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最果てのセカイ  作者: 喪須田 範太
巻ノ壱 鈍銀(にびぎん)の杖を抱える者
28/38

12月23日 僕は恐怖から目を背けた

 期末試験最終日、昨日は二人の犠牲者が出た。冬華さんは、あれから僕の前に現れていない。来る気配も無かった。妖筆を警戒しての事だろうか、あたかも狩人の様に気配を消されてしまっては、彼女の動向を知る由も無かったし、いずれにしてもなるべく周りに気取られたくない僕にとっては都合が良い。

 それにしても……何故この時期になって祖父は僕に筆を渡したのか、それが気になる。憶測ではあるけど、祖父は冬華さんの……禍ツヒトの事について何か知っている気がした。いや、知っているのだろう……僕がお伽話と思っていた、幼い頃に聞かされたあの禍ツヒトの話は多分、全部本当の事だった可能性は高い。

 何らかの方法で禍ツヒトがこの町に現れた事を知った祖父が、お守り代わりに筆を僕に渡した……そう考えると納得が行く。

 だとしたらハカナはどうだろうか?

 祖父の家へ良く出入りしているハカナは……あれだけ剣道が強いのはもしかして禍ツヒト戦う為に鍛えたからなのだろうか? しかし、目の前に現れた禍ツヒトに対して、僕は反則的な道具を使い、一瞬優位に立てた物の、正直言って勝っている部分は一つも無かった。生き残れたのだってほんの少しの偶然が重なったからに過ぎない。それに加えて昨日は二人も『喰らった』のだ。更に強くなっている事は考えなくても分かる。幾らハカナが剣道の全国大会優勝経験者と言え、竹刀と銃なのだ……太刀打ち出来ないだろう。僕みたいに『特別な道具』を持っているなら話は別だが……もし、祖父からハカナも『特別な道具』を受け取っていたとして……それでも僕は、ハカナには平穏な日常を過ごして行って欲しい。

 こんな危険な目に合うのは僕だけで十分だ……


「はいっ!終了!お疲れ様でした」


 数学の教師が軽く手を叩き、期末テスト全日程が終了した事を知らせ、後ろの席から答案用紙が集められて行く。教室が不意にざわめき始め、ある者は背伸びをしたり、あくびをしたり、テストの出来を違いに聞き合ったりと、徐々に教室は賑やかさを取り戻していった。


「うーんっ!」


 僕も開放感からか、凝り固まった肩と背中の筋肉を思い切り伸ばす。しかし、まだだ……まだ、最後の仕事が残っている。


「ねえねえ? せっちゃん数学どうだった? 私もうだめかもー……」


 緊張感が解けたハカナは「ぷはー」と言いながら机に突っ伏してしまう。心なしか何時もキッチリ結われているお下げも、力を無くしたかの様に、しんなりとしてしまっていた。


「数学? そうかな? 今回のは結構簡単だと思ったけど」

「そうだよねぇ……せっちゃん昔から算数とか得意って言うか、好きだったから……でも、やっぱり難しいよ、数学は……」

「そうかなぁ、でも分かれば絶対面白いって。難しい問題が解けると爽快感みたいなのもあるし……それよりさ、今からチョット屋上へ行かない? 」

「ん? いいよ」


 僕はハカナを忙しない教室から誘い出す。

 屋上の入り口にある販売機でハカナがコーヒーを買うと言い出したので、僕は先に外へ出て眼下の町を見渡す。ここ最近張り詰めていたせいか、気がつかなかったのだが、よく見ると、去年よりも多くクリスマスのイルミネーションを派手に飾り付けた家が増えた様だ。既に電気を灯している家も有るようで、ほの暗い空の下では、学校の屋上からだととても良く栄えて見える。

 明日はクリスマスイヴか……

 更に視線を下ろすと、校舎から続々と生徒が出てくる。テストの結果はどうであれ、取り敢えずは終えたと言う開放感で皆一様に浮かれた表情をしている。しかし、僕の学校はどうにも意地が悪く、冬休み、しかも正月の手前に通知表が届く。本当に心の安息を得られるのは、そのイベントが終わった後だ。

 そんな事を考えていると、少し遅れてハカナが毛糸のミトンを履いた両手に『アツアツ』の缶コーヒーを握りしめ、走ってくる。


「何故缶コーヒーは美味しいのかっ!ってね」


 笑いながら僕に差し出す。ハカナも開放感からか少し楽しそうにしている。僕はそれを受け取るなり、直ぐにプルタブを起こし、喫茶店の時とは違う趣きの旨さを一口、堪能した。


「ほんとだね。特に今日みたいな日のコーヒーは格別だよ」


 それを聞いてハカナは僕の手から缶コーヒーを奪い、一口飲んで幸せそうな溜め息をつく。


 全く……買ってくるなら二人分買ってくれば良いのに……


 そんな不満を抱きながら、僕は未だにハカナの顔を面と向かって見れないで居た。

 昨日の夜、あれだけなんと言おうか考えて、ようやくまとめたのに、これが最後かも知れないと思うと、なかなか口が動かない。


「……ねぇ? せっちゃん、どうしたの? 」

「ん? 」

「なんか……テストが終わったのに、ずっと張り詰めた感じがしてるよ? 」

「うん、あのさ……」


 ハカナは首をかしげて僕の顔を見上げる。


「あのさ、ハカナ、何も言わずに僕の言う事を聞いて欲しいんだ」

「どうしたの? 」


 僕は片道だけの航空チケットと、茶封筒をハカナに握らせ、結局、昨晩考え抜いた文句は一言も口にする事が出来ず、本題へと流れ込む。


「いいかい? 今から家には帰らずにまっすぐ空港へ行くんだ。荷物は爺ちゃんの別荘に送ってあるから」

「え? え? どういう事? チケット、一枚しか入ってないし」

「ハカナ。良く聞いて……」


 僕はハカナの両肩を押さえ、母さんによく似た目を見つめて言葉を選ぶ。困惑したハカナに、どうやって説明をしたらいいのか、多分、期末テストの時の数倍は頭をフル回転させた。少しショックを与えてしまっても構わない。分かっていることを全て話してしまおう、そう決意する。


「良く聞いて。連続殺人事件の犯人が次に狙っているのはハカナの命だ。だから逃げるんだ」


 僕は初めてハカナに嘘をつく。冗談は何度言ったか分からない。軽い嘘も何度かついた。でも『本当の嘘』をついたのは初めてだ。それが見透かされないように、僕は心の罪悪感を極力押さえ込む。見返すハカナの瞳は余りにも真っ直ぐで、僕の胸は軽い痛みを覚えた。


「ふふっ。またまた……そんな冗談きついって。大体、何でせっちゃんがそんな事知ってるの? それにそう言うのは本当だとしても警察とかに言った方が……」

「冗談……冗談なんかで……冗談なんかでこんな事、言えないよ!」


 僕は、まじめに受け取ろうとしないハカナに苛立ちを覚え、声を荒げてしまった。驚いたハカナの顔を見て罪悪感を感じたけど、でも、少しでも早くここを去ってもらわないと、そんな焦りだけが空回りをして上手く口が回らない。特に、犯人の正体には絶対に触れて欲しくなかった僕は、急ぎすぎていたのかも知れなかった。


「ちょ……せっちゃん、何か怖いよ」

「アレは人間じゃ無いんだ!警察なんて役に立たないんだよ!バケモノがっ!バケモノ……なんだ……」


 僕はその言葉を口にして、ハッと冬華さんの顔を思い出す。そして冬華さんの事を『バケモノ』と言った自分に、何とも言えない不快な感情が沸き起こった。ロースケが大切に想っている人の事をバケモノと呼んだ。この結果は僕が引き起こした事なのに、そう思うと自分で自分が嫌になっていく。

 それでも今は、自分で自分の事をどれだけ嫌いになったとしても、ハカナを説き伏せたかった。


「と……突然そんな事を言われても……」

「僕の言っている事は確かに現実離れしてて信じられないだろうけど、けど、本当の事なんだ!頼むっ!頼むから!僕だって、もう……どうしたらいいか分からないんだよ……」

「痛っ!せっちゃん……わっ、わからないよぅ……私も……」


 両肩を掴んだ手に知らずの内に力が入ってしまっていた様で、ハカナの苦痛の表情に僕は手を離す。

 ここまで言って、冬華さんが犯人だなんて、禍ツヒトだったなんて、とても言えなかった。言ったとして信じて貰える確証は無いし、更に冗談だと思われるかも知れないと言うのもあったのだけど、僕はまだ少し、ある種の期待をしていた。もしかしたら冬華さんを元に戻せるかも知れないという希望だ。根拠は全く無かったし、それ以前に、どうやって元に戻すかすら考え付かないでいたのだけど、僕はそこから目を反らさずには居られなかった。これは希望の有る別れだと、そう自分に言い聞かせ、奮い立たせなければ僕は立って居られなかった。


「僕は、まだやらなきゃいけない事が有るから、向かうのは少し遅くなると思うけど、後から必ず行くから」

「じゃあ私もそれを手伝う!」

「駄目だ。絶対に駄目だっ!どうして僕の気持ちを分かってくれないんだ!」


 僕はハカナに対して始めて明確に彼女の意志を拒絶する。

 今までそんな事は無かった。何時だって、彼女の意志をある程度汲んで、そして二人で色々な問題を解決していった。でも今回だけは、どうしても譲れない。

 始めて拒絶された事に驚いたハカナは、目に涙をじわりと浮かべ言葉を失う。


「いっ……いくもん……私もせっちゃんと行くんだもん……」


 うわずった声で尚も子供の様に食い下がる。


「いずれにしても絶対に駄目だ。ハカナはこれからも普通に暮らすんだ。普通に暮らして、普通に幸せになって、ずっとずっと!ずっと……幸せなはずなんだ!」


 僕に拒絶される事に馴れていなかったハカナは、子供の様に立ちすくみ、泣きたいのを堪えるのに必死の様だった。横に垂らした拳を握りしめ、何故そうなったのか分からないと言った表情で僕を見る。

 その顔を見て、かわいそうだと一瞬思ってしまった僕は、その気持ちが大きくなる前に、昔、母さんが僕を諭(さと)す時、してくれたようにゆっくりとハカナを抱きしめ、言い聞かせる。


「ハカナ……僕の大切なハカナ……頼むから、逃げてくれ……」


 ハカナの髪に僕の頬をあてがう。何時もは付きまとわれる事に疎ましさを感じる時もあったのだが、これが最後かと思うと愛おしさすら感じられる。

 ハカナの肩が小刻みに震えている。腕の中で静かな嗚咽が聞こえた。


「……そろそろ行くよ。約束するよ、別荘で待ってて。必ず行くから……だからもう泣かないで……」


 僕はハカナの体を離すと顔を見ずに振り返った。

 振り返るその一瞬に見えた僕を追うハカナの手を堪えて振り切る。

 背中越しにハカナが声を押し殺して泣いているのを感じた。母さんが亡くなった時以来、泣いた事……無かったのに……


 ゴメン……ハカナ。最後の最後で泣かせちゃったね……ゴメンね。


 言いたい事も伝えたい事も、まだまだ沢山あったけど、でも、その為に振り返ったら僕はきっと、ハカナの元を去れなくなってしまう。そんな気がして、だから僕は、逃げる様にしてその場を走り去った。




 明日から冬休みに入る事もあってか、学生が良く目に付く駅前周辺では、パトカーを見かける事が今日に限って異様に多い。駅の入り口にも警備員が何時もより多目に配置され、まぁ、クリスマス前日と言う事もあっての事だけど、それでも、何となく街は異様な緊張感に包まれていた。間違い無く事件の煽りを受けての事だろう。

 冬華さんが何処にいるかは正直言って想像がつかない。だけど、町の中心でこうして気を張っていると分かる。間違いなくこの街に居る気配を感じる。街全体に冬華さんの……いや、禍ツヒトである彼女の気配が蔓延し、重苦しさを感じる。今迄には無かった感じだ。そして、その事がどれほど彼女が力をつけたのかを物語っている様にも感じられた。


 昨日の事件現場は、駅から道を一本挟んで円形の広場――おおよそ五十メートル四方――の中心地、今はクリスマスツリーがライトアップされている場所だ。その場所で男女のカップルが打ち抜かれた。

 相変わらず報道機関が何らかの犯罪組織と言う、根拠の無い架空の犯人を仕立て上げそれを周知してはいたが、今回の事件は少し何時もと違った。まず、今回の事件では男性だけでは無く、女性も亡くなっている事。そして、男性の死体の指輪からそれを購入した宝飾店が割り出され、身分証明書と同じ名前が見つかった事だ。

 今までは、死亡時、手元に有った物にしか身元を示す物がなかっだだけに、これを切っ掛けに何か犯人への足がかりになる物が現れる事を期待されてはいるけど、正直言って無理だろう。何せ、そこから冬華さんへ繋がる物が無いのだから。

 状況は全く変わってはいない。

 禍ツヒトが目覚めた時、ターゲットである僕かハカナを見つける事が出来なければ、恐らくはそこら辺にいる人を無作為に選別し、運の悪かった人が魂を食べられてしまう。その事を考えるにつけ、僕の中で焦りだけが空回りを始めている。次の犠牲者が出る前に冬華さんを探し出し、そして、終わらせなければ……僕の頭の中はその事で一杯だった。


 ツリーから少し離れた、広場の外周に設置されたベンチに、昨日の犠牲者の魂の欠片とでも言うべき物――あまりこういう言い方はしたくないのだけど、彼女の喰い残しと言うのが正しいだろう――手だけになった男の人と女の人の影が指を絡ませたままその場に残されていた。

 男性の人差し指は節が四つで、互いの薬指には婚約指輪の様な物がつけられている。多分、宝飾店に名前が残されていたのは、そう言う事だったのだろう。

 暫く見ていると、男性が立ち上がったのだろうか、男の手だけがツリーの近くへ移動し、その後を追うように女性の手が追いかける。再び二人の手が結ばれ、ツリーのイルミネーションを向いたその瞬間、二つの手は地面へと落ち、そして消えていった。

 数分後、再びベンチに二人の手が表れ、また同じ映像を繰り返す。

 僕が偶に見かける、この世の者で無くなった者、死者が残す最後のメッセージだ。

 僕は二人が立っていた場所に立ち、そこからツリーの延長線上にある建物を見上げる。

ショッピングセンターの屋上駐車場、微かに残る冬華さんの気配に誘われ、その場を後にした。


 屋上駐車場はこの時期、利用者が極端に少ないらしく、車が入ってきた形跡も出て行った形跡も殆ど見られない。多分ここに駐まっている車は積もった雪を見るに、ここ二・三日前からの物だろう。

 エレベーターから狙撃現場まで、足跡のように赤い妖気らしき物の固まりが色を薄めつつも未だ辛うじて残っているのを見つけると、僕は足跡を追って狙撃現場へ向かう。柔らかな雪を踏みしめる度、辺りに軋むような音だけが鳴り響き、足跡の終点に近づくに従って、吹き溜まった雪は深くなり、物理的に付けられた足跡も少しずつ形を失っていく。少しずつ足場を固め、ようやく狙撃地点と思われる場所に立ち、僕の背の二倍以上は有ると思われる、先端が内側に折れ曲がった鉄柵に指をかけ、先程の噴水を見下ろした。

 何を思って彼女はここからあのカップルを見ていたのだろう。


 自分とロースケを重ねていたのだろうか……


 溜め息をつきながら、振り返る。

 こんな事、幾ら考えたって事態は好転しないんだ……僕は何の為にここに来たのだろう……ここに残された気配があって、ここから噴水が見下ろせて、でも、行方を掴む手がかりは全く無くて……


 無駄足だったか……


 そんな事を考えながら再び溜め息をこぼし、さりげなく足下に視線を落とすと、今にも消えそうで寂しげな気配が、仄かに青い光を放ちながら足下で佇んでいる事に気付く。今まで見た事の無い物で、激しく興味をそそられた僕は、吸い寄せられるようにその青い光を指先で触れてみる……と、その瞬間、指先に電気が走った様な感覚と共に、見た事も無い景色が脳裏に浮かぶ。


 朽ちて古びた時計台。細く白い薬指の指輪。風に揺らめく麦畑。氷の張った美しい湖。教会。赤いウェディングドレスと血塗られた手と銀のライフル。

 時計台の屋根からは、遙か遠くに戦場だった名残が見える。投石機の残骸、地面に突き刺さったおびただしい数の剣、そして散らばる盾と、そこを飛び交うカラスの群れ。

 それらはいずれもヨーロッパか何処かの物のようにも思えたのだが、どことなく、この世界の物ではない雰囲気があった。


 恐らく今、僕が触れたのは、誰かの記憶の欠片なのだろう。

 教会から道伝いに森を抜け、戦場を越え、その遙か先にある懐かしい故郷へ、平穏だった日々へ戻りたい……そんな切なる想いが伝わってくる。家に帰りたい、そんな気持ちで僕の心まで一杯になる。

 そんな気持ちに支配されかけている自分に気付き、思わず記憶の欠片を手離してしまう。そのまま地面に落ちた仄かに青い光を放つ記憶の欠片は、きんと甲高い音を立て、跡形も無く消えてしまった。


 何故こんな所にこんな物が……


 ふと思った。冬華さんにまつわる何かでは無いのか……と。

 でも、冬華さんと結びつける様な物は何も見あたらない。

 何かを伝えたかったのではないか? そんな考えが頭をよぎったけど、取り敢えず僕はここで足を止める訳には行かなかった。僕に今、必要な情報は彼女が何処へ行ったか……それだけだ。

 もう一度、あのカップルが撃ち殺された現場を見下ろし、一呼吸付くと僕はその場から離れ、一つ覚悟を決める。


 ホテル街に行ってみよう……


 数日前に起こった事件の現場であり、冬華さんが時間を費やした場所でもある。現場がどうというよりも、冬華さんを知っている人に会えれば何か分かるかも知れない。そんな考えからだった。

 しかし、同時に不安もよぎる。良くも悪くも名前が売れてしまった冬華さんの事を聞いて歩くのだから、快く思わない人だっているだろう。ロースケが隠したがっていた『何か』に行き当たってしまうかも知れない。でも躊躇している場合ではない。時間が無いのだから。空が青い内に彼女を見つけ出さなければ、夕暮れ時になれば僕が圧倒的に不利。そうなる前に仕掛けなければ……


でも僕に出来るだろうか……


ナイフと妖筆で、果たして何処まで僕は……


もし、優位に立てたとして、追い詰めたとして……僕は……僕は冬華さんを……この手にかけれるのだろうか……


 考えるだけでも手が震えた。でもやらなければいけない。僕には終わらせる責任がある。冬華さんの……いや、禍ツヒトを倒し、そして、僕もこの世界から消えなければいけない。これ以上、ロースケやハカナには悲しい思いをさせられない。その為に僕なんかの命一つで事が済むなら安い物だ。


 僕は今まで面倒事から目を背け、楽な方を選んで歩いてきた。今まではそう言う自分が好きになれなかったけど、今日ばかりはその性格が役に立ちそうだ。

 僕は恐怖から目を背け、僅かな希望に目を向ける。そして、ショッピングセンターの屋上を後にした。


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