持つと、大きく深呼吸した。


「・・・申し訳ありませんでした。

先ほどは、少し取り乱しましたわ。


あなたは思ったほど邪悪な魔人では無さそうですね。証拠に、このお花に毒や危険な細工がありませんし・・・。あなたの言葉に嘘が感じられません。


しかしながら、もう少し詳しくお話を聞かねばなりません。


私の部屋までお付き合い願えますね?」


清太郎は内心不安だったが、二つ返事でOKした。


ララナヴィーは短い呪文を唱える。キラキラ光る魔法陣が宙に浮かんだ。


「ここへ来て下さい。移動しますので。」


「おお!!魔法!!

すげえー綺麗だなあ。


ララたんのお部屋って何階?」


「ララ・・・たん?変な呼び方はおやめください。

私の部屋は地下45階と46階の狭間です。・・・!!余計な質問なさらないで!答えてしまったではありませんか!」


光る魔法陣が更に眩く照り輝いたかと思うと、妖精とタニシは一瞬にしてワープした。






次回!ついに合流!久しぶりトレンさん!

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