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最果てのセカイ  作者: 喪須田 範太
巻ノ壱 鈍銀(にびぎん)の杖を抱える者
4/38

-3-

 カウンターの奧には、およそ三十台半ばと思われる少し痩せ形で丸い縁の眼鏡をした人の良さそうな男性のマスターが、次の客の為にカップを磨いていた。ドアに括り付けられたベルが、店名の『スプリング・ベル』を文字通り現すように、金属と言うよりもガラス同士がぶつかったような、控えめで良く通る音で来客を知らす。マスターは、ゆっくりとカップを置き、少し乾いたような落ち着きのある声で僕達を迎え入れた。


「いらっしゃいませ」


 僕達にそう言って軽く頭を下げると、優しそうな顔で微笑んだ。店内には僕等の他に誰も居なく、マスターが磨いたと思われるカップの数を見ても暫く客が無かった事は容易く想像出来た。

 店内は殺風景で、壁に模様の付いた布などは一切飾られておらず、部屋の四方に古びたナイフか短刀の様な物が鞘に収まって飾られている程度だった。何カ所かに設置されている仕切りだけが黒く、カウンターを除き、後はほぼ白一色で統一されている。店に大きな窓は無かったが、間接照明に壁が煌々と照らされて外とは大差無い程部屋は明るい。


「お好きな場所へどうぞ」


 夏音は、マスターが言い終わるのを待たずに、躊躇する事無く手前の席へ着くとメニューを開いた。僕も少し遅れて夏音の向かいに座ると、続いてマスターがお冷やを持って来る。コップというか、グラスは他の店の味気ないそれとは違い、飲み口を避けて真っ直ぐでは無い縦皺の入った無色透明なグラスで、所々に丸で囲まれた何かは分からない模様がちりばめられ、僕が見た感じでは何となく高い物なんだろうなと思った。グラスを置くとトレイを脇に抱え、ボールペンが挟まれた伝票をテーブルに置く。


「それではご注文が決まりましたら……」

「マスターこれっ!!アタシこれっ!!!」


 夏音はマスターの声を遮り、ドスッと言う音と共に、力一杯メニューの真ん中に指を差す。旬の果物のトリプルケーキセットで、旬の果物をふんだんに使った少し小さめのサイズのケーキ、3個セット。目玉商品らしく、大きく目立つ様にレイアウトされた写真には、柑橘系と柿や梨等をメインに色々な果物がセンス良く色鮮やかにデコレートされていて、見た目から美味しい事が分かる程だ。夏音のチョイスは悪くは無かったが、メニューの中にフォンダンショコラの文字を見つけると、僕は迷うことなくそれを選んだ。注文を言い終わった後も、夏音は何度もトリプルケーキセットを指さし、心なしか鼻息が少し荒いように感じられる。

 マスターは苦笑いをしながら、少し後ずさりをしたように見えた。


「それと、コーヒーも二人分。オリジナルブレンドで……」

「かしこまりました」


 伝票に注文を書き終えると、エプロンのポケットへ放り込む。


「それでは少々お待ち下さいませ」


 そう言って軽く会釈をすると、カウンターへと消えて行った。姿勢の良さや身のこなしを見るに、何となく気品が漂う、良い雰囲気を持った人だなと感じた。夏音は注文を終えた後もメニューに載せられている色とりどりのケーキに目を奪われていて、落ち着くまでは話になりそうもない。会話を諦め、僕はもう一度店の中を見回す。店が殺風景だと感じた理由のもう一つ、観葉植物が一つも無い事に気付いた。代わりにかどうなのかは分からないが、立体幾何学模様のオブジェクトがランダムに計五つ置かれていて、それらは着色等はされていなかったが、丁寧に磨かれたと思われる四角や球体の大理石は、覗き込むと自分の顔が写り込むのでは無いかと思われる程だ。こうしてやや離れた所から見るに、間接照明の光が良い具合に折れ曲がり、または反射するなりして映し出されたオブジェクトに走る光の白い筋は、何かの模様にも見える。

 ふと、コーヒーの香ばしい香りが鼻先をかすめた。香りの方へと目をやると、いつの間にかカウンターの上へ、出来たてのケーキを乗せたトレイが置かれていて、その横で、マスターが銅製のスリムなヤカンを優雅に持ち上げた。一拍置いてヤカンの口からなめらかにお湯が溢れ落ち、ミルで砕かれたコーヒー豆の真ん中に穴を穿つ。ドリップ容器の脇から僅かに押し出され、漏れ出した湯気は、濃い密度でコーヒーの香りを辺りへと振りまいた。僕の視線に気付いたのかマスターは優しく微笑んだ。


「君、こう言うのに興味あるのかい? 」


 不意に掛けられた言葉に僕は少し戸惑う。本音を言えば喫茶店のマスターには憧れを抱いていて、お洒落な喫茶店に美味しいコーヒー……出来れば僕自身が格好いいマスターだったならそれは最高だと思っていた。


「はい。家でも真似事でコーヒーを入れる事があるんですけど……どうしても上手く出来なくて、だから美味しいコーヒーを入れる方法を色々と試みては居るんですけど……」

「ふふ……それなら僕の所で勉強がてら、アルバイトしてみる気は無いかい? 見ての通りこの店は年中暇なんだけど……ね」


 コーヒーを淹れ終わったマスターは、店内を見回して肩を竦め、苦笑いを浮かべた。


「まぁ、何て言うか、忙しかったら良いんだ。でも、開店して君が初めて来てくれた男性のお客さんだし、何か縁を感じるんだよね」

「ぼ……僕がですか……それは恐縮です……」

「まぁ、考えておいてよ。急がないからさ……では、ごゆっくりどうぞ」


 言いながら注文した物を滞りなくテーブルに並び終えると、再び軽い会釈の後、カウンターの奧へと消えていった。店内は控えめなボリュームで流されるクラシックのBGMと、夏音のコーヒーをすする音だけが響いていた。フォンダンショコラにナイフを入れ、中からトロリとしたチョコレートが流れ出た時の事だった。


「ちょっとぉ、せっちゃん!それ、食べないならアタシが貰っちゃうよ!? 」

「うるさいなぁ、これからゆっくりと味わって食るんだよ。それより今来たばかりの夏音のケーキはどうしたのさ? 」

「もう食べちゃったわよ。せっちゃんがあんまりにもゆっくりしてるから」


そう言ってコーヒーをまた一口すすり、物欲しそうな目で僕の皿を見る。


「わかった。わかったから!でも少しだけだよ? 」

「えへへー分かってくれた? 」

「分かるも何も、このまま僕が全部平らげたらカノはデリカシーがどうとか、ずっと僕に言い続けるんだろ? 」

「ええ? アタシそんな事しないよぅ。どこの女と間違えてるのよ!」

「どこの女って、一緒に出かけるのカノ位しか居ないって、その位わかるだろ」

「ふーん、せっちゃんって本当に女っ気無いよね? 寂しいとか思わないの? 」

「いいんだよ。僕はこれで。ロースケとかとつるんでる方がずっと気楽だし」

「ろーすけって露庵先輩の事? 」

「なんで僕はせっちゃんでロースケは先輩なんだよ」

「露庵先輩って男らしいじゃん。なんかさ、頼りがいがあるって言うか、アタシのクラスじゃ結構人気あるんだよ? 」

「……いいよもう、僕、他人と比べられるの嫌いなんだよ。……だからそのロースケと比べる様な眼差しやめてよ」

「えへへ。でもね……実はアタシ……せっちゃんも格好いいと思うんだよね。かなり」


 そう言って夏音は少し頬を赤らめて、照れくさそうに笑った。


「ほぉ。少しはカノさんも社会で生き抜くと言う事はどういう事かを覚えたようだね」


 言われてまんざらでも無かった僕は頷きながら少し偉そうに言うと、何故か夏音はもう一度嬉しそうに笑った。


「覚えてなんか無いよ。これは、思ってる事を言っただけだよ……」


 そう言いながら改めて僕の顔を覗き込む。嘘か本当か、良くは分からない。新手の心理作戦か何かか……初めは警戒をしていたけど、真っ直ぐに僕を見続ける夏音の目が、僕を惑わす。言われて嬉しくない事は無い。決して彼女の思惑に引っかかった訳では無いのだけど、気持ちばかりショコラを少し大きめに夏音の皿に切り分けた。

 正直な所、夏音は可愛い……と思う。事実、結構、いや、かなりもてる。ルックスだって相当いい。顔立ちは整って、ぱっちりとした二重に見つめられたら、幼なじみの僕ですら戸惑うくらいだ。スタイルだってよく知っているが、今では恥ずかしくてまともに夏音をみれない位、出る所は出て、引っ込む所は引っ込んでいる。頭だって良いし、物忘れと、がめいつい所が無ければほぼ完璧と言って良いだろう。ハカナがしきりに夏音の事を羨ましがるのも無理はないと思う。

 正直言って、なんで僕なんかと一緒にここでお茶をしているのか不思議なくらいだ。


「そういうやさ、僕のクラスの吉岡がカノに振られたって噂が流れてるんだけど……」


 何故かは分からないけど、思わず口にしてしまった。他人の事と思いながらも、やはり幼馴染みが関わっていたからか、どうしても聞きたい衝動に駆られ、口にしてしまった。すると、夢中になってショコラを食べていた夏音は急に手を止め、真剣な眼差しで僕を見返す。


「せっちゃん……さ、何処でそんな事聞いたか分からないけど、その事については忘れてくれないかな? 」

「ん? ああ、カノが嫌だったら直ぐにでもそのつもりだよ」

「嫌とか、そんなんじゃ無くてさ……」


 夏音はフォークとナイフを置くと、グラスの水を一口飲み、言葉を選ぶ様にして自分の思いを口にした。


「んー……せっちゃんだから言うけどさ、吉岡さんの事については本当。でもね、せっちゃんに忘れて欲しいって言ったのは、アタシが応える事の出来なかった吉岡さんの気持ちを大切にしたいと思ったからなんだ……誰が何の権利をもってそんな事言いふらしてるか分からないけどさ、アタシは、例えせっちゃんでもあの人がくれた気持に触れて欲しく無いの。大切にしまっときたいの。だからもう吉岡さんの事について言わないでくれるかな? 」

「ああ……ああ……そうだね。うん。分かったよ」


 夏音の良いところ。それは人の気持ちを大切に、思いやる所。僕は何故、彼女が周りから慕われているのか、ルックスだけでは無い事を改めて理解した気がする。それと同時に夏音が何故か僕よりも少し大人びて見えた。


「せっちゃん、何にやけてるの? 」

「えっ? 僕にやけてた? 」

「うん。いまスッゴイエロい顔でにやけてた」

「ええ? 僕そんなにエロいのかなぁ……」


何となく自分が男として否定されたような感じがして、僕はがっくりとうなだれる。


「ふふ……」


不意に夏音は笑った。


「冗談だけどねっ」

「もー、ひどいな……僕の心は繊細なんだ……傷ついて深手を負ったらどうするんだよ……」

「でもさぁ、何ニヤケてたの? 何か思い出し笑い? 」

「ええ? もういいよ……上手く言えないし、恥ずかしいし……」

「恥ずかしい事? そんな事考えてたの? 」

「違うよ、なんて言うかさ、その……」

「ほらー、早く言いなよ!どうせ勿体ぶる程の物でも無いんでしょ? 」

「わらわないでよ? 」

「笑わないからさ、早く言って楽になりなよ」


僕は咳払いを一つすると、グラスの水を少し飲み、改めて夏音の方を向いた。


「うん……なんて言うかさ、僕は夏音の事を誇りに思うんだ。ほんとだよ? 」

「え……」


 途端にそれを聞いた夏音の顔は傍目から分かる程、赤くなり、俯き、言葉を失ってしまった。残ったショコラを食べる夏音は、先程の勢いを失い、黙々と、ちびりちびりと食べていく。


「あっ……何か悪い事言っちゃった……かな……」


 夏音は僕の言葉を無視してケーキをひたすら食べていた。ふとカウンターの方へ目をやると、丁度マスターがBGMを切り替える所だったらしく、左手に3枚ほどCDを持ってCDプレイヤーの前へ立っていた。曲目リストを何度か見返しながら、ようやく納得の行く選曲が出来たのか、CDを入れ替え曲順をプログラミングしている。


「あっ、マスター!」

「ん……ちょっと待ってね……はい、なにかな? 」


 先程とは打って変わって良い雰囲気のジャズが店内に流れ始める。イントロから軽快にピアノが切ないメロディを刻んでいき、それを追うようにベースの音が心地よく響いた。スパイスの効いたドラムがフェードインを始め、最初はちぐはぐに思えていたピアノとベースのメロディが溶け合って一つの旋律となっていく。


「ここのケーキ、テイクアウト出来ますか? 」

「ん? ああ、大丈夫だよ。出来ない物もあるけど、それ以外なら基本的に何でもオーケー。テイクアウト出来ない物はメニューに印が付いているからよろしくね」

「ああ、良かった。それじゃあ、このモカとショートケーキ1個ずつお願いします」

「ハッチの? 」


夏音はハッと顔を上げると腕を組んで何かを考え始める。


「うん」

「はい、えーっとモカとショートケーキね。かしこまりました。今すぐ包んでおいても、いいのかな? 」

「はい。お願いします。」

「ハッチ2個も食べれるのかぁ……ハッチは2個かぁ……」

「カノは3個と僕のショコラも食べたじゃ無いか……」

「ええー? どうせアタシが払う前提みたいだしぃ……いいじゃない。それにぃ、自腹と奢りはぁ、味が違うんだよねぇ……」


しまった!


 僕は思った。おおらかになり、密かにテイクアウトしようとしていた事を忘れ、思わず僕は夏音の目の前でそれを慣行してしまったのだ。心の間隙を見抜き、一瞬で切り返す夏音。詰めの甘さに僕は自分を呪った。どうやら、いや、やはりと言うべきか夏音は端から自腹を切るつもりが無かったらしい。確かに思い返すと一言もそんな事を言ってなかった事に気付く。恨めしそうに僕を睨みながら何度も何度も、呪いの呪文の様に自腹と奢りに付いて延々と言っている……というか唱えていた。ああ……なんと言う事だろう……僕は幼気なこの少女の『いつもの』策略にいとも容易くはまってしまったと言うのか……ここで断ろう物なら勿論大変な事になるだろう事は過去に起こった惨劇から想像に容易い。まず一週間、顔を合わせる度に同じ事を言われ続けるだろう。逃げれば良いとかそんな甘い物ではない。何処から聞きつけるのか、僕のスケジュールをチェックし、要所要所で絡んでくるのだ。皮肉り、ののしり等の罵詈雑言で僕を精神的に追い詰めていき、それは夏音の気が済むまで続くのだ。そして、その後、夏音の財布の紐が僕に対して更にきつくなる事は言うまでも無い。


まぁ、あまり奢って貰った事ないけど……


 昔の人はよくいったものだ。『損して得とれ』と……(この場合の得とは、むしろ、夏音からの陰湿な嫌がらせから身を守ると言う意味合いが強いのかも知れない)。もう少し金銭におおらかになってもいい気がするのだが、趣味が貯金とか堂々と言ってのける事から、この性格は死ぬまで変わる事は無いのだろう。諦めるしかない。


「わかった!わーかったから!僕が出すから……」

「ほう……セツナ君も世渡り、と言う物を分かってきたようだね」


 夏音はどや顔で僕を見下す。あまりにも屈辱的な一瞬だった。そしてレシートの金額は余りにも無情な値段で僕の財布から金を毟り取って行く。


「有り難うございました」


 僕の気を知らずに喫茶店のマスターは爽やかな笑顔で僕達を見送ろうとしていた。


「あっ、マスター!バイトの件なんですが、お願いできますか? 」


 本当はもう少し考える予定だったのだが、今の出費はあまりにも痛かった。このままでは、来月末に発売される新作ゲームが買えなくなる事を頭がよぎった瞬間、僕はバイトの申し出を、半ば脊髄反射的に申し出ていた。


「えっ? 受けてくれるんだ!じゃあ明日からお願いしても良いかな? 」

「明日からですか? 」

「うん、もうすぐクリスマスだしね、今年もケーキのコンテストに参加しようと思ってるんだ、それでどうしても人手が欲しかった所なんだよ」

「なるほど、そう言う事なら分かりました」

「本来なら……妻に手伝って欲しい所なんだけど、あいにく今、体壊しててね……でも助かるよ」

「それじゃあ明日は何時に来ればいいですか? 」

「そうだね、んー……大体今頃、4時半頃までには来れそうかい? 」

「はい、大丈夫です」

「じゃあその頃に来てもらえるかな。仕事の手順はその時にでも説明するよ。なに、難しい事は無いから直ぐに慣れるさ」

「分かりました。じゃあ、明日からよろしくお願いします」


 僕等が店を出ると空は雲一つ無く真っ赤な夕焼けだった。


「うう~っ……また寒くなってきたねー」


 思ったよりも空気が冷えていて、夏音は震えながら少し首をすくめ、手に息を吐きかける。擦り合わせた手がカサカサと音を立てた。さっきまでは憎らしくも見えて居たけど、流石に女子が手をカサカサさせるのは少し可愛そうだ。


「ほら、ちょっと不格好だけど、これ使ってよ」


 僕はポケットからハカナが作ったミトンの手袋を取り出し、夏音に差し出す。


「い……いいよ。せっちゃんも寒いんじゃない? 」

「僕は大丈夫だよ。ポケットに手を入れれば同じだし、だから使っていいよ」

「ふ……ふーん。よし、じゃあ使ってあげよう……あっ!スゴイ、これ手作り? うわぁ、暖かいなぁ……」


 夏音は手袋をイソイソと手にはめ、何となく歪んだ模様に気が付いたのか、手袋をはめた手で手の甲の不格好なクマの刺繍をなぞった。


「うん。ハカナが作ってくれたんだ」

「あはっ!可愛い。へぇ、いいなぁ……こう言うの。アタシもハッチに習って作ってみようかな? 」

「ハカナだってそれ程上手くは無いよ。ほら、ここなんて毛糸がほつれかかってるし」

「それでもいいんだよぅ。何か暖かみがあってアタシはこう言うの好きなんだ。きっとこの手袋作る時、ハッチ頑張ったと思うよ? 」

「そうかもしれないね」

「ねぇ? 今度手袋の編み方教えてってハッチに言っておいてよ」

「うん。いいよ」

「ふふ……楽しみだなぁ……」


 そう言って口元を綻ばせながら、手袋を眺めていた。僕が再び自宅へと足を向けると、夏音は慌てて僕の背中を追ってきたが、余程気に入ったのか、家に着くまで何度も手袋をいじくりまわしていた。


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