眩ます者
超絶お久しぶりです。
脱!迷宮裏。
清太郎がまず始めに入った模型部屋は地下40階の部屋だった。
鉄で出来た重厚な扉を開け、中に入る。
部屋には低い仕切りが沢山あり、迷路のような構造になっていた。
迷路の奥には一つ目の蛸の人形が置いてあった。
「あれがボスね。周りにもモンスターっぽいのが居るみたいだけど・・・。うーん、トレンさんの影は無し、だな。」
清太郎はそれだけ確認すると地下40階の部屋を後にした。
それから、地下39階、地下38階、と、順々に模型部屋内を確認していく。
途中、トレンの様な植物タイプのフィギュアを目にした。6本足の苔むした獣や、林檎に大きな口を付けたようなものなど・・・。植物タイプだが、トレンとは似ても似つかないものばかりであった。
清太郎は、地下40階から21階までの全ての部屋を、隈なく丁寧に見て回った。
「これで全部だったか。トレンさん、居なかったなあ・・・。
・・・ということは、41階以降に居るってことだよな。」
清太郎は、ヨシっと一声気合いを入れた。
「さて、じゃあ適当に残りの階層のフィギュアを作りまくって、例の穴から地下3階の砂漠に戻るか!
サッサと41階以降に行って、トレンさん探さなきゃだな!」
清太郎は作りかけの21階の扉を開けた。
明るい緑の壁紙の部屋だった。
半円形のドーム型の部屋の中心には、積み木の城がそびえ立っていた。天井からは、鳥と人間を足したようなフィギュアが10体ほど吊られている。
「はいはい、鳥人間のお城部屋ね。鳥かあ・・・鳥の餌は、虫だな。」
清太郎は体内から水と粘土を練り合わせた茶色の塊を出すと、触手を使ってコネコネし始めた。
「タニシでも出来る!迷宮作り!イェア!
・・・まあ、多分、俺がフィギュア作って置いても、実際には反映されないんだろうな。ポタル君が出してた不思議な粘土じゃないとダメ系だよな。
まーこれ見て真似して作ってくれればね、良い訳ですよ。お手本、お手本。」
清太郎は粘土で出来たカブトムシっぽいものを、城の周辺に配置していく。
数十本の触手で瞬く間に作られる虫達は、次々と数を増やしていった。
最後に城の天辺に巨大なクワガタを配置した。
「よし、これで鳥人間の餌になる筈の虫が、反旗を翻す構図完成。追いやられる鳥人間達の新たなる巣を作って・・・。」
清太郎は部屋をグルリと囲むように、葉の茂った木々を配置した。
「はいオッケー!21階は鳥人間VS昆虫達の仁義なき戦いフロア!」
清太郎はものの5分で21階を後にすると、22階の扉を開けた。
中は茶色の壁紙で、床には石がゴロゴロしている。
中にはツノの生えた豚のようなぬいぐるみが数匹と、蛍光ピンク色の大きな毛虫が所々に転がっていた。
「豚さんと毛虫か・・・取り留めがねえな。
殺風景だし、フロアの中央に川でも流して第三勢力追加だな。」
清太郎は数秒でタカアシガニのフィギュアを作り、数体を配置した。
ツノ生えた豚のぬいぐるみには、小さなゴブリンのような人形を乗せる。
毛虫達は一箇所に集め、毛虫の王のような大きい個体を追加で配置した。
「川にはカニ、豚ちゃんにはゴブリンを乗せてグレードアップ。奥には毛虫の王国で、ボスは毛虫の親玉っと。
難易度は21階よりキツそうかな?キツイよな。単純に敵の種類が増えてるもんな。オッケーオッケー。」
その後も淡々と部屋を巡っては、フィギュアなどを多数配置したり、環境を思い切って変えたりしていった。
さらに、階層を経る毎に、ボスの凶悪さを高めていった。最後の地下40階に至っては、ドラ○エのラスボスのような風貌であった。
地下40階に、元々配置されていた一つ目のタコは、数を増やして兜と槍を持たされていた。
ボスを守るように八方に配置されている。
「ふう、これで40階が終わりっと・・・。
さて、ではこれにてドロンしますか。」
清太郎はポタルの眠るソファに近づくと、体内の蔵から一枚の紙と木炭を取り出した。
清太郎は一筆書き、ポタルの側にペラりと置くと、その場を後にした。
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「うう・・・ん。
あれ?僕寝ちゃった?
シュド・・・は?」
ポタルが寝ぼけながら起き上がると、膝から一枚の紙が床に落ちた。
「なにこれ?」
ポタルが手にしたそれには、日本語で書かれた文と、図が描かれていた。
『ポタルくんへ。
最後まで付き合えなくて、本当に申し訳ない。
だがいつか、君が素晴らしい迷宮職人になることを祈って、サンプル的なものを作らせて貰ったよ。
礼は要らないぜ。じゃあまたどこかで!
シュドより。』
「うわあ、何語?これ。読めないなぁ。
それに、何この絵・・・黒い虫?に矢印で・・・白い虫になってる。
この白い虫の側に書かれてるのって・・・僕?」
ポタルはシュドを探しに部屋中を飛び回ったが、気配のカケラも感じなかった。
「シュドー!!おーい!どこにいるのー?
出てきてよー!!」
ポタルは、地下20階の模型部屋のドアを開けた。
「居ない・・・。
なんだよ、シュド。急に居なくなるなんて、酷いじゃないか!
まだ地下21階から先は何も手をつけてないのに・・・。」
ポタルは地下21階の模型部屋の前に来ていた。ドアを開く。
「な、なんだこれ!?
ここはハーピーの城だった筈なのに、なんだこの茶色い虫・・・あっ!」
ポタルは置き手紙を見返した。
目の前のそれは、絵に描いてある虫そっくりの模型であった。
「これシュドがやったの!?ナニコレ!?えっ?
この図で言うと、もしかしてこれを僕が作り直せば・・・?」
ポタルは一筋の光明を見た感覚になった。
と同時に、背筋に強烈な気配を感じた。
「ね・・・姉さん・・・?」
ポタルが恐る恐る振り返ると、ポタルと同じ目をした生き物が宙に浮いていた。
「ポールタニア・エルス、我が弟よ。」
ポタルの姉は、光色のヴェールのようなドレスを纏っていた。ポタルよりふた回り大きい背丈で、羽根は透き通った虹色である。
美しい瞳には心配と哀れみの色を浮かべていた。
「先程からどなたを探しているのですか?
やはり負担が大き過ぎて、混乱しているのではありませんか?」
ポタルは慌てて取り繕った。
「そそ、そんなんじゃないよ!全然、全然大変じゃないよ!ちょっと数が多いだけでさ、ほら!いま、大改装中でさ!こ、根本から見直そうと思って、忙しくてさ!なんか独り言が多くなっちゃったんだよね!ははっ!!誰も探してないし!独り言だよ!」
姉はまだ心配そうにポタルを見つめている。
「そうですか・・・。
貴方が心配で、つい様子を見に来てしまったのです。
前回来た時よりも、随分と迷宮が複雑化しているようで、一安心しました。」
笑顔の姉を見て、ポタルは心底ホッとした。
「姉さん、でもまだね、完全完璧に完成したってわけじゃないんd・・・。」
姉は、扉が開いたままの地下21階の模型部屋を見て、眉を伏せた。
「これは・・・何故、このようなもので像を結んでいるのです?貴方の魔力を使った粘土でなければ迷宮は作れない筈ですが・・・。」
ポタルの姉はすっと模型部屋に入ると、清太郎が作った粘土の虫に触れた。
姉はハッとした。
「な・・・なんと精密な形状・・・!
ポールタニア・エルス、我が弟よ。
大変精進していたのですね・・・!!」
「い、いやー。そ、そうかなぁ?照れちゃうなあ。
僕の魔力造形で後で置き換えるからさ。そう、こ、これはあの・・・バランスを見る為のね、工程というか・・・。」
姉は深く関心していた。感動のあまり涙ぐんでいる。
「ああ・・・我が弟よ!!
なんと素晴らしい!!
手間を惜しまぬその姿勢、立派です。
非常に手の込んだ全体像も、申し分ありません。
感激致しました!
もしやこちらの部屋も・・・。」
姉は地下22階の模型部屋を開けた。
ポタルはつい声を上げた。慌てて防ごうもう一歩遅かった。
「あああっ!そっちは・・・。」
「まあ!なんとこちらも・・・!!」
「えっ?!そっちも?!」
ポタルは姉の後について模型部屋に飛んだ。
真っ赤なタカアシガニが、青くくねった帯の上に配置されていた。
姉はタカアシガニをまじまじと見つめている。賞賛と期待の笑顔を光らせて、姉は尋ねた。
「弟よ。
この脚の長い魔物は、どのようなものなんです?
洗礼された形状には美しさすら感じます。」
「えっ?!
ああ、あああーっとね。
そ、その魔物は・・・く、蜘蛛です!蜘蛛からヒントを得て・・・。」
そこから姉は、好奇心の限りを尽くし、全ての模型部屋を巡った。
ポタルにとっては拷問に近かった。
絶賛と質問の嵐に、苦し紛れの言葉をひねり出し続けなければならなかった。
さらに、姉が帰った後、ポタルは清太郎の作った精巧な模型通りの造形を作らねばならない。
手を抜きたくも、姉に全貌を目撃され、深い感動を与えてしまっている故、正確に模造せざるを得ないのだ。
造形のバラエティもクオリティも生半可であったポタルにとって、途方も無い課題に思えた。
ポタルは内心半泣きで、これからの日々を過ごすのだった。
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本小説をお読み頂いております皆様
総合ポイント200点を頂きました。
遅ればせながら、御礼申し上げます。
間が空いてしまいましたが、これからも楽しくのびのびやっていきますので、お付き合いして頂けると幸いです。
ありがとうございました!
次回!ジジイ回になります!




