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終わりの始まり

「気をつけろ。

 来るぞ‼︎」

「右からだ!」

 太陽の光が射し込む森の中で、お互いに声を掛け合いながら、武器を構える男女数十人のパーティ。


「速すぎる!」

 彼らの敵は、木々が生い茂り不安定な足場をものともせずに移動していく。

 すでに数名が、血だまりの中に倒れ込んでいた。


「時間を稼いでくれ」

「簡単に言うな‼︎」

 しかし、それを気にした様子も無く戦闘は継続する。

 一人を守る様に周りを囲む布陣。


「来るぞ!」

 木々の隙間から、黒い影が踊りでて来るといつの間にか数人の喉が裂かれ倒れ込んだ。


「くそったれ!

 まだか、ユウキ‼︎」

「もう少し」

 今迄の攻防で最初に参加していた人数の半分近くまでやられてしまった。

 後、二〜三の攻防で全滅に追い込まれつつある。

 今回の討伐に選ばれたのがS級(伝説級)だけだとするならあり得ないことだ。


「流石はSS級(神話級)ということか」

「そんな事を言ってる場合か!」

「来るぞ!」

 そして、再び黒い影が飛び出した時、


勇者装甲(ブレイブアーマ)!!!」

 大声が辺り一面を震わせると光の柱が立ち上がった。

 すると、黒い影は警戒したのか動きを止めてしまう。

 数秒すると光の柱は消えたが、その場所には光り輝く鎧を纏う一人の人間が立っていた。


「みんな、待たせてすまない」

 そう言うと背中の大剣を引き抜き剣先を敵に向ける、


「ウオオオォォォ」

 影が苦しむ様に咆哮を上げると影が立体的な姿に変化し始めた。

 漆黒の狼がその場に現れる。

 大型犬の更に一回り大きく、地を掴む四肢は鋼の糸を束ねた様であり、眼は赤黒く強靭な意志を感じさせる眼光を放っていた。


「これが、魔狼ニュクス」

「惚けている場合か!

 全員離れろユウキの邪魔になるぞ!!」

 一匹と一人を残して、彼らは全力で離脱し始める。


「絶対に勝てよ!」

「ユウキさん、頑張ってください!」

「待ってるぜ!」

 各々、声援を送りがら姿が見えなくなった。

 その間も動かず視線を合わせたままの一匹と一人の化け物同士。

 しかし、徐々にお互いの殺気と魔力が辺りの空間に充満し始める。

 光り輝く魔力と暗く濁った魔力がせめぎ合う。

 そして、先に動いたのは魔狼ニュクスであった。

 ユウキが瞬きした瞬間を狙い首に噛み付く攻撃だったが、大剣を盾の様にして防ぐ。

 だが、突進の威力は殺し切れず後方に飛ばされるが、その勢いを利用して回転切りを放つが魔狼は後方に跳び上がってそれを避ける。

 三秒にも満たない時間でこれだけの攻防が行われた。

 S級でさえ見るのがやっとと言える。


「いくぞ」

「ガァァァ」

 戦いは、一日中絶え間無く続いた。

 二体とも体力と魔力の限界を迎え、身体中が悲鳴を上げても尚、止まる事無く眼前の敵を殺す為に戦い続ける。

 そして、


「うおぉぉぉ!!」

「グォォォォ!!」

 最後は大剣が魔狼の心の臓を貫く。

 そうして魔狼ニュクスと呼ばれる一匹の化け物は亡くなった。


 △▼△▼△▼△▼△▼△▼


 面白い。

 今、俺は喜びを感じている。

 大勢の人間が俺の領域に入って来た時は愚かだと思った。

 実際に奴らの半分は地に倒れ込み動かない屍とかしているのだから。

 だが、眼の前にいる人間は違う。

 俺と対等な魔力と身体を持っている。

 現に奴は俺に傷をつけていく、数百年振りの事だ。

 身体は段々重くなり始め、魔力もほぼ無く気を抜けばやられてしまう。


「ああ、終わりたくない」

 そんな考えをしてしまった。

 刹那、思考の隙を突かれてしまう。

 呆気ない程の最後だったが、憤りも無ければ悲観さえ無い。

 何故なら、永遠に等しい時間の中で最も嬉しいのだから。

 対等な闘争こそが、俺の望んで止まない事だった。

 だからもう少し戦い続けたかった、それだけが残念だ。


「ああ」

 そうして俺の意識は、闇に呑まれてしまう。


 △▼△▼△▼△▼△▼△▼


 ある世界の森の中でそれは突如として現れた。

 人と狼を無理やり混ぜた異様な姿。

 身体は人間だが黒い毛に覆われ、指は五本あるが爪は獣の様に発達しており足も同様だ。

 そして、頭は狼の顔そもので、その顔はある魔狼によく似ていた。


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