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理事長の娘になったら、5人の兄たちに溺愛されました!?  作者: ぴよこ


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特別棟のサロン

放課後。


「海里くん、ちょっと用事があるので職員室まできてください」


先生が海里へ言った。


「ちっ…。ひより、ちょっと待っててくれ」


「うん、わかった。」


私は海里を見送り椅子へ座る。


「西園寺ひよりさん」


振り向くと、見知らぬ女性が立っていた。


長い黒髪。

姿勢がまっすぐで、容姿端麗、制服の着こなしまで完璧。


思わず、見とれる。


(……すごく、綺麗な人)


「はじめまして。桐生院美琴と申します」


ゆっくりと微笑む。


その瞬間、教室の空気が変わった。


「桐生院様……」


誰かが小さくつぶやく。


(様?)


私は周囲の反応で、ようやく察する。


ただの先輩じゃないらしい。


「少し、お時間をいただけますか?」


断れる雰囲気ではなかった。


案内されたのは、特別棟のサロン。


白いテーブルクロス。

繊細なティーカップ。

映画みたいな空間。


そこには、すでに四人の令嬢が座っていた。


桐生院が優雅に言う。


「皆さま、自己紹介を」


一人目が立ち上がる。


「一ノ瀬麗華と申します」


落ち着いた声。知的な雰囲気。


「伊織様とは、学業面で交流がございます」


二人目。


「高宮彩葉です」


明るく笑う。


「日向くんとは、昔からイベントでご一緒することが多くて」


三人目。


「白石詩織と申します」


静かな微笑み。


「蒼様には、いつも助けていただいております」


最後に、同学年の少女。


「東雲莉子」


まっすぐ私を見る。


「海里くんとは幼い頃からの知り合いなの」


私は小さく頭を下げる。


「西園寺ひよりです」


桐生院が紅茶を注ぐ。


「本日は親睦のためのお茶会ですわ」


親睦。


その言葉が、どこか重い。


一ノ瀬が静かに口を開く。


「西園寺家は、特別なお家柄です」


視線が集まる。


「急に“妹”が増えたと聞き、少し驚きました」


高宮がくすっと笑う。


「日向くん、距離近いですよね。ああいうの、周りが誤解しちゃうんです」


白石が続ける。


「蒼様はお優しい。だからこそ、周囲の目は厳しいのです」


東雲がカップを置く。


「海里くんと1番近い仲になるのは貴方になるのよね」


私は黙って聞く。


桐生院が、やわらかく微笑む。


「西園寺家で“血が違う”ことの意味を、理解なさっています?」


その声は穏やか。


でも、逃げ場がない。


「連れ子、と伺っております」


空気が静まる。


「元は一般のご家庭とか」


「急に西園寺の姓を名乗られても、周囲が追いつかないこともございます」


誰も怒鳴らない。


でも確実に、距離を示される。


「軽率な振る舞いは、お控えになった方がよろしいかと」


桐生院がカップを置く。


私は小さく息を吸う。


「……私は、家族になっただけです」


静かな反論。


東雲が微笑む。


「“だけ”で済む家ではないのよ」


紅茶の香りが重く漂う。


ここには、味方はいない。


守られているはずなのに、

今は誰も知らない。


私は、西園寺家の“妹”として

試されている。


沈黙の中で、カップが静かに置かれる音だけが響いた。


桐生院が、ゆっくりと私を見る。


「西園寺家の妹である以上、あなたの振る舞いはそのまま“家”の評価に繋がります」


穏やかな声。


責めているわけではない。


でも逃げ道がない。


一ノ瀬が続ける。


「伊織様は常に結果で評価されるお方です。身近な存在が軽率だと、余計な噂が立ちます」


高宮が首を傾げる。


「日向くん、優しいから断れないタイプなんです。距離感は大事ですよ?」


白石が静かに言う。


「蒼様は何もおっしゃらないでしょう。でも周囲は見ています」


東雲が、少し身を乗り出す。


「海里くんとは少し馴れ馴れしくしすぎだわ。もう少し行動を改めてもらわないと」


胸が、少しだけ痛む。


「……気をつけます」


思わず出た言葉。


その瞬間、桐生院がわずかに微笑んだ。


「ご理解が早くて助かりますわ」


まるで試験に合格したかのような言い方。


「西園寺家は、特別です」


桐生院の視線が柔らかく細められる。


「“血”は、消えません」


その一言で、空気が冷えた。


一ノ瀬がカップを持ち上げる。


「努力では変えられないものもございます」


高宮が笑う。


「でも、振る舞いは変えられますよね?」


白石がうなずく。


「立場を弁えていただければ、無用な摩擦は避けられます」


東雲が最後に言う。


「海里くんを困らせないでね」


それはお願いではなかった。


宣告だった。


私はカップを持ち上げる。


手が、少しだけ震えている。


でも落とさない。


(泣かない)


ここで泣いたら、負ける気がした。


桐生院が立ち上がる。


「本日はこれで失礼いたします」


全員が同時に立つ。


完璧な所作。


「西園寺家の妹として、どうかご自覚を」


微笑み。


そして、静かに去っていく。


サロンに、私ひとりが残された。


紅茶は、もう冷めている。


胸の奥が重い。


でも、涙は出ない。


(大丈夫)


そう言い聞かせる。


けれど。


初めて分かった。


守られている立場というのは、

同時に、狙われる立場なのだと。

ここまで読んでくださりありがとうございます。


ついに登場しました、名家の令嬢たち。


直接的な暴力ではなく、言葉と立場で追い込むお茶会。

ひよりにとっては、初めて「西園寺家の妹」であることを突きつけられた時間になりました。


守られている立場というのは、同時に注目され、測られる立場でもある。


まだ兄たちはこのことを知りません。


そして令嬢たちも、本気を出したわけではありません。


次回、物語は少しずつ動きます。


ひよりはこのまま耐えるのか。

それとも――。


お楽しみに。

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