ハレムの主は王妃様
百合表現をぷちっと含みます。
やまなしおちなしいみなしです。
春月の書く恋愛ものは微糖が多いです。
イルフェス____双子神が創造したと言われる世界。
後々の歴史学で、建国期と称される神託歴346年。
イグニ大陸の風と自由の国・リベルテ国に一人の娘がハレムに入った。
その娘の名は、アリソン・フェスト・フュラー。
侯爵家令嬢は歴史に”太陽妃”として国民の人気と数々の逸話を残す事になる。
それらの逸話から童話『太陽の姫様』の名作シリーズが後の世に生まれる事になる。
一人の女性が頬を染めながら、困惑した面持ちで相手の男を見上げた。
男の名はアインザームカイト・カイト・エアスト・プリンッツ・リベルテ___リベルテ国の六代目国王だ。
成人したリベルテ王国の王族男児はハレムを所有しており、カイトも例外ではない。
カイトのハレムには現在、王妃が一人に、側室が十五人、息子が五人、娘が三人と大所帯である。
困惑した面持ちでカイトを見上げている女はカイトの十四番目の側室である。
そうなのだが…………。
「お許し下さい、わたくしはもうっ……アリソン様以外に抱かれたくないのですッ!!!」
「……お、おまえもか…………」
カイトがハレムの主の筈が、彼の王妃にして寵姫アリソンがハレムの主として君臨していた。
それは権力的な意味も然ることながら、十八禁的な意味でもである。
何かと王の仕事に忙しいカイトがいない間に、側室はもとより、侍女や女騎士や武官文官関係無しに喰っていた。
果てしなくどうでも良い話だが、アリソンの方が攻めである。
男でも、女でも。
彼女の他の追随を許さぬ手練手管で、一度寝てしまえば彼女の虜状態だ。
そんな性的に特化しているのかと思いきや、侯爵令嬢であったために魔術・外交・政治・福祉・芸術などどの分野も有能にこなしてみせる。
正直、有能過ぎて逆だったら良かったのにと、側近に言われたことがあるのも一度や二度ではなかったりする。
「ですから……」
「あー、皆まで言わなくて良い」
興がそがれたカイトはその側室の部屋を出て、はぁ……と溜め息を零した。
カイトはハレムの人数や子供の数から分かるように、女好きの精力絶倫である。
テクが妻に劣っているのは地味に凹む。
(……アリソンの所に行くか…………)
とぼとぼ。
そんな足音が聞こえてくような感じで、王妃の間まで歩んだ。
「あら、いらしたのですか?」
「……一先ず、今襲っている侍女を解放しなさい」
「はーーい」
アリソンに組み敷かれていた侍女は頬を目一杯染めはだけた衣服を抱え足早に部屋を去る。
侍女の後ろ姿を視線で追っていたカイトはようやくアリソンに向き直った。
アリソンは他の追随を許さぬ美しさがある女だ。
金色の波打つ髪は蝋燭の灯に反射し艶やかに煌めき、白く柔らかな曲線を描く肌の上を流れている。
蠱惑的でやや肉厚な唇を飾る紅が白い肌に良く栄えた。
瞳は春の森の新緑をぎゅっと集めた鮮やかな翠色の瞳がカイトを楽し気に映し込んだ。
「いらっしゃい、あ・な・た」
「……頼むから、側室を寝取るのはやめろ」
おまえは女だろう?と、カイトは釘を指す。
アリソンは嫣然として、一言。
「わたくし、両刀ですもの」
「…………」
「男も女もわたくしを請えばいいのです」
ないて求める様はとても可愛らしくってよ、と言い切った。
他を惹き付けてやまないのは妃の何であろうか。
その匂い立つ美貌であろうか。
その他を圧倒する頭脳であろうか。
カイトが彼女に惹かれてやまない理由。
それは、気高い彼女の魂なのだと、心の内に零した。
何処までも先を見据える瞳。
背筋を伸ばし、立ち止まることを許さぬ前進。
市井を見つめ、その闇からも目を逸らすことなく、目を凝らした。
そのくせどんなに酷い傷を負おうとも、弱さを見せぬ強情さ。
そこから目が離せなくなって、一緒にいたいと望んだのはカイトの方だった。
「でも、抱かれるのは貴方だけですわ」
ぽつりと言われた特別宣言。
どこか澄まし顔で顔を背ける姿が、常にない愛らしさに笑みがこぼれる。
(あぁ、本当に適わないなぁ)
本当は色々言う筈だった言葉は四散する。
擦り寄る体温を抱きしめ、寝台に雪崩れ込む。
夜はまだまだ、耽るのであった。
おまけ
王「……ところで、さっき言っていた『男も女も__』って……?」
妃「それがどうかいたしました?」
王「え?浮気じゃ……」
妃「わたくしが攻めですもの。身体は許していませんわ」
王「……」
妃「なんなら王も体験します?」
王「いや、いい(体験したら何か尊厳が失われる気がする。主に男の……)」
妃「……残念ですわ」ボソ
▼おうさま は かんき を おぼえた
▼おうさま は にげだそう と してる
▼おうひさま の くちづけ
▼おうさま は つかまった
オワレ
▼以下これを作る時のkw
百合 王様→王妃様 王妃様両刀かつ有能 王様の側室を王妃様皆寝取って惚れさせた
構成の女の子が憧れる童話主人公のモチーフになった
また歴史において太陽妃と唄われ、自国の文化の発展に寄与した