表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/48

振舞う者

ラージドラゴンはかなりのスピードで飛行しているようだった。時速200キロ以上を出しながら、風を切っていた。


しかし、籠船の中では、そよ風が心地良く吹く程度の風圧だった。


清太郎はダガーを磨いているセトに尋ねた。


「めっちゃスピード出てますよね?なのに、全然風を感じない・・・。

さっきのミサリサちゃん達の魔法っすか?」


「おー、気づいた?

リサがさっきかけた魔法は、“防風の印”。


どんな強烈な風圧も無効化するんだ。

あれが無けりゃ、この籠船と一緒にバラバラだぜ、俺達。」


清太郎はほぉぉ、と感心した声を出した。

リサがニッコリ笑ってこっちに手を振っている。

クッキーを食べていたミサが恨めしそうにセトを見た。


「ちょっとぉ〜!リサばっかり褒められてさぁ、ず〜る〜い〜!ちゃんとミサの事も褒めてよぉ!」


セトは笑って答えた。


「はは、そうだな。

ミサも凄いんだぞ。


このラージドラゴンが目的地まで飛行してくれるのは、ミサが竜語ドラゴンラングで命令してくれたお陰だもんな。」


「命令じゃなくて、お願いですぅ〜!セトニイ何も分かってないじゃ〜ん!」


リサが横から入った。


「セト兄は分かってるもんねぇ〜!リサの方が魔法が上手いってね。キャハ!」


「違うも〜ん!!ミサの方が上手いもんね!」


セトを挟んで双子がキャアキャア言い始めた。


清太郎は、年始の親戚の集まりをぼんやり思い出した。


(・・・平和だ。クエストって、もっとピリピリムードかと思ったけど、こんなもんなのね。)


その後も、他のメンバーは座って外を見たり、武器を磨いたりしていた。

ネリアナが時折周囲を見渡し、方角や高度の確認をしている。

ミサとリサは水晶玉を出して眺めながら、クッキーを食べていた。


清太郎は、手持ち無沙汰になった。


(こんな感じであと10時間以上乗ってるのか・・・。暇だなぁ・・・というか、椅子もないし・・・。

・・・あ、そうだ。)


清太郎は体内の“蔵”から極太の針金を取り出した。


クネクネと弄びながら構想を練る。


(確かソファーってこう、枠みたいな骨組みがあって、S字スプリングが敷かれてたような・・・。

あとは、背もたれはこんな感じで・・・肘掛は、こう十字に編み込んで・・・。最後に硬いスポンジみたいな繊維を張って・・・。)


清太郎はミニチュアサイズのソファーを作り出した。

座面を指で押してみると、結構な弾力があった。


(なんとなく合ってるかな?・・・よし、ではコレを実物大で・・・。)


清太郎は風呂敷状に変身トランスフォームすると、床に広がった。


清太郎の平たい身体から、生えるようにしてソファーが出現する。1人掛けのシンプルなデザインだ。


清太郎は人型に戻るとソファーに腰掛けた。

表面の布は頑張ってサラサラの手触りになるように、繊維を超極細にして織った布だった。


(ああ、良いわあこれ・・・上手くいった。)


清太郎は視線を感じて振り向いた。


先程まで雑談していたメンバーが、固まってこちらを見ている。

清太郎はソファーから立つと誤魔化すように笑って謝った。


「す、すいません。邪魔ですよね。

すぐ仕舞うんで、気にしないd・・・」


「ソファーだ!」


「ソファー!」


双子が感嘆の声を出して寄ってきた。

座ったり触ったりしている。


「いいなー!ミサも座りたい!」


「すごい!ふわふわ!これリサも欲しい!」


ネリアナが感心したようにソファーに手をかけた。


「凄いわね。こんな物も出せるなんて・・・。

もしかして他にも色々出せたりする?

私もちょっと椅子に座りたいわ。」


「出せますよ!どんなのが良いですか?」


「うーん、そうね・・・このソファーよりもかなり背が高いのが良いわね。周りも確認したいし。」


ガルガンダがネリアナに言った。


「おいネリアナ!そんなもん出したら緊張感が無くなるだろうが。

いつ何時なんどき敵に遭遇するかも分からんのに。」


「いいじゃない。

あと10時間以上も地べたに座るのは嫌よ。

現地に着く前に消耗しちゃうわ。

特にリサミサは・・・飽きたらグズるわよ?」


ガルガンダはため息を吐くと、後ろを向いて胡座あぐらをかいた。


リサとミサは、清太郎を期待の目で見つめている。


「じゃあ、出しまーす。」


清太郎は風呂敷に変身トランスフォームした。


ズズズ・・・ズズ・・・。


四角いマット状の身体から、ソファーが顔を出す。


脚のかなり長いソファーだった。

脚立のような足掛けがついている。


清太郎がマット状態のまま口を利いた。


「こう言う感じですか?」


「すごいわ!結構大きいわね。


でも、丁度いいかも・・・。

有り難く使わせて頂くわね!」


ネリアナは気に入ったようにソファー座ると、周囲の確認をする。


「・・・すごく良いわあ。

こんなにリラックスしながら、周りが見渡せるなんて最高。」


ネリアナはソファーに深々と腰掛けると、優雅に地平線を見つめていた。


「シュドちゃーん!私達にもぉ〜!」


「早く作ってよぉ〜!」


リサとミサが清太郎を左右から引っ張っている。

清太郎は慌ててソファーを出現させた。


2人掛けの可愛いらしいソファーだった。

繊維を大盤振る舞いに使った、モフモフの感触である。


「やったぁ〜!モフモフだぁ〜!」


「すご〜い!シュドちゃんありがとー!」


双子はソファーに収まると、ご機嫌でお菓子を食べ始めた。


(気に入って貰えて良かったー。


ていうかリサミサは見た目よりずっと子どもっぽいな。

高校生ぐらいに見えるけど、中身は小学生だな・・・。)


遠い目をしてうっすっら笑っていた清太郎に、セトが小声で話しかけた。


「おい、シュド。

俺にもなんか出してくれよ。


ケツが痛くなっちまったし・・・。

ガルガンダの叔父貴おじきには怒られちゃうかもしんねえけど、俺も移動ぐらいは気ぃ抜きたいぜ。

こんだけ高度がありゃあ、ず敵なんて出てこねえし・・・。」


ブツブツ言っているセトを、ニヤリと見やる清太郎。

お安い御用で、と言うと鉄のパイプを二本出現させた。


それぞれを籠に固定すると、最後にハンモックを取り付けた。


「お前・・・コレ・・・。

流石にちょっとやり過ぎだろ!

俺もソファーでいいよ。」


清太郎はニヤニヤしながら言った。


「まあまあ、一回試してからでもソファー出せますから・・・。」


セトは乗り気でない態度で、ハンモックに乗った。

スッと横たわる。

顔を空へ向けると、目をカッと見開いた。


「あ・・・良いわこれ。


どうしよう。


すっげー良いかもしんない。

持って帰っていい?」


セトはそのまま降りて来ることはなかった。

数分後には気持ち良さそうな寝息を立てていた。


清太郎は満足してソファーにもたれた。


チラとガルガンダを見る。


先程と変わらず、壁に向かって胡座あぐらをかいていた。

両手を胸の前でガッシリと組んでいるが、右手の人差し指が一定のリズムで動いている。

どうやら、気にはなっている様だなと清太郎は思った。


清太郎はスススと近づくと、どうぞ、と言って半畳程の畳と座布団を出した。


ガルガンダはチラと横を見る。


「座布団です。ここに座られた方が、お尻が痛くならないですよ。

・・・俺、戦いとか素人なんで、このくらいしか力になれないっすけど・・・。よかったら・・・。」


清太郎はそれだけ言うと自分のソファーに戻った。


数分後、ガルガンダはしかめっ面のまま、こっそり座布団に座った。


思いがけず座り心地が良かった事は、誰にも言わないガルガンダだった。





次回 トレンさん回です。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ