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理事長の娘になったら、5人の兄たちに溺愛されました!?  作者: ぴよこ


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7/12

月明かりの距離

夜。


部屋でスマホをいじっていたら、かすかな音がした。


……コツ、コツ。


こんな時間に外から何の音だ…?


廊下に出る。


音は中庭の方からだ。


テラスのドアは半分開いている。


冷たい夜風が入ってくる。


中庭に目を向けて、息が止まった。


ひよりが一人でステップを踏んでいる。


ぎこちないし、明らかに下手。


でも、何度もやり直してる。


(何やってんだよ)


ひよりがターンをした時、


――ぐらっ。


バランスを崩す。


距離は数歩先


考えるより先に足が動いた。


「危なっ…」


腰を掴んで引き寄せる。


軽い。


細い。


腕の中にすっぽり収まる。


「……海里お兄ちゃん?」


その呼び方で、胸がざわつく。


近い距離。


月明かりに照らされた顔。


汗で少しだけ頬が光っている。


俺は小さく息を吐く。


「それ、やめろ」


「え?」


「“お兄ちゃん”って言われると、みんなと同じになるだろ」


ひよりが首を傾げる。


「みんな?」


顔が少し熱い。


「……俺は、ひよりの中で特別でいたい」


言った瞬間、空気が止まる。


何言ってんだ俺。


でも引っ込めない。


ひよりは目を見開き少し黙って、それから小さく言う。


「……海里?」


名前だけ。


それだけで、心臓が跳ねる。


(やばい)


急に距離が近く感じる。


俺は腕をゆっくり離す。


「何してたんだよ」


「練習してた。本番までに、ちゃんと踊りたくて…」


一人でこんな時間に。


「下手でしょ?」


少し悔しそうに笑う。


胸がきゅっとなる。


「そうだな」


正直に言うと、むっとする。


「やめるのか?」


「やめないよ!」


即答。


その顔が好きだと気づいて、目を逸らす。


「音、あるか」


スマホを取り出し、音楽を流す。


「俺とやるか?」


「踏んじゃうかもよ?」


「踏めばいい」


手を取る。


温かい。


少し汗ばんでいる。


ステップ。


案の定、踏まれる。


「ごめん!」


「止まるな」


止まったら、きっとまた一人でやる。


それが嫌だ。


ターン。


軸がぶれる。


自然と腰に手が回る。


今度は迷いなく。


引き寄せる。


近い。


吐息がかかる。


「海里……?」


名前だけ。


甘いな…。


「目逸らすな」


低く言う。


視線が絡む。


真剣な目。


俺だけを見ている。


ターン。


今度は少しだけ滑らかに。


ほとんど抱き寄せた形で止まる。


離れない。


離したくない。


「できたよ」


ひよりは嬉しそうに笑う。


その顔を見た瞬間、はっきり分かる。


(守るとかじゃない)


隣にいたい。


ひよりの“特別”でいたい。


「毎日やるか?」


自然に出た。


「え?」


「本番まで」


「忙しいでしょ?」


「関係ない」


即答。


ひよりがふわっと笑う。


「海里がいると、頑張れそう」


胸が一気に熱くなる。


(それ言うな…。調子狂うだろ)


嬉しいけど危ない。


「他の奴には言うな。…特にあの四人には」


「何を?」


「……なんでもない」


俺は咄嗟に誤魔化す。


でも手はまだ離さない。


月明かりの下。


もう一度ステップを踏む。


ひよりが回る。


まだ下手。


でも、さっきより確実に成長している。


俺はふと考えた。


(本番、誰と踊るんだよ)


想像しただけで、胸がざわつく。


無意識に、指に力が入る。


「海里?」


ひよりの顔を見て俺は思った。


完全に踏み外したのは、


ダンスじゃなくて、俺の方だった。


ここまで読んでくださってありがとうございます。


今回は海里視点でした。


レッスンのことも、いじめのことも、何も知らないまま。

ただ「頑張っている姿」を見つけてしまった夜。


守るとか、兄としてとか、そういう理屈ではなくて。

気づいたら一歩踏み出していた海里。


「特別でいたい」


あの一言で、関係はほんの少しだけ変わりました。


まだ誰も気づいていません。

ひより本人も、兄たちも。


でも、月明かりの下で確実に何かが動き始めています。


次は別の視点か、それともまたひよりの努力か。


少しずつ、波は広がっていきます。


引き続き見守っていただけたら嬉しいです。


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