追う者と追われる者
「何処だ!
クソガキども!!」
暗い森の中を数人の武装した人間の男達が大声を出しながら辺りを探索している。
手には松明を持ち、周りを照らしながら進んで行く。
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「はぁはぁ。
二人とも大丈夫か?」
「はぁはぁ。
ええ、無事よ」
「はぁはぁ。
あいつら気づいて無いみたいだぜ」
森の中を走っているのは、少年少女と言った年齢の三人の子供達だ。
息を切らしながらも一生懸命に暗い森の中を進んでいるのだが、不思議な事に明かりが無いのに木々を避けていく。
「早く村のみんなに伝えないと」
子供達の先頭を走っていた少年が、他の二人に聞こえる様に言う。
「分かっているわ」
「ああ」
その発言を聞いていた二人も同意した。
そして、人間達の声を背にしながら更に森の奥へと進んで行く。
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「見つけたか?」
「いや、見つからねぇ」
「くそったれ。
森人のガキ共が」
「如何する?
奴らを森の中で見失うと見つけるのは困難だぞ」
「このままじゃ、隊長に怒られる」
男達は子供達を完全に見失った事で慌てていると、
「ちっ、仕方ねぇな。
少し勿体無いが使うか」
一人の男が懐から“L”の文字が刻まれた石を取り出した。
「我は感じる。
対象は最も近き三人の森人。
その元に導きたまえ“L”」
男が呪文を唱えると石が淡く輝き空中に溶けてゆく。
「恐らく、こっちだ」
その場で少し立ち尽くした後、迷う事無くある方向に向かって進み始め、その後に続く男達。
「村に辿り着かれる前に捕まえるぞ」
「「「「おお!」」」」
進み先は子供達が逃げた方向と同じであった。
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「こっちに来てるぜ!
このままじゃ追いつかれるぞ」
人間達が迫っている事に最後尾を走る少年が気づく。
「たぶん、魔術で追跡してるな」
「ええ、そうだと思うわ。
そうじゃなきゃ人間が、私達を見つけて向かってくるはず無いわよ。
恐らく使われたま...「言ってる場合じゃ無いだろうが!」
如何して見つかったのかを真ん中の少女が説明しようとしたが、最後尾の少年がそれを遮る。
「それで如何するよ。
もう近いぜ」
「仕方ない、足止めするしかないな」
「ええ」
「よし、やるぜ」
三人は足を止めると、
「「「来れ友よ、その名は“グノーム”」」」
土の精霊の名を呼ぶ。
すると、茶色に輝く小人の老人達が肩の上に現れた。
「穴を作ってくれないか?」
老人達が頷くと地面に穴が十数程出現する。
しかし、穴の大きさは小さく足が入る程度で、深さはあまり無く、躓くのが関の山だろう。
だが、暗い森の中では穴の位置が分かりにくく避けるのは困難といえる。
「ふぅ、こんなものか」
「今の私達ならこんなものでしょう」
「それじゃ行こうぜ」
人間の軍隊が迫っている事を村に伝える為、再び三人は走り出した。